自分の判断でステロイドを抜いた僕はみるみるうちに状態が悪化していった。 

セラピーには原チャリで通っていたが原チャリで通うのも困難になってくる。 

1つ目は半ヘルだったので見た目からの問題。周りの車が驚いた顔で僕の顔を見る。2つ目は、あまりにも掻きむしり過ぎて、ヒリヒリしてしまい、外に出る事が困難になってきたから。 

ステロイドを塗っていた部分全部がひどい状態になっていた。前回のクロレラよりももっとひどい状態に・・・・ 

手足は綺麗だったが、僕は顔が1番ひどかったからやっかい・・・・ 

顔と首の皮膚は薄く傷つきやすい。外の風を受けるとヒリヒリしてしまい涙がこぼれる・・・・ 

家にふく微風ですら耐える事ができない。タバコの煙が皮膚にしみて痛くて涙がでる。そんな状態でバイクに乗れるはずがない。

僕の生活といえばまさに地獄だった。

1日中かきむしり、1日中顔を叩きまくる。家には常に僕が顔を叩くパンパンという音が響いていた。

ピーじゃない人には想像がつかないと思う。気の狂うような痒み。そして激しい痛み。

人は痛みはある程度我慢できても痒みは我慢することができない 

ピーがやっかいなのは痒みだけではないって事。

皮膚を毎日ものすごい勢いで掻き続ければ当然弱くなる。

それを毎日・毎時間・毎分・毎秒と続ければ血がでてくる。

そして、以前体験したあのネバネバした半透明の黄色の液体。

掻き続ければ、全身が傷だらけになる。ヒリヒリして泣きそうになる。

そして、顔は血と汁だらけになる。またケロイド状態。

そう、ピーは痒いだけじゃない。痛いし。何より傷つくのが見た目の問題。何重もの苦しみがある 

僕の顔は原型をとどめていない。掻き続け叩き続け・・・・ 

顔は腫れ上がり、血と汁があちこちから垂れだす。 

ティッシュでいつも血と汁を拭く。ティッシュが顔のあちこちにこびりつく。 

眉毛は抜けおち、皮膚はケロイド。白い部分は白目だけ・・・・ 

まるで原爆の被爆者のよう・・・・ 

はたまたSF映画の特殊メイクのおばけ・・・・ 

何の楽しみも希望もない。毎日が一緒。ただその時が終わるのを望むだけ。

毎日が過ぎていく。毎日が同じように終わっていく。

今日が何日なのか何曜なのかもわからない。

人として当たり前の事が何ひとつとしてできない 

夜寝ることも食事をまともに取ることも外に出ることも・・・・ 

唯一外に出るのはセラピーに通う時だけ・・・・ 

タクで行っていた。帽子をフカブカとかぶり 

いつもタクのおっさんがバックミラーで僕の顔を覗きこみ 

ビックリする顔で何度もチラチラ見られるのが、たまらなく嫌だった。

そんな状態の僕にもスネオ先生は、いつも厳しかった。

「おまえ、どうせ何で自分だけこんな想いするんやと思ってるんやろ」 

「親にも偉そうに言ってるんやろ。辛いのはおまえだけちゃうぞ。何か考え間違いしてないか?おまえより絶対お母さんのほうがつらいんやぞ。今はわからんでもいつか分かる時がくるわ。」 

