化学療法開始2 | 精巣腫瘍をめぐる冒険

精巣腫瘍をめぐる冒険

Ⅲ年b組 予後中間群

 3月4日

 点滴しているものは変われど、基本的にはずっと点滴です。午前10時から、次の日の午前10時まで。いや、その次の日の午前10時まで。いや、その次の日の午前10時まで。いや、いや、その次の日の午前10時まで。いや、まだ。
 そういうことなのでした。
 BEP療法のはじめの5日間は、抗がん剤や利尿剤、水分の点滴を、かたときも休みなく流します。当然、食事中も、トイレに行くときも、横になっているときも、夜眠っているときも、いつも点滴がついています。点滴を長時間されたことのあるかたならわかるとは思いますが、点滴というのは、その仕組み上、姿勢の変化や薬剤の残量に、薬剤を流す速度が影響を受けやすく、それにずっとつながれていることは、見た目以上にずっと不自由なものなのです。
 「点滴変えますね。」
 「また見にきますね。」
 「もう少しですね。」
 「点滴変えますね。」
 そんなふうな言葉の順列組み合わせを聞いているうちに、一日が過ぎていきました。