ついに…

 

ついに…

 

どのリハビリの中でも

 

一番可能性を感じていなかった

 

車への乗り移りの訓練が始まってしまった

 

 

”そんなに嫌ならやらなければ良いじゃないか”

 

 

という声も聞こえてくるが

 

車椅子で山梨を生活していくとなると

 

車の免許が必須になるのだ…

 

避けては通れぬ道なのだ…

 

 

僕はこの訓練が近づいてから

 

YouTubeを見たりして

 

毎日のようにイメージトレーニングをした

 

だが

 

何度やっても成功できている絵がさっぱり浮かばない

 

とてつもなく不可能だと感じていた

 

 

そんな中、訓練が始まった

 

うだうだ言う前に、とりあえずやってみた

 

だが、

 

さっそく運転席のドアを開けることに躓いた

 

麻痺している指を

 

ドアの取っ手の隙間に入れ込んで

 

指を引っ掛けて開けるのだが

 

これがまたなかなかできない

 

でもなんとかこじ開けようともがき続け

 

数十分掛け、やっとの思いでドアは開いた…

 

僕「やっと開いた〜…」

 

 

僕はやり切った顔で空を見ていた

 

 

すると

 

スパルタな理学療法士さんが

 

理学療法士「はい!次!」

 

と言った

 

綺麗な顔をしていて、やることは厳しかった

 

 

次は

 

運転席の横に車椅子を寄せ

 

片足を運転席に放り込み

 

もう片足を地面に下ろす

 

これは難なくできた

 

問題は次だ…

 

 

左腕を運転席に置き、右腕を全開に開いているドアに置く

 

この2点で身体の重心を支え

 

横へ横へと進み運転席へ乗るのだが

 

僕は恐怖心に襲われていた

 

2点で身体を支えると

 

視界には地面が見える

 

そのため

 

まず落ちたらどうしようという恐怖が襲ってくる

 

大袈裟かもしれないが

 

まるで絶壁に立たされているかのような感覚だった

 

僕「え…こわ…」

 

理学療法士「大丈夫、倒れても私いるから」

 

そばに人が居ても

 

なかなかその恐怖心には勝てなかった

 

それでも僕は進もうとした

 

だが

 

恐怖心でお尻はなかなか進まなかった

 

 

結局その日は

 

そこまでで訓練が終わってしまった

 

 

訓練場から寮までの帰り道

 

僕はあの恐怖を乗り越えられる気がしなくて

 

途方に暮れていた…

 

 

 

姉に伝えたかったこと