ちょっと変わった5連勤を終えての2連休。
昨日は軽く二度寝のつもりで寝たら14時まで眠ってしまった。
肉体労働より頭脳労働の方が疲れるのかな。
この5連勤はほとんど現場に出ていない。
月曜日は15時前に切り上げて新橋の事務所へ移動して社内動画の撮影。ずっと断り続けてきたので、この日は取締役の誘いにのって焼肉をご馳走になってみた。
火曜日は建設現場でいつも通りの仕事をして、水曜と木曜は在宅で動画の編集。
金曜日は現場の詰所で動画の編集。
僕がこの会社に引き抜かれたのは映像制作者だったからなのだけれど、僕自身、業界から離れて10年近いし、なにしろ僕しかいない部署を作られるという特殊なポジションのため、戸惑いも多い。
そんなことを忘れて癒されるために今日はシネマネコさん、12:15上映回を鑑賞しに行った。
急遽決まった舞台挨拶の影響も考えて早めに入って、いつものB-5の座席を発券して、カフェで寛ぐ。
『スミコ22』
夜の街。
ベンチに座って缶コーヒーを飲む女性は、これ1本で時給のうち6分が過ぎてしまうなぁと考えていた。
公園で好きな子に電話をかけていた男性は、その子の好きな花を聞いて、一緒に植物園に行くときにはその花がいっぱいあるところに行こうと考えていた。
静岡スミコは自分の感覚がいつの間にか曖昧なものになっていると思っていた。
その日、スミコは友人たちとエビフライパーティーをしていた。
それぞれがエビフライを口に持っていくが、それが2本目であることからなかなか進まず、揚げ物の主張について話していた。
皿の上には1本のエビフライ。
スミコは思い切って切り出した。
「私は、このエビフライをきっとこの中にいる誰よりも綺麗に5等分できるし、4人なのに5等分にしたらすごく好きな空間を作れると思うんだけど」
9月2日。
朝起きたスミコは自撮りをして、自分の顔を見比べていた。
次の日。スミコはバイト先のピザ屋の客に保険について語られていた。
「スミコちゃん、学生だっけ?」
「いえ、社会人1年目です」
スミコは最近OLを辞めて、この店でバイトしていた。
別の日。スミコは実家にいる猫おこげを思いながら、猫の絵を描いていた。
別の日。スミコはバイト先で店長と賄いを食べている時、曖昧な内容の会話から脱却しようと脈絡なくサーモンが好きだと宣言した。
スマホの待ち受けもサーモンだし、トートバックもそれに付ける飾りもサーモン。
20歳の時、お年玉や成人の祝いでもらった13万で最高の鮭を買おうとしたこと。
「どこがそんなに好きなの?」
「おいしいとこ」
店長はきゅうりが最近好きで、栽培も始めていた。
翌日。スミコは同居人のはなと好きなものについて話していた。
はなはタイ人の名前の響きなどが好きだと答えたが、スミコは「いろいろあるけど、なんか最近いろいろ考えちゃって」と答えるのだった。
そんなスミコがゆで卵にマヨネーズをつけて食べているのを見て、ゆで卵には何もつけないというはな。スミコはゆで卵にはマヨネーズが合うと主張して一口はなに食べさせた。
「あ、おいしい」
別の日。バイト帰りのスミコは環八の高架下でリコーダーを練習する男性が気になった。
スミコは時々、そういった人が恋人だったらと考えることがある。
バイト先の店長とはきゅうりの栽培を見守るだろうし、友人とはエビフライを山盛りにして食べるだろうし、リコーダーの人とはリコーダーで会話するだろう。
そんな妄想をして笑顔になるスミコ。
別の日。スミコは手持ちの現金を数えて、わずかになった残高に愕然としていた。
別の日。スミコがお好み焼きにソースとマヨネーズをかけ、箸でマヨネーズで猫の絵を描いて微笑んだ日。その日、ラジオから流れてきた「食べ物で遊ぶ人が許せない」というパーソナリティの言葉に苛立った。
給料日。通帳を抱えて笑顔で歩くスミコは、時折見かけて気になっていた白スキニーの女性に声をかけた。
「パンツが透けちゃってます。白スキニーの時には、しっかりしゃがんで靴ひもを結んだほうがいいと思います」
そこでスミコは8月に就職先の会社を辞めたことを打ち明けた。
みんなで盛り上がっていたが、スミコはなんとなく盛り上がれなかった。
翌朝、家で目覚めたスミコはその飲み会のことを思い出していた。
思い出し始めたら、全く関係ないことまで思い出してしまう。
前の会社の先輩の下の名前はなんだったか、高校時代みりんというあだ名だった軽音楽部の人の名前はなんだったか。
「おこげに会いたい」
スミコは泣いていた。
はなの特技は50年間の出来事を暗記していること。
「1976年は?」
「日清焼そばU.F.O発売」
「1984年は?」
「風の谷のナウシカ公開」