よく怒られた・・・また東京弁で言うから余計腹がたつ。

この頃の僕は人の心を考えるほどの余裕がなかった 

「何でおれだけ???何でこんな想いせなあかんねん???何のために生きてる?なんで産まれてきた」

起きている時は常に掻いていた。または顔をパンパンと規則正しく叩いていた。 

家にはいつも僕が顔を叩く音が響いていた 

後から聞いたが、オカンも弟達も「あの音を聞く度に胸が張り裂けそうになった」と言っていた 

「そんなにも辛いのか。代わってやれるなら代わってあげたい」 

僕のいないところで家族も泣いていたんだ・・・・ 

ある日の事、洗面台の前で掻きむしっていた 

ちょうど、その時オカンと二男が帰ってくる 

僕が顔を掻きむしった瞬間、鏡におびただしい血しぶきが飛ぶ 

それを見た弟が、ふるえながら僕の手を握りワンワン泣き出した 

僕もオカンも声をあげて泣いた 


夜は特に痒かった。顔は腫れ上がり血や汁やらが固まり、まともに目をあける事ができない。口すらあける事ができない。 

食欲もなく、この頃の僕の主食はウィダーインーゼリー。 

全身掻きむしった状態でヒリヒリしてしまい風呂にも入れない 

掻き疲れてやっと寝る。寝れたと思っても数時間で目が覚める 

寝返りをうつ度に、枕にベットリくっついた血と汁がビリビリと音をたてながら剥がれる。 

その痛みで目が覚める 

僕は洗面所へと向かう 

そこには自分でも目を覆いたくなるような自分が写る 

顔はただれ、腫れあがり、目は血と汁でまともにあいていない 

顔半分は血と汁が固まり、かさぶたや黄色いボンドが固まったような物があちこちにこびりついている。 

もう半分は、寝返りをうってはがれ、血と汁がボタボタ垂れ流れる 

耳は腫れ上がり耳たぶは2倍以上。ジンジンしている。 

もう何か月美容院に行ってないんだろう。髪は伸び放題で風呂にも入ってなくて、フケだらけ。顔につかにないようにあちこちゴムでとめていたけど、髪が血と汁であちこちにこびりついている。 

そんな自分を見てたら情けなくて悲しくて涙がでてくる 

もう自分の顔を忘れてしまった。「俺はどうなるんやろ??」 

「昔は格好いいなんて言われていたよな。」 

「俺は何の為に生れてきたんやろ??」 

「俺は悪い事をしたから、こんなめにあうんかな???」 

一人よく夜中鏡の前で泣いた 

何度泣いただろうか・・・・・ 


ある夜の事、同じようにビリビリと剥がれた痛みで目が覚める 

まともに寝る事すらできない。洗面台で見る僕はいつもの怪物ナオ君

僕は無性に髪を切りたくなった。楽になりたかったから。 

顔に髪がへばりつくのが嫌で・・・・ 

僕は部屋から大きな裁断バサミを持ってくる。 

「とにかく短く切ろう!!」坊主にしてもよかってんけど僕のオシャレ心が許さない。 

鏡を見ながら、ばっさばっさ切っていく。自分ではなかなかいい仕上がり。 

ピンピンに髪をたてた怪物ナオシ君がうつっていた

「俺なかなかやるやんか!!!さすがカリスマやな。これで少し楽になれる。」 

髪が出来上がった頃には、すっかり太陽が昇る時間になっていた 

「今日もまたピーオールか」 

しばらくしてオカンが起きてくる 

オカンは僕を見てびっくり。そりゃそうやな。数時間前まではフケだらけのロンゲやってんから 

「あんたその頭どうしたん??」 

『気持ち悪かったから切ってん。楽なりたかったし。』 

「あんた後頭部ハゲだらけやで!!!」 

『ほんまに???また生えてくるからいいやんか』 

この時のオカンの顔はよく覚えている。 

とてもとても悲しい顔をしていた・・・・・ 

これも良くなって聞いてんけど、オカンはこの事がすごくショックやったらしい 

「この子は人一倍おしゃれに気を遣う子やのに苦しいからといって、頭をザク切りにしている。後頭部にいっぱいハゲをつくって。オカンは自分を責め続けたらしい。自分があのセラピーにつれて行ったからこんなに苦しんでいる。治ると信じているけどこれで正しかったんだろうか? 
自分の血筋がアレルギーだから、この子はこんなに苦しんでいる。他の子は学校に行ったり働いたりしてるのに、この子は毎日地獄のような日々を送っている。それでも私の前で笑顔で話しかけてくる。ごめんなナオフミ。ほんまにごめんな。治るなら私の命をあげる。どんな事でもするから・・・・」 


オカンだけじゃない。家族全員きつかったと思う。 
暴力は振るわなかったが機嫌が悪けりゃ、その辺の物を蹴飛ばした事もあった。 
1日中、夜中でも関係なく顔をたたいた事もあった。 
目の前にはお化けのような顔をした息子・兄貴がいる。
でも、どんな状態でも家族は俺を支えてくれた。
そんな状態でもオカンはピーちゃんといって励まし笑わせてくれた。
弟達も1回も「こんなんたまらん」とは言わなかった。
いつも俺を気遣い、あいつらなりに俺を励まそうとしてくれた。 
今ならわかる・・・・ 
この家族じゃなけりゃ俺は死んでいた。オカンが一緒に死のうといっていたら確実に俺は死んでいたと思う。 
一言でも家族の愚痴を聞いていたら俺は死んでいただろう。 
一言の愚痴もなかった。いつも笑わせてくれた 
今の俺がいるのは家族のおかげ。

今思い出しても泣けてくるわ


まだまだ続く脱ステ地獄


今日はここまで