5連勤が終わって2連休。どうやら9月も東中神の現場配属が継続されるようだ。
この会社には月22日出勤という縛りがあるらしく、先月の僕が21日だったのでいろいろな人から電話がきた。別にその分が減給されようと興味がないので面倒な対応だ。
そのうえ8月の予定は17日出勤。
そもそもそういった明確な契約も交わさず、ノリで転職してしまったので、未だに僕は自分の正確な給料を知らないくらいだ。
あまり縛りつけられるようなら、また転職しよう。
とはいえ転職活動を常にしていても、年齢的にも転職回数的にも、そう簡単に転職はできないのが実情で、僕を採用してくれる会社は、基本的に誰でも採用している所謂ブラック企業くらいなものだ。
まともな企業なら、僕を採用することはない。
そんなことも青梅駅に降り立つとすっかり忘れてしまう。
そんな青梅は8月に入ると秋の気配を感じるようになってくる。
もうすぐ立秋。少しだけ陽が暮れるのが早くなった気がする。
蝉の声よりも蜩の声が強くなり、夕暮れの風は優しい涼を運んでくる。
2018年に40.8℃の最高気温を記録したのも7月。
そして今日は青梅花火大会の日。結局、今年も独りなので観に行かないのだけれど。
これから先は秋に向かって加速していく。
そして買い物などを済ませてからシネマネコさん、14:35上映回を鑑賞しに行った。
いつものB-5の座席で癒される。
大いなる不在

北九州の閑静な住宅街。その中を静かに走る車の陰に潜みながら一軒の家に機動隊員が数名近づいていく。
そこは“遠山家”。
機動隊員が配置につくと、家の二階付近に設置されたアンテナが動き始めた。
そして玄関が開き、出てきた男に銃をつきつける機動隊員。
男はスーツ姿で鞄を大事そうに胸に抱え、少し微笑んでいるようにさえ見えた。
それが遠山陽二だった。

一方、東京の舞台稽古場では、役者の遠山卓が稽古中だった。
内面を語るような映像の前で芝居をしていく卓は、スマホの着信にも気づかず、そのまま演出家と役作りのために心情などを論じ合っていく。
そしてその帰路、折り返しで電話をかけた卓。
街には“TOKYO 2020”のロゴの入ったタクシーが走っていた。

卓は妻の夕希とともに飛行機にのって九州へ向かった。

そしてやってきた施設の会議室でいろいろと陽二について質問される卓だったが、幼い頃に両親が離婚し、30年近く離れて暮らしていることや、その間にも数える程しか父陽二に会っていないため、アレルギーのことなど知る由もない。
「延命治療はどうされますか?」
「それはいま答えないといけないことですか?」
そんな卓の対応に、夕希が苦言を呈するが、意に介さず卓は陽二の家に入っていった。
そこは散らかり放題で、さまざまなことがメモされて貼り付けられていた。
「直美さんに連絡したほうがいいんじゃない?」
夕希の言葉で卓が直美の番号に電話をするが、その電話はキッチンに置かれていた。

数年前。
大河ドラマに出演が決まった卓は、陽二を訪れたことがあった。
そこには陽二の再婚相手である直美がいた。
部屋は綺麗に片付けられており、昼食をともにした。
俳優という職業について、批判するように理詰めで話す陽二に、返す言葉もない卓。
しかし直美に促されてアマチュア無線の機械を卓に見せようと陽二が席を立った後、直美は卓の活躍を陽二は喜んでいると伝えた。
陽二の部屋に入った卓に「なにか話でもあったんじゃないのか?」と陽二は問いかけた。25年ぶりの再会だったのだ。
「特にないよ」
そのままホテルに行こうとする卓を呼び止め、泊まると思って準備していたことを伝え、陽二は変わらず論理的に卓を諭し、卓はその日、この家に泊まった。

施設での手続きを終えた卓と夕希に、陽二が大事そうに抱えていたという鞄が渡された。
そして面会という形で陽二に再会した卓と夕希。
陽二はスーツ姿で颯爽と現れたが、話す内容が現実のものとは違っていた。
「パスポートがいらないっていうんだ。西側のやることだ」
陽二はこの施設を収容所か何かと思い込んでいるようだった。自分は拉致されてきたのだと。
「直美さんはどこにいるんですか?」
卓が陽二に問いかけると陽二は「自殺をしましたよ」と答えるのだった。

ホテルに入った卓と夕希。夕希はリモートで仕事を行っていた。
その間に施設から渡された鞄の中身を見ていく卓は、一冊の日記に目を止めた。
それは直美のもので、そこには陽二からの手紙が丁寧に貼られていた。
それは30年前に遡る陽二と直美の恋の記録。
大学教授らしい陽二の手紙と、それに感動している直美の日記。
愛のない結婚をしてしまったこと、それに気づいた時にはすでに直美も人妻となっていたことなどが綴られていた。

卓が陽二の家を整理していると宅配弁当が届いた。
その契約をしているのは“オガタトモコ”という人物らしく、卓では契約解除できないようだった。
その弁当を食べていると、軒先に男が立っていた。
直美の息子だというその男は、直美は小倉の病院に入院していると言った。
その男は帰り際、直美の入院費を無心にきた時に陽二に「払ういわれがない」と断られたという。