すかさず答えるはなだったが、それが正解なのかどうかは常連客にはわからない。
「2004年」
スミコが割って入った。
「千円札が夏目漱石から野口英世に変更」
その日、店を出たはなは、スミコにもう一軒行こうと誘った。
スミコは、はなの“絶対に嫌いになれない”部分がちょっと嫌いだと思った。
9月14日。スミコはケーキを片手にハッピーバースディを歌っていた。
この日、スミコは23歳になった。
はなをはじめ、エビフライパーティーの仲間たちに祝ってもらったスミコは、ホールケーキを7等分にした。
その夜、飲み足りなかったスミコは一人コンビニへ酒を買いに行ったが、その時に店員の女性からTシャツの柄を褒められたり、手の形を褒められたりした。
別の日。スミコは自分はケーキを食べるために生まれてきたのではないかと思いながら、ショートケーキを頬張りながら歩いていた。
そこでばったりと白スキニーの女性と会ってしまったけれど、結局公園のベンチで二人でケーキを食べて過ごした。
別の日。朝方、スミコはいつものメンバーで雑魚寝していたが、先に朝食を食べていた。
目覚めたはなは、目玉焼きに何もつけずに食べた。
「卵は調味料のためにある」という主張と「卵自体に味がある」という主張がぶつかりあったが、スミコは調味料のためにある派だった。
そんな他愛ない会話の後、スミコは突然言った。
「最近、映画を撮りました」
そこでスミコの作った作品の上映が始まった。
街で見かけた犬や猫、鳩はどがテンポ良く切り替わっていく内容で、人のパートでは白スキニーの女性と踊るスミコもいた。
バイト先でスミコは同僚に“いらっしゃいませ”と言わずにそれっぽく聞こえる言葉を使ってみようと言われ、自信満々に「旭山動物園」と言ってみたが、バレバレで店長に軽く叱られたが、あまりにも的外れな言葉にみんな笑顔になった。
その日、スミコがピザを持って帰っていると、リコーダーの男性のリコーダーが少し上達していた。
「ピザ、ひと切れ食べますか?」
スミコがピザを差し出すと、リコーダー男は動揺しながらも食べた。
そんなやりとりに、歩くスミコの表情は笑顔だった。
翌朝。スミコはくしゃみが止まらなかった。
スミコは、くしゃみをすると鼻水が出るのが意味わからないなぁと思っていた。
とりとめない日常の風景ではあるけれど、そこで22歳のスミコが感じていくことは、共感できる部分も多い。
寂しさや悩みを抱えながらも、日常生活はふだんと変わらずやってくるので、悩んでばかりもいられないし、ふと目にする光景に興味を惹かれて瞬間的に悩み事が消えてしまうこともある。それでも葛藤は続いているものなのだ。
ドラマチックな展開はまったくないのだけれど、温かい気持ちにさせてくれる作品だった。
【しどろもどリ】という創作ユニットで、コントもやれば映画も撮るという二人。
僕の出身大学の大阪芸術大学とは大違いで、学力も必要なので入るのが難しい日本大学芸術学部で知り合った二人が、その時の気持ちのまま、創作意欲に溢れていて、それが楽しくて仕方ないという雰囲気であることが本当に素晴らしいと思えた。
この作品は、監督自身が就職後4ヶ月で退職してしまい、当時、日記を書くことで自分を見つめ直していたというところから生まれたという。
お二人の雰囲気そのままに描かれたような温かい作品で、こういった作品に出会えるのがシネマネコさんの良いところだろう。
目的は、奈良に転職が決まったという子の送別会として神楽坂おいしんぼさんへ行くためだ。
この子と会うのは去年の12月以来。
送別会といっても男同士の二人だけなのだけれど(笑)
販売員の頃、この子が新入社員の研修期間でちょっと絡んだ程度で、配属された売場が違うフロアだったので、ほとんど接点のない子だ。
そんな連絡をもらったら、飯でも食いに行こうということになるものだ。
湯引きくらいでしかあまり食べたことのない鱧だけれど、大阪に住んでいた頃に鱧が好きになった。関東ではあまり見かけない鱧。
それをコース料理で頂けるというお店で、雰囲気も良いし、一品一品が美味しかったので思わず酒が進んでしまう。
どれもこれも美味かった。
多摩川の景色がこうなってくると、秋が一気に近づいて感じる。
これから山々は紅く染まっていき、東京で一番早い紅葉の季節を迎える。
明日からまた日常の5連勤。
東中神での勤務は最大で今月いっぱいとなりそうで、いつ異動を言い渡されるかわからない状態だ。
そもそも予定より2ヶ月長くなった東中神勤務。
次が新橋なのか、どこなのかがまったくわからないので、不安になってしまうけれど、結局のところ出たとこ勝負だし、なるようにしかならないので、何も考えないでいるのが一番良いのだろうな(笑)





