永遠の都〈5〉迷宮/加賀乙彦 | なおぱんだのひとりごと。 ~読書と日々に思うこと~

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永遠の都〈5〉迷宮 (新潮文庫)/加賀 乙彦

 

第5巻も著者の筆力は衰えることなく、緊張感溢れた描写に先を読むのが待ち切れません。

太平洋戦争も最前線における日本軍の玉砕が続き、本土爆撃も時間の問題になりつつある中、大病院の老院長時田利平は、自分のモルヒネ中毒を治すために自ら精神病院への入院を決意します。家族の支えもあって想像を絶する禁断症状を克服し、本土決戦を前にして患者や病院関係者が残る大病院を守るため、自らの半生を顧みて士気を鼓舞します。本巻の後半部分、時田利平が上京して医師を志し、苦学の上海軍軍医を拝命して日露戦争の従軍を経た後に開業医となり、大病院を築きあげるも関東大震災によって一切を失うところまでの回想は、動乱の時代を生きた人間の克明な人生の記録となっています。

世界大戦という狂気の時代を背景に、大一族の歴史を描く著者の力強い筆が読者の心を打ちます。