願望実現と幸福の関係

 

 

美紀 それはさっきの幸福とはゼロベースって話しですよね。でも、人は「あれになりたい」「これが欲しい」と言って様々な願望を持って日々生きていますよね。いわゆる「夢」を持っているというか、そういうのは小学校の頃から「将来の夢」みたいな感じで考えさせられると思うんです。だから、願望を捨てて生きるっていうのもちょっと腑に落ちないというか。人生の面白味がないように感じるんですが。

 

岡本 もちろん、人は様々な願望や夢を持って生きていますので、それを否定したり無意味であると言っているわけではありません。願望が苦しみになるという心の相対性についてお話しているのです。

 

美紀 願望を実現することが苦しみになるってことですか?

 

岡本 そうです。例えば、美紀さんは子供の頃に何か夢がありましたか?

 

美紀 そうですね。私はバレーボールの選手になりたくて、ずっと練習していたので、それが夢でしたね。チームも結構強くて全国大会まで行ったんですよ。

 

岡本 でも今はやってないんですね?

 

美紀 はい。怪我でやめてしまいました。そのときは辛かったです。オリンピックを目標にしていたので。

 でも、怪我さえなければ夢を叶えていたかもしれません。

 

岡本 そうですね。一つは今美紀さんがおっしゃったように、怪我などで夢が絶たれてしまう可能性があります。このとき人は、強い願望を持っていればいるだけ苦しむことになるでしょう。

 

美紀 ですけど、実際にオリンピックに出場できる選手もいるわけですから、そういう人たちは夢を実現して喜びを得るわけですよね。それは成功なんじゃないですか?

 

岡本 しかし、その喜びもまた一時的なものですよね。仮にオリンピックに出場できたとしても、また四年後に出場できるとは限りませんし、あるいは、自分のパフォーマンスは年月とともに衰えていき、いずれは引退しなければなりません。

 ですから、仮に願望を実現できたとしても、必ずその喜びは失われます。スポーツ選手であれば、怪我か、自分よりも優秀な選手が現れるか、または体が衰えるか、いずれにしろ願望がいずれ苦になるという心の相対性は避けることができません。

 

美紀 うーん、そう言われるとそうですね。たまに成功した人が心を病むという話しは聞きますけど、願望を実現しても結局は苦しみに変わってしまうんですね。

 

岡本 それはむしろ、周りから期待されていたり、大きく成功した人の方が苦しいでしょう。一度成功の快感を味わうと、それをまた味わいたいという飢餓感に襲われて苦しみます。また、一度得た成果が失われることも強い喪失感になるからです。

 例えば、一度お金持ちになって贅沢をした人が、何らかの都合でお金がなくなったとき、一般的な生活水準に戻るだけでも恥ずかしいと思ったり飢餓感を感じたりします。あるいは、名声を得た人が、それを失うとひどく孤独を感じたり、自分は社会から必要とされていないと錯覚することもあります。

 このように考えれば、社会的な成功そのものは人間の幸福には直結しないし、ある意味では苦しみのリスクを自ら進んで抱えている、危険な状態であるとも言えます。

 

美紀 なるほど、確かに成功が苦しみの原因になるってことは分かりました。でも、願望を持って生きないとすると、一体どう生きればいいのか、人生の目的も失われてしまうように感じるんですが、そこはどう考えればよいのでしょうか?

 

岡本 そうですね。ヨーガ心理学では、人はそのような願望実現や成功を求める生き方ではなく、成功や失敗に囚われない生き方をすべきであると教えます。また、愛や慈悲に根ざして、自分の幸福だけでなく、他者の幸福のために生きるべきだと考えます。

 この問題については、次の章のテーマとして話し合いましょう。

 

 

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