昨年末に「何とかならないか?・・・」
相談を頂いておりました1990年(H2)トヨタ・ハイラックスサーフの
シフトロックコントロールモジュール。



すでに3枚おろし・・・私の悪いクセ。



いつぞやから。オートマチックトランスミッションの
シフトレバーは「ブレーキを踏んだ」状態でしか
シフトレバーがPからDやRに入らない構造になりました。
「シフトインターロックシステム」と一般的に呼ばれています。


ATのシフト操作ミスによる
飛び出し事故が多発した為
メーカーが施した対策です。


当時、AT車が殆どの割合を占めるようになった
乗用車で、飛び出し事故が一気に増えたワケで
運転の「ヒューマンエラー防止」という認識が
浸透し始めた時代でした。


今では、MT車でさえ
クラッチを踏まないとエンジンがかからない構造に
なっています・・・嗚呼、人間は環境に慣れると
退化してしまう動物なのでしょうか。


まあ、メーカーも大変なコストをかけて
シフトインターロック機構を装着したのですが
今でもコンビニに車が定期的に飛び込んでいるのを
ニュースで見るにつけ「ヒューマンエラー防止」って
キリが無いのかな?と思ってしまったりします。



そんな時代を経て
現在に生き残るハイラックスですが
このシフトロックモジュールの内部基板が
故障して、ギヤがDレンジに入らなくなったとの事。



内部基板に実装されている
「電解コンデンサー」がお漏らしをした影響で
プリンタパターンが腐食 ➝ 動作不良と
まあ、お決まりのパターンですな。



いつもと違うのは・・・
「いちど修理に失敗している」こと。


当方に依頼が来る以前に
基板の故障を確認した依頼者様は
付き合いのある電装屋に相談すると
「ウチで直せます」との返答を得たそうで
基板の修理をそちらに任せたそう。


ところが、まさかの「修理失敗」で
帰ってきたそうで・・・
諦めて新品を取り寄せようかとトヨタ部品に
問い合わせると「製造廃止でございます」
ツレない返答で、ならば中古部品をと
全国を探しまわっても一向に見つからず・・・


聞けば、ハイラックスは
海外の需要が非常に高い車で
日本で役目を終えた個体のほとんどは
海外へ「中古車」として輸出されてしまうのだとか。


従って、中古部品の残存も非常に少ないらしいです。


新品ねえ!
中古もねえ!
車はギヤがはいらねえ! 


三段落ちで、ある意味
「死刑宣告」じゃないの??


オーナー様は修理しまくっても
まだまだ乗り続けたいとの事で
車的には「幸せな一台」だなと・・・


そして御依頼が来たのでした。


このところ「80's カー」の
モジュール修理の依頼が連続しています。
(今回は90'sですが)


以前ご紹介した「ハイエースのECU修理」もそうですが
電子制御が一気に進んだ時代。
この「ネオヒストリック系」の名車達に課せられる
大きな問題は・・・

「電子制御の故障」

機械的な故障は
以前の修理方法で何とかなるとして
この類の「ブラックボックス」の故障は
修理手段も限定されて
ドツボにハマれば 

「 廃  車 」

を余儀なくされてしまう難題です。

現にモジュール一個の故障で
「青息吐息」になっているハイラックスが
存在するのですから。


このところ、偶然かとは思いますが
80~90年代の電子部品の修理が連続していることを
鑑みると、明らかに良くない方向へ加速していくのだろうと
予測しています。


でも、そんな中だからこそ


オイラ、がんばっちゃうもんね♡


トヨタ・ハイラックス・シフトロックモジュールなおそうや!
(長い)



うむ・・・なかなか苦戦されたようですね。

「何とか復元しよう」とされた痕が見られます。
なるほど、こんな修理の方法もあるのだと・・・
人それぞれで勉強になります。


回路の復元も合理的ですが・・・



電解コンデンサーの昇天による
パターン腐食に気を取られたのか
他の部位のチェックが行き届いていなかったようです。
画像はチップ抵抗のハンダクラックですが
このようなハンダの劣化が随所に見られました。




パターンの傷みを確認するため
周辺の部品を取り外します。



腐食して失われたパターンを
どのように復元するか・・ニードルで研磨をしながら
検討します。



見難い画像ですが
0.2mmのポリウレタン被覆線で
失われたパターンを復元してゆきます。



裏から・・・
こちらも劣化したハンダは除去をして
新しいハンダを流します。
いつもの「ハンダ交換」ですね。


これを全部のランドに繰り返して
ハンダを入れ替えます。



曇った劣化ハンダを取り除いて
ピカピカの新品ハンダを入れ直し・・・
トランジスタも「男前」に見えるでしょ?(笑)



復元完了。
電解コンデンサーもスッキリ新品に交換して
絶縁の「グリーンレジスト」を塗布してフィニッシュです。



基板全体もクリーニングしておきましょう。




ワイヤハーネスを取付、ケースを閉めて
全ての作業が終了しました。





こんな小さなモジュールですが。
これひとつ機能しないだけで車は動きません。

そう思うだけで
少しだけ「神々しく神見える?ワケないか・・アハハ



順調に納品。
本日「無事に復調しました!」
との知らせを受け、ホッとした気持の午後でした。


トヨタ・ハイラックス 
シフトロックモジュール修理完了です!OK


また本日、AW11(MR2)の
エアコンアンプがやって来ました(笑)