髑髏検校/横溝正史 | なおぱんだのひとりごと。 ~読書と日々に思うこと~

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なおぱんだです。
北の国から、読んだ本、買った本、大好きな曲、そして日々思うことなどをポツリポツリと書いてます。

 

 

横溝正史と言えば、名探偵金田一耕助を代表とする本格探偵小説がとても有名ですが、それ以外に人形左七捕物帳シリーズなどの時代小説も多く発表されています。この作品はそういった時代小説の中でもちょっと性格を異にする、幻想怪奇譚ともいえる中編2編が収められています。

 

表題作の「髑髏検校」は、長崎の沖にある名も知れない孤島から江戸に移った吸血鬼が城下を恐怖に陥れ、その正体を知った武家の若侍がこれを退治するまでの物語です。美女の生き血を吸って若さを保つ怪物や、生き血を吸われた者もまた吸血鬼となってしまうところや、にんにくの強い香りを避けるところなど、ブラム・ストーカーが編み出した吸血鬼ドラキュラ伯爵ベースにし、それをそのまま江戸に移した設定になっています。併録された「神変稲妻車」は、横溝正史が若かりし頃夢中になった草双紙を彷彿とさせる活劇冒険譚で、お互いに離れていても人が吹くと共鳴する3本の笛を求めて、多彩な登場人物が複雑に絡み合いながら大冒険を繰り広げます。次から次に目まぐるしく物語が展開し、最後までハラハラさせてくれる大活劇に、本格探偵小説とは違った面白さを見せてくれます。

 

著者の作品に初めて触れたのが小学校高学年の頃で、夢中になって読破しました。この作品もこれまで何回か読み直してきた作品ですが、無声映画を語る活動弁士のような小気味いい文章で、読んでいてとてもワクワクします。