少し前になりますが、リニューアルしたばかりの横浜みなとみらいホールにて開催された「ミュージック・イン・ザ・ダーク」というコンサートを鑑賞してきました音譜


このコンサートは今年で7回目だそうで、視覚障がいのある演奏家と障がいのない演奏家の合同メンバーによるアンサンブルが、照明を全て消した暗闇の空間で演奏し、視覚以外の感覚を通して音楽を享受するものです(当日のプログラムより)


暗闇といっても、例えばホールなら非常灯や足元の灯りなどは付いているのをイメージするでしょう。

しかしこのコンサートではそれらも全て消していますなのでどんなに目が慣れても何1つ、僅かな光さえも見えることはありませんでした。

曲調に合わせて明るくしたり、薄暗くしたり、という演出もありましたが、多分真っ暗闇の時間が1番長かったのではないかと思います。


1曲目はバッハのシャコンヌ。無伴奏での13分を超える大曲を、なんと今年77歳を迎えられたという全盲のヴァイオリニスト、和波たかよしさんが言葉に言い尽くせないほどの圧巻の演奏をしてくださいました。

真っ暗闇の中、音1つ1つが宝石のようにきらめき、和波さんの音楽への謙虚な姿勢、音への慈しみ、そしてお客様の前で演奏する事の喜びが心に真っ直ぐ届き、そして染み渡ります。何も目に入らないので、自分と和波さんの音とだけ向かい合っていた10数分…初体験でしたキラキラこれ以上は言葉に出来ません。ただただ、この時間を過ごすことが出来た事に感謝の気持ちでいっぱいになりました。


次は視覚障がいのあるソリストと障がいのないソリスト、そして弦楽アンサンブルとの共演で、バッハの2台のヴァイオリンの為の協奏曲。こちらはソリストの素晴らしさはもちろんの事、バッハの作品は各パートのメロディのモチーフやパッセージがかなり複雑に入り組んでいて、それらが重なり合って作られているため、真っ暗闇で演奏=完全暗譜をしなければならないオーケストラメンバーの皆さんの影の努力を考えると、ただただ頭が下がる思いでした。仕事とはいえ凄い事です‼️


後半はヴィヴァルディの四季、全曲チューリップ赤ヒマワリもみじ雪

視覚障がいのあるソリストがお2人、無い方がお2人、そしてまたまた事実上完全暗譜のオーケストラ、そしてチェンバロという編成。もうここまで来ると障がいの有無など全く忘れて、聴衆もひたすら音楽に没頭していました音譜

ソリストの皆さんは4人4様。演奏しているのが暗闇だろうと光があろうと、自分の表現したい音楽をこれでもかと伝えてくれ、音楽の愉しみを共有させてくださいましたルンルンキラキラ

普通とは違うコンサートだからって、妥協や緩みのようなものは微塵も感じられず、どの曲もむしろ気迫に満ちた集中力と真摯さと、そして音楽への慈愛が溢れた素晴らしい演奏でした。


不思議なのは照明ありの時と、照明ありだけど目をつむって聴いた時と、真っ暗闇の時。それぞれ音の聴こえ方が全く違ったこと。

真っ暗闇の時が最も音が凝縮し、音に意志の強さがあり、音楽に対して良い意味で挑むような表現が感じられました。光の有無によって実際に演奏者の皆さんの音が変化しているのか、暗いと自分自身の聴力や感性が研ぎ澄まされるからなのか…謎ですびっくりマーク

けれどいつにも増して、大きな学びと大きな喜び、そして大きな希望を頂いたコンサートでしたおねがい


ちなみに怖がりな私は、コンサート序盤は真っ暗闇になると不安でドキドキして、いてもたってもいられない気分でしたがえーん 後半にはすっかり慣れて、誰にも見えないのを良い事に、踊り出しそうな勢いでノリノリで首振って聴いていました口笛普段のコンサートではこんな事絶対出来ませんから、それも楽しい思い出となりましたウインクルンルン