12月28日、所属するEオケの演奏会でした。
今回の会場は、太田区民ホール「アプリコ」。
自分がまだオーケストラに入る前に、ちょこちょこ顔を出していた初心者中心のアンサンブルの団体が活動していた場所が、このアプリコでした。
まさかこうしてオーケストラのメンバーとして演奏するため再びこの会場に戻ってくるなんて、感慨もひとしおです・・・
つい先日Mオケの演奏会報告をしたばかりですが、なんと1か月もせずに別のオケの演奏会に乗らせていただきました。
理由の1つは前回のブログのとおり、バイオリン熱再点火中であること。
もうひとつは、自分がオケで弾いてみたい曲があと3曲だけあるのですが、そのうちの1曲を将来このオケがやる予定なのです。
このため、自分は次回のその曲の演奏会から入っても良かったのですが、1曲目当てで1回の演奏会だけ出るというのはなんか失礼な気がしたのと、今回の演奏会でも「好きなうえに弾いたことがない曲」があったこと、そして「今回から乗ってください」と言われたため、本番までに仕上げられる期間は短いですが乗ることにしました。
<今回のプログラム>
ボロディン 「だったん人の踊り」 (歌劇「イーゴリ公」より)
リムスキー=コルサコフ 交響組曲「シェヘラザード」
ショスタコーヴィチ 「交響曲第5番」
このうち自分にとって「好きなうえにこれまで弾いたことがなかった曲」は、シェヘラザードです。
この曲は、すごくロマンチックなメロディが散りばめられていて、クラシックファンでなくてもどこかでメロディを耳にしたことがあるかもしれません。
自分は過去に弾く機会が無く、これからは「玄人プログラム」専門のMオケのみを主戦場としてやっていくつもりだったので今後も弾く機会はないだろうと思っていたことから、ここにきて思わぬ出会いというところ。
シェヘラザードはとても素敵な曲なのですが、この曲に関しては先日Youtubeでこんな内容の日本人のコメントがありました。
「この曲はオーケストレーションこそ巧みだがそれだけで、深みがまるでなく所詮子供が聴く曲だ」
実際にはもうちょっと辛辣に書いてありました
これを読んでの自分の感想は、
「クラシック音楽を聴き込んでいる人の中にはこういう批評をしちゃう人も必ずいる。でも、これはちょっとずれている意見」という感じ。
わずかに共感するところはある。ベートーヴェンの音楽やチャイコフスキーの悲愴、マーラーのシンフォニーなどにもみられるような作曲者の情念が織り込まれていないから、深みがないと言われれば確かにそうかもしれない。
でもですよ?正直この曲にそういった批評をすること自体が的外れな気がします。
この曲はそもそも「魂の叫び、迸る意志を反映した芸術作品群」とは別のジャンルでしょう。
大人も子供も、誰が聴いても楽しめる大衆曲。それが作曲者の意図するところです。
千夜一夜物語ですよ。おとぎ話なんです。それを見事に描き切っていると思いませんか?
第3楽章なんて、すごく美しい旋律が流れていき、本当に絵が浮かんできそうな素敵な世界が展開されたあとで、「というお話でした、ちゃんちゃん」みたいな、今夜のおとぎ話はこれにて終わり~という締め方をする。
第4楽章では大海原を進む巨大な船の結末と、寄せては返す波の情景を見事に表現している。
すごく考えられているし、自分はこの曲、凄い秀作だと思うんです。
「苦悩から歓喜へ」とか「人生の矛盾と悲哀」とかを込めた曲じゃないんだから、「こんな曲浅いわ!ガキの聴く曲じゃん!」という書き込みをわざわざする方がどうかと思うけどなー
まあ気持ちはわからないでもないですけど。
そうじゃないんですよ。
シェヘラザードはクラシック通じゃなくても誰もが気軽に接することができる音楽。
おとぎ話を見事な色彩で描き切った大作なのです。
今回の自分はものの見事に体調を崩しまして、ひどい咽喉の風邪にやられました。
2日前の木曜日に仕事を半日だけ休むなどして必死に調整したものの、間に合わず。んーでもよくここまで戻したなという印象。
当日も薬で熱を落としての演奏ですから、身体はフワフワするし、体調万全の時と比べれば集中力もどうしても欠いてしまう。
こうなると弓も走りません。シェヘラザードの第3楽章、もっと楽しんで弾く予定だっただけに残念・・・
迷惑が掛からないように弾き切ることで精いっぱいでした。
それにしてもコンミスの楽器、すごく鳴ってる!本当にいいオールドの楽器を使っているなぁ。
もちろん裏板まであんなに大きく鳴らすコンミスの腕前もすごいのです。
リコシェの音をあれだけはっきり出すんだから、やっぱりプロの方は違います。
このコンミスさんは、アインザッツがものすごく分かり易い。こんな弾きやすいコンマス(コンミス)は初めてかも。
バイオリンチームの技量も高いし、この若いオケはアマチュア団体の中では比較的個々のレベルが高いオケだと思う。
シェヘラザードは大曲でした。中プロなのに、ステージ上の奏者もお客さんもまるでこれで演目がすべて終わったかのような反応。
聴く側も弾く側も充実感を得たのだから、よい演奏になったということでしょう。
メインのショスタコ。この曲を1stで弾くのは2回目です。過去最悪の体調で臨んだ今回の演奏会もどうやら最後まで完走できそうということで、とにかくこの曲は第3楽章の音をしっかり出すことだけ決めていました。
結果としては、うまくいきました。みんな自分くらいバーンと音を出してくれれば、もっと劇的な音楽になるのだけれど・・・
1stバイオリンのメンバーは自分より上手に弾ける人ばかりだけど、みんな楽器を鳴らすことは苦手みたい。
病人が一番いい音出しているようじゃ駄目ですよ!(笑)
こうして、なんとか最後まで弾き切ることができました。
曲が終わった時に「ブラボー」の声が飛んできたんですが、これがすごくいいブラボー(笑)
なんかブラボーってそれを叫びたいだけじゃん的なこともあったりするじゃないですか。もちろんそれは会場の熱気を伝えてくれる盛り上げの一声としていいんですけど、ブラボーありきのブラボー見たいな。
でも今回の奴はまるで違った。
なんか心の底から「素晴らしかった!」って思ったものが自然に声に出てた的な。
だから発声も明確なブラボーではなく、「ブァラウォォオオ!」みたいなやつ、それが2カ所も!(笑)
これは嬉しかった。こんな素敵なブラボーはオケ歴17年のあたくしもあまり経験がない。
ほんまもんの聴衆の感動がダイレクトで伝わってきた感があって、自分もステージ上で涙目になってしまいました。
お客さんの数も、このオケでは今回が一番入ったそうです。
自分は良いときに演奏会に乗ったなー
そして帰宅して、闘病生活へ(笑) やはり反動は半端なかった。
この2日間寝込んで、ようやく今ブログを書けました~。
ということで、熱もようやく下がったので、明日の大みそかに実家へ帰省する予定です。
皆様、良いお年をお迎えください!