百年の預言〈上〉 (朝日文庫)/高樹 のぶ子

ルーマニアを旅する前、

この国に関する本を読んでみたいな、

そう思って少し探したのだが

ちょっとマニアックな国なだけにこれといって

いい本がみつからなかった。


そして、ルーマニアの旅の途中

添乗員にすすめられた「百年の預言」という本。

日本に帰ってきて早速取り寄せて読んでみた。


この本の舞台は、日本とウィーンとルーマニア。

大使館員として働く男とバイオリニストの女、

このニ人の男女を軸に3つの国の人と文化と歴史が

そして、ルーマニアの有名な作曲家ポルンベスクの

残した一曲の楽譜が物語をすすめ、

実際に起こったルーマニア革命に結びついていく。


いやいや~、面白かったです、この本。

まだ多くの人の記憶に残るルーマニアの革命。

そして実際に存在したチャウシェスク政権。

自分が訪れた異国の都市が舞台となっているから

想像がふくらみ、次はどうなるの?と思える展開で

続きが知りたくて一気に読んでしまった。


私は観光客として訪れルーマニアのいい部分ばかりを

見てきたのだけど、まだわずか20年ほど前には

この国の人々は(今回の旅のガイドやドライバーも)

暗黒の時代を過ごしていたのだな、と思うと

それを知らずに旅をしていた自分はなんなんだろう?と

なんだかとっても複雑な悲しい気持ちになった。


過去だけでなく、現在のルーマニアの実状も

実は決して恵まれた生活をしている人ばかりではない。

そのことを書いた本も出版されていて、添乗員が

ルーマニアのいいところだけでなく、本当のことも

知っておいてほしい、とその本を紹介した。


でもガイドは、

「そんな悪いことは日本から来てくれている人たちに

知ってほしくない」とその本が日本で売られている

ことをイヤがっていたという。

ガイドのその気持ちもわかるけど、私は本を通して

だけど現実を知ることができてよかったと思っている。

逆に旅をしたからこそ、現実をちゃんともっと知るべきだ、

そう思えたし。


ルーマニアの暗く辛い時代を知っているガイドを含め

旅先で出会った異国の人々。

みな笑っていたけど、昔は笑えなかったのだろう。

彼らが笑える時代がきて本当によかった。

もっともっと多くの人が笑顔になれる時代がルーマニアに

訪れればいいな、と思う。

(そんな時がいつかはくるのかな。。)


百年の預言〈下〉 (朝日文庫)/高樹 のぶ子

 

最近面白い(笑える面白さではないけどね)本に

出会えている気がする。


しかし本や芝居の感想はどうも短く書けないんだよね・・。

ま、後になって、自分がこの本を読んでこの時こんなこと

感じていたんだ、そう思えればいいかなー。