施設を訪れた卓は、陽二に改めて直美の居場所を訊ねた。
「熊本にいますよ。緒方ともこが匿っているんだ」
“オガタトモコ”は直美の妹だという。
しかし陽二は「たっくん、引き取り人になってくれないか」と卓に語りかけ、この施設を刑務所か何かだと相変わらず思い込んでいるようだった。
エレベーターに乗り、部屋に連れられていく陽二は寂しそうに卓を見つめていた。

夕希が小倉の病院を訪ねると、直美は入院していなかった。
そのうえ、陽二の弟子にあたる鈴本教授を訪ねたところ一週間ほど前に“奥様”から講演の辞退を伝えられたと言われた。
噛み合わない時系列。
そして陽二の家の整理中に再び訪れてきた直美の息子に、その事を告げると、息子も会えていないのだと言う。
「認知症の老人から入院費をせしめようとしたんですか?」

そう問いかけた卓に、直美の息子が逆上した。
「僕から母を奪い、30年も家政婦として扱って、認知症になってからは苦労ばかりかけられて、倒れた。どっちが悪いのかわかるでしょう」
そして、直美の息子は直美の妹である緒方ともこに性的いやがらせをして脚を怪我させたのが陽二であり、そうゆう人間なんだと言い放つのだった。

陽二と直美の穏やかだった生活は、陽二の認知症の進行によって徐々に変わってきていた。
陽二がアマチュア無線用の機材を買っている間にスーパーで買い物を済ませた直美と待ち合わせる。
しかし帰宅してその機材をすでに購入していたことに気づいた陽二は、言い知れぬ不安に襲われ、イラつく日々だった。
そんなある日、東京に二人で出かけようとした際にも、そのことを忘れていた陽二と言い争いになり、直美は家に残された。
その日は東京で卓とその妻と会う予定だったのだ。
卓が遅れたため、夕希は陽二と先に挨拶を済ませた。
その中で、卓の母親がすでに他界していることを知った陽二は、少し寂しそうな表情になっていた。
そこへやってきた卓に、挨拶の順番が違うことなどを諭したが卓は「人はみんな特殊ですから」と、陽二の言葉を使って反論した。
「少なくとも、僕は夕希さんに対して誠実です」

施設を訪れた卓と夕希は、ベルトの壊れたことを嘆く陽二の現実を認知できていない様子の話を聞いていた。
その別れ際「父さん」と声をかけて自分のベルトを外して陽二に付ける卓。

ある夜、ベッドから落ちた陽二は混乱していた。直美がどんなに声をかけても理解できていないようだった。
「帰らなきゃ」
そう言う陽二をなだめるが、ダイニングテーブルで何かを書き続けているだけの陽二。
意を決してキッチンの収納庫の中から日記帳を取り出した直美が、その中の手紙を読み「もう30年ですよ」と思い出させようとしたが、それは逆効果だった。
「どこの誰だか知らないが、人の名前を騙って人の心を揺らさないでくれ!」
直美の日記を奪い去り投げつける陽二。
その数日後、買い物に出かけた際に、陽二は書店へ向かい、直美はスーパーへ向かった。いつものように待ち合わせをしていたが、陽二の姿を見て落ち着いた直美は急に心臓の傷みを覚え、その場に倒れ込んでしまった。
一方、ガラス越しに直美の姿が見えなかった陽二はそこから去っていってしまう。
その陽二の足を、倒れ込んだ直美は見つめ、絶望していたのだった。

卓は先に東京へ夕希を帰し、熊本の網田へ向かっていた。
そこは直美の故郷で、陽二が直美を想って海を眺めた場所。
直美は、緒方ともことともに暮らしていた。
「陽二さんのことは私に任せて、何もかも忘れて」
ともこは傷ついた直美を気遣っていた。
そのともこのアートフラワー工房を訪れた卓は、ともこに直美の日記を渡した。
「直美さんが持っているべきものですから」
直美が陽二のそばにいないこと、それが二人の関係の答えだと思っていると言う卓だったが、陽二が直美のことを想っていることは伝えた。
そんな卓を追ってきたともこは直美の日記を卓に突き返した。
「燃やすなり好きにしてください。ここにいない、それが全部ですよ」
結局、直美に会うことのできなかった卓は、陽二も見つめていたであろう海を眺めながら夕希とビデオ通話していた。

直美の荷物を取りにきていたともこを制止するように腕を掴んだ陽二だったが、力が入りすぎてともこを転がせてしまう。
その場から逃げ去るように家を出た陽二は住宅街を徘徊しながら直美の名前を叫んでいた。
直美の不在時、留守番電話の再生方法もわからない陽二は不安な日々だった。

