ぼちぼち、地獄の思想の展開についてまとめていかないとなぁと思い始めています。
まとめていく上で、きっと色々と新しいことを知っていったりすることもあるだろうと、
足元が極めて不安定な希望的観測を掲げつつ、
本心では、発表までに体裁を取り繕うための算段を必死で立てているわけなのです・・・
地獄…死後の審判において生前に悪業があったと判決された者が堕ちて苦の報いを受ける場処。終末論(エスカトロジー)の産物
【終末論…世の終わりに最後の審判があり、善人と悪人とは死後の運命を異にするという信仰】
* インド=アーリアン人の宗教思想の中に見られなかった信仰
◎『リグ・ヴェーダ』
・ 神は罪人どもを刑罰に逐いやる
・ 鬼女は際限のない深淵に消えるべき
・ 悪人は暗黒な所で永劫の刑罰を受ける
● 死後審判の果報の場処としての地獄については記されていない
◎『アタルヴァ・ヴェーダ』
・ ナラカnaraka世界という語が現れ、天国に対立するものとしている
→語源的には「人間の(世界)」を意味する
女性の悪魔および魔術師の住居
殺人者の住居
黒く、光をさえぎられた最下の暗黒の世界
⇔死者の世界ではない
・ バラモンに唾を吐きかけ鼻汁をかける者は自らの髪を食いながら血の流れの中に坐る(ナラカとは関係ない)
◎『後期ヴェーダ文献』
死がヤマの使者と信じられるに至る
・ 『タイッティリーヤ・アーラヌヤカ』6・5・13
-真理に忠実な者と虚偽を語る者とはヤマの前で区別される
・ 『シャタパタ・ブラーフマナ』11・2・7・33
-ヤマが他界に到着した人間の善悪の行為を量るという信仰の登場
・ 『シャタパタ・ブラーフマナ』11・6・1
『ジャイミニーヤ・ブラーフマナ』1・42-44
-「地獄めぐり」のエピソード
【辻直四郎編「世界古典文学全集」3『ヴェーダ・アヴェスター』pp.137-138】
・ 三つの天界と三つの地獄(ナラカ)
シュメール族
・チグリス=ユーフラテス河流域に紀元前三千年頃から栄える
・インダス文明の時代以来文化交流が行われてきた
・「戻ることのない国」クルの信仰
冥府クル…地下の陰惨な国で、セム民族が古くから持っていた地獄信仰の表象
(シュメール-「イナンナの地獄遍歴」・バビロニア-「イシュタルのハーデースへの下降」、ギルガメシュ叙事詩の中のエンキドゥの冥界への下降の物語)
* 後期ヴェーダ文献の時代には、インド=アーリヤン人の開拓者と先住民との間に混血が発生し、インド=アーリヤン人の間に先住民の生活様式や宗教信仰が浸透
⇕
インドの原住民の間に地獄の思想や信仰が存在した痕跡や証拠はまったく知られていない
⇕
インダス文明時代以来、チグリス・ユーフラテス河流域と文化交流が行われていた→インドにも地獄信仰が導入されていた可能性
・『リグ・ヴェーダ』は銅の文化に属するのに、ブラーフマナ文献の時代には鉄が見られる←メソポタミア地方の鉄の文化の影響
・『リグ・ヴェーダ』においてタブー視されていた近親相姦が、イランにおける近親結婚の風習の影響を受けて、ブラーフマナ文献に天とその娘の相姦の神話が見られる
・ノアの洪水伝説と同じ人間の始祖マヌに関する洪水伝説が伝わっている。
◎『マハーバーラタ』において、地獄の信仰は土着化し、その主宰者としてのヤマの性格も明確になる
◎『マヌ法典』『ヤージュニャヴァルクヤ法典』(西暦2,3世紀ごろまでに成立)において、21の地獄名が挙げられる
◎各種のプラーナ文献にも地獄が詳細に描写される
・『ヴィシュヌ・プラーナ』28の地獄名が記され、7色である
・『マールカンデーヤ・プラーナ』ヴィパスチット王の冥界遍歴譚
*注意!
『マハーバーラタ』の地獄は終末論に依拠したものであるが、プラーナ文献の地獄は、インドで独自に展開した業報思想において罪の果報を受ける場処であり、輪廻からの脱出は解脱であることを意味している
※ 地獄名の多くは、『マハーバーラタ』において地獄の修飾詞として用いられたものが固有名詞として固定
※ 後期における地獄の数は、最初の7層という地獄の層の数の倍数である。
←バビロニアの地価界(ジグラット)の信仰の影響に基づく