スタンプⅡの続き、完結話です。
完結できてホットしてるらしいです。
スタンプⅢ
ホテルにも戻れそうもなかったので、俺はそのご老体に乗り込むことに
した。 空港の方も早くこのご老体を厄介払いしたかったらしく、
俺がシートに座ると直ぐに離陸許可がでたのか「シートベルト着用」の
サインもそこそこに離陸滑走を始めた。勿論シートベルトはしっかり
締めていたが。滑走中もそうだったが、上昇を始めてからの揺れが
凄い。ショボイ飛行機に慣れている俺でも吐きそうになった。
ドリンクサービスもCAさんもいない機内で(まぁ、いても意味ない
状況ではあるが)俺は吐き気と戦って脂汗をながしていた。
そして、吐き気を紛らわそうと俺の側の窓の外を見た時、冷や汗に
変わった。主翼の一部が剥がれ飛ぶのがみえた。今までの揺れに変な
振動が加わった。後悔はしたが、もう俺に出来ることはない。多分
この飛行機の勇敢なパイロットにも。腕でどうにかなる状況じゃない。
その揺れに揺れる飛行機の中央通路を誰かトテトテ歩いてくる気配が
あった。CAさんのわけないし、「えっ、子供?」と思ったが、
それは、俺がそこそこ見慣れた情景だった。誰も立ってすらいられない
通路をウサギが歩いてきた。そして俺の前にくると、「手」をだした。
条件反射になっていたのか、シートベルトをした窮屈な機内で財布を
探すと(この時パニクっていたのか、もう揺れがない事にも気が
付かなかった)半分ほどスタンプで埋まったカードを出した。
するとウサギは現地の言葉と英語で「フィニュシュした方を」と言った。
言われるままに俺は6枚あるゴール済みのスタンプカードの一枚を渡した。
ウサギはそれをまるでカードリーダのように口に咥えた。カードが一瞬
輝いた。また機体が大きく揺れ、人々の叫び声が戻った。
機体が傾き、ウサギが俺の胸に飛び込んできた・・。
俺は、地方空港のロビーのシートで目を覚ました。
「なんだ・・。 夢か・・」と小さく呟いたが、胸の上にはまだ
さっきのモフモフ感があった。俺の胸の上には薄茶色のウサギの
縫いぐるみが置いてあった。慌てて財布の中のスタンプカードを
探した。1枚の半分程埋まったスタンプカードと、6枚のゴールした
スタンプカードがあった。ただ6枚の一番上のカードには
「VOID(無効)」のスタンプが押してあった。
ウサギスタンプの景品はなかなかのもので、そのサービスは
グローバルなものだった。
- 完 -