スタンプⅠの続きです。
スタンプⅡ
俺はとある東南アジアの国の国境近くの、地方空港にいた。
俺の仕事は一年の半分は海外にいる。と言うとエリート商社マンか
なんかを思い浮かべる人もいるかもしれないが、
その商社(大体は日本の)の下請けの下請けの下請け位をやっている。
俺の現地でのコネを頼って、その会社のルートがない急な買い付け
なんかの時に俺に話がくる。
まぁ、使い捨てなんだけど、取引の額が大きければそれなりの金になる。
だから、注文の殆んどは「急な話」だ。 今回もこの国での取引の仲介
が終わったところに、新しい話が来た。 「チョット美味しそうな話」
だったので、そのまま現地に飛ぶことにした。
ただ俺としたことが、この国の南岸に台風が近づいている事を忘れて
いた。ここの玄関口である国際空港に行った時には全部の便が
欠航していた。
諦めの悪い俺は、この国の知り合いに、何か別のルートがないか探して
もらった。その知り合いが教えてくれたのが、この空港だった。
この国の北部の国境地帯にあって、まだ台風の影響が少ないから、
「飛べるんじゃないか」という事だった。
ここまでもかなりの金をつかませて、野菜運搬トラックに同乗させて
もらい二時間かけてやって来た。
ここから2本飛行機を乗り継いで目的の国へ行ける。
「地方空港」とは聞いていたが、「なんか軍の臨時飛行場みたいだな」
と思って「空港」にいた現地人らしい人に聞くと、本当に昔隣国と戦争
してた時の軍の臨時飛行場がそのまま民間に払い下げられたらしい。
そこのロビーらしくないロビーのシートで待っていると、俺の乗るらしい
飛行機がガラスの向こうに現れた。素人の俺でも「うわっ、これって、
殆んどの国で20年前にスクラップになってるしろものじゃないの?」
と思うプロペラ2発のその勇姿に涙が出た。「美味しそうな話」を捨てて、
すぐにこの国の首都のホテルに戻り惰眠を貪りたくなった。
更に悪いことに、この二時間のあいだ、台風の方も俺を追いかけていた
らしく、天候も風雨がかなり強くなってきていた。「また、欠航か?」
と思ったが、こういうところの「聞いた事のないエアライン」のパイロット
は軍人あがりが多くて、(まぁ俺と同じ下請けの下請けの下請けだ)
腕と度胸だけで飛んでしまう。