独特の空想力で非日常の世界を描き続ける著者の作品集で、4編の短篇が収められています。以前から、現実的な異世界を舞台にした著者の作風がちょっと癖になっていて、なかなか面白いなあと思っていたんですが、この短編集で感じたのは「著者の空想力は見事なんだけど、ちょっと引っ張り過ぎじゃないかな」と言うことでした。こんなこと言うと著者のファンの方から怒られるかもしれないけれど、初期の作品はその空想力の豊かさによって、著者の頭の中にある異世界をとてもリアルに描き切り、これぞ三崎ワールドという独特の世界が構築されていたんですが、この短編集では著者のたぐいまれな空想力が単純な空想の世界にしかすぎないことに気づかされるようでとても物足りなさが残りました。枚数が限られた短編であることに制約がかかりすぎて、物語の展開が著者の紡ぎ出す異世界を描き切れていないのが残念なところで、改めて長編で読んでみたいなと思わせてくれる作品でした。