食欲 | 精巣腫瘍をめぐる冒険

精巣腫瘍をめぐる冒険

Ⅲ年b組 予後中間群

 入院しているので運動はしませんし、気持ちのよくない日もあるので、たしかに全体的に食欲は低下します。
 しかし、わたしの場合は、1回目の治療ではほとんど食欲がなくなるということはありませんでした。けれど、回を重ねるごとにやはり食欲は低下していきました。
 2回目の治療の後半からは、かなり急激に食欲が低下し、食事は普段の三分の一くらい食べられればいいほうになっていました。気持ちが悪いからというのではなく、なんだかお腹がすかないような感覚で、内臓が食べものをうけつけなくなっていくような感じでした。でも、これは矛盾しているのですが、やっぱり食事の時間帯になると、なにかを食べたくなる感じはあるのでした。ですが、目の前に食事が来ると、それがどうしても口に入らないのでした。
 3回目の治療を開始するときには、一日に水分しかとれないこともしばしばとなっていました。この頃になると、あまり自覚はできませんでしたが、日常的な気持ち悪さや、だるさもでてきていたはずなので、気持ちが悪いから食事をとれないのか、ただ食べられないのか、もう理由はよくわからないのでした。ただ、ほとんど食べられないという事実は毎食眼前にあり、考えうるその理由ばかりが毎日増えていくようでした。
 3回目、4回目の治療では、食べられるものを食べられるタイミングで食べているだけになっていましたが、2回目の治療中の食欲低下を感じ始めたあたりでは、酸っぱいものや麺類ならば食べやすいという状態がありました。日によっては酸っぱいものしか食べられず、一日に五つくらい梅干を消費し、だましだましご飯を食べるということもありました。