販売員として最後の4連勤を終えて2連休。
退職についてはかなり秘密にしてきたので、驚く人が多くて面白かった。
嬉しかったのは、戻ってきて欲しいと同メーカー販売員だけでなく、店舗の社員や他メーカーの販売員からも言ってもらえたこと。
4年も働いてきた場所ではあるけれど、なぜかそんなに寂しさを感じなかったのは、出入りが激しいので別れに慣れてしまったせいなのかな。
本来は明日から新天地の予定だったのだけれど、転職先の計らいで4/1が休みになったため、予定外の連休になってしまった。
とりあえず今日はゆっくり起きて、床屋に行ったり、青梅の町を散歩したりと、かなりゆっくり過ごして、結局シネマネコさんの16:45上映回を鑑賞しに行った。

いつものB-5の席を指定すると、いつもの人が受付でないので「前から2列目ですが大丈夫ですか?」と訊かれてしまう。

僕は、スクリーンを独占できるここが好きなのだ。
そして今日はスタンプが貯まっていたので無料で鑑賞できた。

カムイのうた
“実話に基づく物語”と大きくテロップがうたれ、序文を執筆している北里テルの姿にその序文がナレーションされる。

【その昔、この広い北海道は私たちの先祖の自由の天地でありました】
北海道の四季。その自然の中で、自然とともに生きてきたテルの先祖。それはアイヌ民族だ。
しかし時代が進むにつれて、自然は壊され、村ができ、やがてそれは町になり、自然とともに歩んできたアイヌの土地は奪われていった。
テルは大きな決意のもと、汽車に揺られていた。

大正6年。
進学するテルに流行りの着物を着せて送り出す叔母もまたアイヌ民族だ。
しかし旭川区立女子職業学校に入学したテルは、校内に入っただけで差別の言葉を耳にした。
「アイヌの来る場所じゃねえ」
「土人学校に行けばいい」
「臭い」
そんなテルだったが、学業優秀で入試の成績順に決められた役割で副級長を任命されるが、教師の意向とは逆にクラス中に反対される。
尋常小学校時代、遅刻してきた妹モトが禁止されていたアイヌ語を話したために竹刀で殴られた時、テルはそれを守って一緒に殴られた。

大日本帝国の軍隊が学校を訪れた際、モトが赤い血を流しているのを見て「我々と同じように血は赤いんだな」と言われた。
アイヌへの差別は、それほどに酷いものだった。
また、当時も土葬を行っていたアイヌの墓は荒らされ盗難に遭っていた。
一三四が警察に訴え出ても相手にされない。アイヌだからだ。

そんな彼らアイヌの仲間がテルの叔母の家で囲炉裏を囲いながら、叔母に頼むもの。
それが【ユーカラ】だった。

副級長になるのは難しいと沈んでいたテルがムックリを演奏していると、幼馴染の一三四が励ました。
「俺たちが何をしたっていうんだ。アイヌに生まれただけなのに」
一三四の祖父は明治初期、和人による強制労働に駆り出されていたことがある。

テルは級長による投票の提案によって副級長にはなれなかった。
そんなテルは帰り道で茂みに隠れるモトを見つけた。
倭人の同級生にいじめられ、そこから逃げていたのだとわかったテルはモトを連れて走り出すが、追いついた和人に囲まれムックリも折られてしまう。
その夜、家でモトがテルのように勉強ができれば高等学校に進学できるのにと口にするが、テルは激しく否定した。
「蔑まされて、見下されて、肩身の狭い思いをしてまで勉強して何になるの?もっと自由に羽ばたけばいい」

その頃、東京女子高等学校では教授の兼田が熱弁を奮っていた。
「文字のない世界を想像して欲しい」
それは手紙も、小説も、戸籍謄本も存在しない世界。
「文字を持たず、ポエムを口承文学という形で文化を後世に伝承し続けてきた。これは世界でも類をみないことである。その民族はアイヌ民族だ」
そんな兼田がテルの叔母のもとを訪れ、叔母が謡う【ユーカラ】を必死に書き留めていた。
そこへやってきたテルもまた【ユーカラ】の伝承者であることに驚いた兼田は、熱中するあまり汽車の時刻を過ぎ、叔母の家に泊まることになる。
そんな兼田はテルと叔母が交わすアイヌ語での言葉を理解していた。
テルが兼田に問いかける。
「アイヌであることは、恥ずかしいことではないんですか?」
「あなた方は世界に類をみない唯一無二の民族だ。アイヌ民族であることを誇りに思ってください」
その言葉に希望を見出すテル。
兼田はその夜、叔母からテルが成績優秀でありながらアイヌであるために女学校の入試で落とされたことを知った。
「アイヌってだけで教育受けることも許されんのですか」
“女学校は軍人の子どもが行く場所。和人はアイヌを人間と犬の間の子くらいにしか考えていない”
「あなたの言葉で書くべきだ」
翌朝、兼田はテルに【ユーカラ】の日本語訳を書くべきだと伝えた。

