⑮ 入院(二日目)骨髄採取手術

 

 始まりの日から116日目。いよいよクライマックス。

 

 昨夜は緊張しているからか、夜中に数回目覚めたものの朝6時過ぎに起床。酸素マスクをつけるため、言われていた髭をきれいに剃り、指定された着衣に着替え、圧着のソックスも履き準備完了。

 

 

 浣腸を回避すべく必死に便も絞り出す。昨夜から絶飲だったため喉が酷く乾いている。手術が朝9時からというので母が朝早くから来てくれていた。感謝。ここまで来たら、早く手術のお迎えに来てくれないかと、幾度となく個室のドアを開け廊下を覗う。

 

 勤務時間の関係だろうが、数時間ごとに担当の看護師は交代するのだが、手術室までお迎えに来てくれた看護師さんは二人いて、一人はベテランナース、もう一人は新人?若い天使レベルの看護師!天使ちゃん♪その二人に連れられ、エレベーターへ乗り、歩いて手術室へと向かう。

 

 緊張を和らげようと周りをキョロキョロ観察する。これから本当に手術なのか?と思いつつ移動。手術室の待合、歩きながら、着いてからの3回程フルネームを確認され、手術室へ入る。ひんやりしていて結構広い。スタッフも多い。早速手術台へと仰向けで寝て、またフルネームと手術内容を訊かれる。『○○です。骨髄採取です。』と答え、確認終了。酸素マスクを口に軽く当てられる。次々と事務的に進むうち、左腕に注射が刺され、麻酔が入っていく。『ふわふわしてきましたか?もうすぐ意識がなくなりますよ~。』と言われた後は、ブレーカーが落ちたかのように真っ暗で、もう何も覚えていない…。

 

 

 

  次に気付いたのは、病室のベッドの上。何やら呼びかけられているようだ。

うっすら目を開くと病室の天井が見える。帰還したのだ。役目を終えた…。

 病室を出てから3時間経っているらしい。本当にもう終わったのか?もちろんだが全く何も覚えていない。あの時の『意識がなくなりますよ~。』からここまでの時間が切り取られ、繋ぎ合わされたような感覚だ。口に酸素マスク、左手に点滴やらなんやら、指にも酸素を測る器具がついている。寝ぼけているのか、麻酔が残っているのか、この後も記憶が曖昧…。誰かが数人きていたような…。朧げな意識の中で、気になっていたことを医師に尋ねる。すると採取した骨髄液は即、患者さん側の施設の方が持ち帰ったとのこと。役目を終えた安堵もあってか、またすぐに眠ってしまったようだ。

 

 次に気付いた時にはひどく尿意を感じた。そう!これがある種、全身麻酔よりも恐れていた尿道バルーン(カテーテル)。麻酔中に出る尿から、血液循環などチェックするのに必要なものらしい。気が付けば、紙おむつを穿かされている。しかし、ものすごい尿意だ。だが出ない。その後も入れ替わり立ち替わり、担当看護師やら先生やらが来る。酸素マスクは割と早い段階で外された。しかし尿意と頭痛が酷い。病室へ戻り3時間くらいしてコーディネーターのMさんが来てくれた。その30分後に先生が来られた。痛みを訊かれる。不思議と採取箇所の痛みは感じない。頭痛と尿意。でもこの時、一番痛かったのは右腕の肘の内側辺り。それを伝える。私はてっきり、そこへ点滴が入っていると勘違いしていた。『点滴は反対の腕ですよ。』と言われた。確かに右腕には何も刺さっていない。だが、まるで針が入っているかのような鈍痛を感じていたのだ。先生によると同じ体勢を取り続けていた影響らしい。頭痛もそうだとか。先生に痛む右手を揉んだり、曲げたりしてもらっているうちに痛みはすぐに治まった。

 

