高位精巣摘除術 | 精巣腫瘍をめぐる冒険

精巣腫瘍をめぐる冒険

Ⅲ年b組 予後中間群

 2月18日
 
 「少ししみますよ。」優しい声で麻酔医が言いました。
 「わぁ、薬が広がっていくのが見える。」点滴針の入ったわたしの左腕を見ながら、看護師が小声で言いました。
 それで、わたしは意識を失いました。



 「終わりましたよ。抜糸いらないので縫っておいたんで。」と、医師の声がして、わたしは気がつきました。
 わたしはストレッチャーに乗ったまま廊下を移動しているところでした。まだ麻酔が効いているのでしょう、体はほとんど動かせませんでした。
 「いち、に、さん」看護師達の声がして、わたしはストレッチャーからもとのベッドへ移されました。
 『いたい。』すぐに右の下腹部に痛みがやってきました。まるでそこを今刃物で刺されたかのようでした。わたしは体をまるめました。
 そうして時間が過ぎていきました。