そして兼田はテルにノートブックを贈った。
「私たちの祖先は土地を奪われ、言葉を奪われ、いろんなものを奪われた。それでもあんたの中にある“ユーカラ”は誰にも奪えん」


アイヌ民族であることは誇りであると気づいたテルは、アイヌ語をアルファベットで、その隣のページに日本語訳をつけていく。

それを東京の兼田に送り、手紙でのやりとりを続けていった。
テルは日本語をもっと学び【ユーカラ】の持つニュアンスをもっと正確に伝えたいと、何度も推敲していく。
そして兼田から東京にきて学ばないかという誘いの手紙が届くのだった。
しかしそんな時、モトが川原でいじめ遭ったすえに殺されてしまった。
書き溜めた【ユーカラ】を囲炉裏で燃やしていくテル。
「ユーカラを燃やしてもカムイは喜ばんよ」
叔母の言葉に、悔しそうに「守ってやれんかった」と涙をためるテル。

一三四はテルにモトの分も生きなければと語ったが、一三四は軍人になると言い出す。
「私たちをいじめた和人のために戦うんか?」
一三四は、アイヌでも人間の尊厳を守るために軍人になると言う。
「東京、行くんか?」
その一三四の問いに、力強く頷くテル。
そんなテルにお守りを渡し、小刀を渡して「東京から戻ったら一緒になって欲しい」と求婚する一三四。
二人にとって、大きな決断だった。

近文駅から汽車に乗ったテルは、東京上野に着くと立ちすくんでしまった。
そこには多くの人が行き交い、ざわついていて、全てが早く通り過ぎていく。
そのテルを出迎えた兼田は、人力車で自宅へ向かいながら東京をテルに見せていく。
東京はビルに囲まれ、全ての建物が大きかった。
兼田の自宅近辺では、兼田がアイヌ人を連れてやってくるというので物見にくる人々もいた。
「クマも連れてくるんじゃろうか?」
兼田の自宅に着いたテルは、兼田の机を与えられた。
そうして執筆の日々が始まった。
やがてテルの書いた原稿の出版が決まり、兼田は序文もテルに書いて欲しいと伝えたが、出版社はそれによってテルの素性が判ってしまい、差別に遭うことを危惧した。
「アイヌであることは恥ずかしいことだと思っていた私に、それを誇りなんだと教えてくれたのは兼田先生です。私はアイヌです」

序文の執筆にとりかかったテルだったが、北海道にはない梅雨や夏の暑さの中、かねてから違和感のあった心臓の苦しみで倒れてしまう。
診断されたのは“弁狭窄症”。
その心臓の病によって医者から“結婚のできない身体”と診断されてしまう。
泣きながら一三四に手紙を綴ったテルは、結婚の申し出は受けられないけれど私たち民族の伝承の役目をカムイに与えられたのだ、と文面では強がった。
その手紙を読んだ一三四は、汽車に潜んで乗り込み、テルを迎えに向かった。

その頃、テルは序文を書き上げていたが、その執筆後、そのまま息を引き取ってしまうのだった。
「私の研究の犠牲にしてしまった」
言葉を失う兼田夫妻。
そこへやってきた一三四は、テルの亡骸にすがりつき泣きじゃくるのだった。

一三四は、軍人になった。
そして叔母は【ユーカラ】を書き留めては、テルの遺影に供えていくのだった。

“ユーカラはいまもなお翻訳され続けている”

