透明カメレオン/道尾秀介 | なおぱんだのひとりごと。 ~読書と日々に思うこと~

なおぱんだのひとりごと。 ~読書と日々に思うこと~

なおぱんだです。
北の国から、読んだ本、買った本、大好きな曲、そして日々思うことなどをポツリポツリと書いてます。

 

 

美声でリスナーを魅了するラジオパーソナリティの男は、男はその容姿とはかけ離れた美声の持ち主であることを奇貨として、人と交わるのを避けた引きこもりの日々から脱却し、ラジオの人気深夜番組のパーソナリティを務めていた。男は放送が終わると行きつけのバーで時間をつぶしてから自宅に帰るのを日課にしていたが、その飲み屋にはいつも同じ顔触れの客が集まってきて、朝の始発時間までともに過ごしていた。ある日ただならぬ様子で店に入ってきた見知らぬ若い女性が、美男子の客の一人をファンであるパーソナリティ本人と勘違いして店に出入りするようになるが、男は女性のことをよく知ろうと店のママと客を巻き込み、女性を欺いてその客がパーソナリティであると信じ込ませるような芝居を打つ。女性はそれが全員がグルになって仕組まれた芝居であることにいち早く気がついて、半ば脅すようにして自分の命令に協力することを全員に強要するが、その謎めいた内容の命令に男は裏に何かが隠されていることを感じ始める。

 

コメディ仕立てのミステリ作品です。ところどころに擬音語が現れてコミック風な表現が多用されているところは、本格的なミステリを期待して読む人にはちょっと閉口するかなとも思います。物語の背景からカギとなる女性の登場、店を巻き込んでのドタバタの展開までは、そのつながり方になかなか理解に苦しむところがありますが、結末に向かうにしたがってすべての帳尻が合っていくといった感じで読み進み、最後に主人公が抱える心の闇が明らかにされる締め方はさすがだなと思いました。

 

この作品も、私が釧路を離れるにあたって、知り合った方から贈っていただいたものです。いろいろな人がその思いを乗せて贈ってくれた作品には、自分の読み方とは違った面白さもあるんだろうなと気づかせてくれました。ありがとうございました。