施設を訪れた卓だったが、感染症の拡大によって面会はできなくなっていた。
ただ職員に卓は先延ばしにしていた答えをした。
「できるだけしてやってください。延命治療」

直美が戻ってきた際、鈴本からの電話を直美が受け、講演を断った。
その時、床に転がる直美の日記を見つけた陽二は、それを読みながら昔のことを鮮明に思い出していた。
「もう30年ですか」
それはかつて直美が言った言葉だった。
そして直美が出て行く。
車のキーを渡し、直美の髪を撫でる陽二。その手を握り頬に当てて涙ぐむ直美。
「行ってきます」
そして直美は車で出て行った。
その後、陽二は電話が鳴ったが出れなかった。メモの貼り紙を見て、電話の出方を確認した陽二は何度も電話をかけ間違え、そしてつながったのは110番だった。
「はい警察です。事件ですか事故ですか?」
陽二は決意したように「事件です」と答えた。
そしてスーツに着替え、鞄に大事なものを詰め込んでいった。
アマチュア無線の電源を入れ「たっくん、こちら安定しました。向かいます」とマイクに語りかけた。
身支度を終えた陽二が玄関を開けると、機動隊員の銃口が向けられた。
その頃、卓は芝居の稽古中だった。
全ての荷物を捨てて歩く芝居。そうやって曲がった腰を真っ直ぐにしようとする役柄で、それに至る心情が語られていく。
ライトを浴びる卓。

認知症のリアルさが印象強い作品で『高野豆腐店の春』とは違うかたちで藤竜也の演技力が高い評価をされている要因だ。
オープニングの機動隊員の登場から、何かの事件性を匂わせることで、直美の行方にサスペンス要素がより強く含まれていく。
直美の息子のミスリードによって謎が膨らむ中、陽二の直美への恋心が主軸になっている。
どんなになっても息子の卓のことを「たっくん」と呼び続ける陽二と、序盤では「陽二さん」と呼んでいた卓が「お父さん」と呼びかける1シーン。これだけで30年の疎遠があっても、お互いに親子で有り続けたことを知らせてくれる。
卓が陽二と直美の家を訪れた際、直美が息子の結婚式に陽二が参列しなかったことを告げるのだけれど、その理由が“本当の息子にしてやれないことを、直美さんの息子にすることはできない”というものなのがとてもリアルだった。

ただ卓を主役とした物語として捉えると、物足りなさを感じる部分があるのは確かだが、全体としてはこうならざるえないだろう。
冒頭とエンディングが同じシークエンスであり、その間にあるのはほとんどが悲劇に向かうフラッシュバックだ。

ただ、ラストカットでライトを浴びている卓というのは、もしかしたら陽二の全てを知った後に、演技の幅が広がって喝采を浴びる姿を暗示していると考えてみると、卓の人間的な成長の物語であると解釈することもできる。

昔恋をしていた女性への恋心から家族を捨てた陽二という設定が、僕に重なる部分があったので多少、辛かった部分もあった。それだけに30年も疎遠でいた息子があんなに僕の足跡を辿るだろうかという疑問で、卓に感情移入できない部分があったかもしれない。
実際、どうなのだろうか?
例えば僕はゼロ葬を希望しているので、僕が死んだことを娘や息子が知っても墓参りさえできないことになる。だからといって、僕の死について調べたりするだろうか?
僕は家族を捨ててしまったという罪悪感と後悔から、生きていることは苦痛でしかないと思っている。仮に僕が認知症になったら延命治療は拒否して欲しい。
それだけに「できるだけしてやってください」という卓のセリフに、ある種の悪意を感じてしまうのかもしれない。
延命するということは、苦しみ続けろと言っているようなものでもある。
この作品では、陽二に生きていて欲しいと卓が思えたという、意識の変化を象徴したセリフとして扱われているのだけれど、状況から考えると、逆に薄っぺらに感じてしまうセリフでもある。

今日のお昼は近所の“まつもと”さんへ。
すっかり普通に入れるようになったけれど、当初はこの一軒家のお店に入るのはドキドキしたものだ。
今日はずいぶんお客さんがいて、話し声がいろいろ聞こえてきて賑やかだった。

いつもの天丼定食。
他のメニューを食べようと思いながらも、いつも同じものに落ち着いてしまう。
そして相変わらずの美味しさ。これだから他のメニューを注文できないのだ(笑)

そしてこの記事を書いている最中、永山公園での青梅納涼花火大会が始まった。
音につられて外に出て少しだけ見てみたけれど、やっぱり遠すぎる。
秒速30万キロメートルの光と秒速340メートルの音が、大きくズレてしまうのは仕方ないのだけれど、子どもの頃から打ち上げ台を間近にした江戸川花火大会を観てきたせいか、光と音がズレるのが気になって仕方ないのだ。
江戸川花火大会では光と音はほぼ同時だし、風向きによっては火の粉を浴びる。
それに青梅の花火大会は山の中で行われるので、打ち上げられているものよりも山間部に仕掛けられる仕掛け花火が大きな見せ場だ。
5年ほど前に一度だけ観に行った際に、それまで最高だと思っていた江戸川花火大会を超える感動を初めて味わった花火大会が青梅のこの花火大会だ。
来年が僕に訪れるかどうかはわからないけれど、もう一度永山公園で観たい。
独りで行ける場所ではないので、一緒に行ってくれる誰かがいることが条件になるので、もう観れないのかもしれないけれど(笑)