あらすじ:妻に先立たれた中瀬耕造(津川雅彦)は、婚活パーティーで年下の女性・小夜子(大竹しのぶ)と出会う。やがて病に倒れた耕造は他界し、後妻におさまった小夜子から公式証書遺言状を見せられた娘の中瀬朋美(尾野真千子)は、遺産は全て小夜子に渡り遺族には一切残らないと知らされる。父の死に疑念を抱く朋美は探偵の本多(永瀬正敏)を雇い、小夜子の身辺を調査するが……。(シネマトゥディより転載)
鶴橋康夫監督の新作、『後妻業の女』。遺産をまきあげる後妻業のエース、小夜子を演じる大竹しのぶの独壇場であった。原作には無いコメーディ要素を盛り込んだ脚色は面白い。しかし、色の演出が控えめなのが残念であった。『後妻業』は今の社会を映し出す鏡であり、大変面白いテーマなのに凡作となってしまったのは人間の『色と欲』の演出が中途半端だから。『~の女』の代表格である伊丹十三監督だったらどう描いていただろう・・・。伊丹監督の『色と欲』満載の人間の悲喜劇は突き抜けている。私の大好きな作品である、名作『マルサの女』シリーズは何度観ても飽きない。『後妻業の女』は面白い作品ではあったが、一度観れば良い作品である。今日、『後妻業の女』の演出と比べようと思い、伊丹監督の『ミンボーの女』を再鑑賞してみた。伊丹監督は、笑いを誘う為の音楽や効果音の入れ方が絶妙に上手い。そして、役者のクローズアップを多用している。伊丹監督は、コメディー演出のセンスが本当にずば抜けている。鶴橋監督は『後妻業の女』のようなジャンルは初めてのようだが、コメディ演出は合わないように思う。次回作は骨太なジャンルに回帰してほしい。