アイヌ神謡集』の著者知里幸恵をモデルにした物語なので、兼田は金田一京助だ。
去年鑑賞した『劇場版 永遠ノ矢 トワノアイ』に続くアイヌ民族を題材にした作品。
旭川が舞台になっていることを考えれば、僕の遠いルーツとさえ思えるもので、予告で上映を知った時から鑑賞したいと思っていた。
僕の祖父はアイヌではないけれど、この作品で描かれている大正前期に旭川で生まれ育った。祖父からアイヌに関して聞いたことはないけれど、祖父が生まれた当時、大日本帝国はこれだけ酷い差別と迫害を行っていたのだ。
日本は決して単一民族ではないけれど、当時、台湾や朝鮮に行ったようにアイヌに対しても、強制的に日本語教育を行った。それは歴史的な事実だ。
劇中、まつ毛の長さを“気持ち悪い”とからかわれたテルがまつ毛を切るシーンがあるが、そういえば僕もやたらとまつ毛が長い。もしかしたら混血かなにかでアイヌの血が流れているのかもしれないと感じたシーンだ。
驚いたのは、アイヌが墓参りをしないということ。そのため墓荒らしに遭いやすかったのだという。
先祖の肉体は土に還り、魂は墓にない。インディアンと同じ思想だ。
その墓荒らしを行っていたのは東京帝国大学の教授の依頼によるもので、人類の進化の研究のために倭人と違う骨格であるアイヌ民族の標本を集めていたという点も驚きだったが、テルが亡くなった後、兼田が一三四の祖父の遺骨を奪い返すために帝大の研究室に殴り込みに行くシーンも印象的だ。
なにより印象的なシーンは、心臓の病の診断を受けたテルが一三四に手紙を書くシーンだ。
彼への想いを、叶えられない想いへの辛さを必死に隠そうとする文章を、涙を流しながら書くテルの心情に胸を打たれる。
アイヌであることを恥じて生きてきたテルが、アイヌであることを誇りに思えた矢先の出来事。その手紙を受けて、東京へ駆けつける一三四の想い。
享年19歳。
アイヌ伝統文化復権に重大な転機をもたらした彼女の生涯は、アイヌの受けた差別描写とともに、とても心に響くものだった。

劇中、テルの妹も、一三四の弟も“倭人になりたい”と言い出すシーンがある。
一三四の弟は倭人の手伝いをして墓荒らしをしてしまうくらい、アイヌへの差別に堪えられなくなった様子に心が痛くなった。
差別はいけない、そんな綺麗事は現実には通用しないものだ。
一定の“差別対象”を作り出すことで、社会は安定する部分がある。
それは人間の本能なのかもしれない。
いじめがなくならないのは、そういった要素のせいだろう。
いじめと差別はほぼ同義だ。
それが良くないことだというのは“正論”でしかなくて、実に“正論”ほど嘘くさいものはない。

真実を隠すための言い訳が“正論”だ。
差別はいまもまだあり、これからも存在し続けるだろう。

だからこそ、こうやって差別の歴史を知ることは大切なことだと思う。

『劇場版 永遠ノ矢 トワノアイ』で描かれているように、江戸時代から現代に至るまでの間に、アイヌ民族はすでに自分がアイヌ民族であるかどうかがわからなくなるほど迫害されたのだ。

そんな中、金田一京助によってアイヌ語が保存されたことは大きな意義を持っているだろう。たとえ様々な批判があるとしても。

先週の火曜日には、2年ぶりくらいに会う元販売員仲間との食事会があった。
彼らの会話の中で僕の名前が出たらしく、久しぶりに連絡を貰ったタイミングで僕の転職が決まっていたので、送別会のような会。
馬刺しやら馬肉ユッケなんかも食べながら、豚しゃぶを食べたけれど、楽しく会話も弾み、食事も美味しかった。
こんな仲間と出会えたことは、販売員をしていた財産だろうなって思う。
そもそも男だけで飲み会をすることに慣れていなかった僕が、男同士で楽しめるようになったのは、大きな成長かな(笑)
送別会ではあったけれど、僕の熊本行きが延びたので、なんだか気恥ずかしいくらいだけれど、せっかく東京にいるのだから、こういった楽しみをしばらく楽しんでもいいかなぁと思えるようになった。
なので、恒例の男子会に4月も参加しようと思っている(笑)

なかなか転職先の就業場所や就業時間の連絡がなかったので催促してみたら、一昨日、売場にやってきてくれて、そこでとりあえずのスケジュールを決めた。
そもそも売場に来た社長さんにパソコンを販売対応したら会社に誘われたというのがきっかけで、その場のノリで決まったような転職なので、いろいろと雑だ(笑)
正直、未だに何をするのかよくわかっていない。
分厚い資料を渡されただけで、会ってもいつも雑談ばかりだったので、本当に詳細を知らない、未経験の業界への転職。
昨日は社長さんから電話があって、とりあえず業務に慣れて貰って早く俺のとこにおいでって言われた(笑)
最初は出向扱いで会社のメイン業務を覚えていくことになるらしい。
俺のとこって、熊本かな?佐賀かな?なにしろ九州らしいけれど。
とりあえず、そっちに早く行って、新規の事業を展開していくことを期待されているのを感じている。
明日が休みになったので、資料を読み込まないとな。
全く馴染みのない単語ばかりでほとんどチンプンカンプンなんだけれど(笑)