今作品は大変観応えのある映画であった。原作の著者は、マーク・シュルツである。その為、原作では弟であるマーク・シュルツが主役であり、ジョン・デュポンと兄は脇役である。しかし、実写化された作品でマーク・シュルツは、自分がそれほどクローズアップされず、暗にジョン・デュポンと性的関係があったと匂わせるような演出があったことに不満爆発。ツィッターで怒りを爆発させていたのだが、オスカーの候補にあがると態度を一変。「ベネット・ミラー監督は、最も優れた監督だ。オスカーに値するよ。『フォックスキャッチャー』はミラクルだ。嫌いだなんて言って悪かったと思う。俺は怒ってなんかいない。本当に素晴らしい作品だ」とツィートしたとのこと。ゴシップに塗れてしまったが、今作品はそのゴシップを吹き飛ばす重厚な作品に仕上がっている。特に、スティーブ・カレル演じるジョン・デュポンが素晴らしい。


付け鼻に少々違和感があったが、母親に囚われ、信頼できる友人も皆無な孤高の狂人を上手く演じ切っていた。このジョン・デュポンを観ながら、一人の役者を私は想い出していた。それは、フィリップ・シーモア・ホフマンである。


ベネット・ミラー監督の『カポーティ』で彼は主演を演じていた。フィリップ・シーモア・ホフマンとミラー監督は16歳からの友人だったそうだ。フィリップが生きていたならば、ジョン・デュポンは正に適役。彼が演じるジョン・デュポンが観たかった・・・。