 水を飲む許可をもらう。少しだけストローでゆっくりと水を飲む。どれだけぶりの水分補給なのか?既にわからん。

次は尿意。尿道バルーンがあそこに刺さっている。バルーンを入れた時は、麻酔中だからまだいいものの、できれば早く抜いてほしい要望を先生に伝えると、すぐに許可が出る。先生が帯同していた看護師へ指示を出す。その時、横にいた看護師が天使ちゃん!え…マジか…。

 

 なんとも言えない恥ずかしさにベテランナースに見守れ、天使ちゃんがバルーンを抜く作業へ。おもむろに紙オムツを外され、陰部が露わになる。しかし次の瞬間、恥ずかしさを通り過ぎるレベルの激痛が襲う!うぉぉぉぉぉ~!めっちゃゆっくり抜くやんっ!まだか!?

てか、どんだけ深く刺さってるんや!スローモーションのように長く感じたこの時間。恥も痛さも乗り越えて、なんとかバルーン撤去完了。それで尿が出るかと思ったら出ない。尿意と思っていたのはバルーンの違和感だったのか…。尿器を用意してもらい局部にあてがって排尿しようとする。ほんの数滴出るが激痛。しかも尿の色がおかしい。これが混じってるよね?結局、バルーンがあそこへ刺さっている状態は最後まで見ず仕舞い。見てしまったら、その残像が脳裏に焼き付きそうだったから、とても見ることができなかったのだ。

 

 バルーンを外してからも、尿意的なものはずっとあるが慣れるしかない。頭痛も相変わらず酷い。この後、90分位して、採取部位の消毒、ガーゼ交換。血圧計と大きな心電図モニターのようなものが外される。代わりに小さめのモニターがつけられる。依然、頭痛は酷い。この後、先生が来られて、少し立ってみましょう。ということになり、立ち上がると、それまでなんともなかった採取部位が痛む。動くと結構痛い。左右差があり、左の方が痛みは強い。もう少し仰向けに寝たまま採取部位の圧迫を続けることに。

食事の際にも圧迫は続けといて下さいね~。と言われた。そして夕食の時間となる。食事の許可は出るが、空腹のはずなのに頭痛からか、圧迫の姿勢からか、あまり食べられず7割程度食べて残す。食後、少し喉につかえた感じがして痰を吐く。痰は出なかったが、唾液に血が混じっていた。酸素マスクが入っていた影響だろう。でも喉の痛みは殆どない。でも一応持ってきたのど飴をなめておく。

 

 少しして尿意!きた!点滴スタンドを連れて個室のトイレへ。やりにくいがようやく立っての排尿。

おぉぉぉぉぉ!なんたる激痛!思わず叫ぶ。なんかまだ管が入っているかのような感じ。しかも相変わらず血が混じっているような色。途中、あまりの痛さに思わず尿を止めてしまうが、なんとか出し切る。尿意は治まったものの頭痛と微熱は続く。気を紛らわすためにとラジオを聞くが内容が入ってこないまま眠りに落ちる。その後のガーゼの貼り替えで採取部の出血は治まりつつあるようだ。そして次の立っての排尿はさっきよりは少しマシだがまだ痛い。度々、担当看護師が来るが、天使ちゃんは替ってしまったようだ。頭痛も治まらないので、歯磨きしてもう眠ることにする。

 

 

※圧着のソックス装着。

※手術中の風景は自ら見ることができないため、事前に先生に撮影を依頼。デジカメを渡し、手術に影響がない範囲で撮影していただきました。確かに濃そうな骨髄液です。

 

※採取した骨髄液は患者さん側の施設の方が即持ち帰り、即日移植が始まるとのことです。

患者さん側の施設の方から“ドナーさんへ”というお礼のお手紙をもらいました。

 

※骨髄採取量は私の骨髄が予想以上に濃かったようで、予定の7割くらいで済んだようです。自己血入れたら結果、血の量としては増えました。笑

これなら自己血1回でいけたかも。

 

今回は長文になりました。読んでいただきありがとうございます。

※次回は⑯“入院3日目から退院まで”に続く。