「五郎」(下) | NPO法人ねこけん Official Blog

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2011年9月22日に立ち上げた新猫ボランティア団体『NPO法人ねこけん』の公式ブログ

本日は物語です
「五郎」(下)
なんて事なの。私は、本当の事も知らず、ただ母が身勝手に出て行き、好き勝手に暮らしているもんだとばかり思っていた。

「お 姉ちゃん、お母さんは、冷たくなってしまう前に、僕に言ったんだよ。お姉ちゃんに会ったら、家族になって支えてあげて。心の寂しさを支えてあげて。そし て、「ごめんね」と伝えてって。で、静かになって動かなくなっちゃった。行かないで!僕を置いていかないで!ってお願いしたんだけど…。僕がお腹の上に 乗って暖めても、頬を舐めても、暖かくもならないし、笑ってもくれない。
冷 たくて、静か…。それから、僕は一人ぼっちで、お母さんを暖め続けたんだ。でも、知らないおじさんが来て、お母さんを運び出して行っちゃった。その後に、 管理人さんが、僕を見つけてくれた。その後、お母さんの家族が見つかった。だから、管理人さんは、僕をバックに入れてお姉ちゃんに渡したって訳」

そうだったんだ…。私は、暫く頭の中が混乱した。
「どうして…どうして本当の事を教えてくれなかったんだろう?教えると会いたくなるから?私が会いに行ってしまうから?何故、どうして…」

やがて、今まで知らずに抑え込んでいたの母への思いが溢れて来た。
今まで無関心でごめんなさい。お母さんは、私の事をそんなにも心配してくれていたんだ。
寂しかったよね。辛かったよね。私…ごめんなさい!お母さん!逢いたい!お母さん!
私は、数十年分、大声で泣いた。
心の中に溜まっていた思いを声に出して泣いた。
五郎が、そっと膝に乗って来た。
ざらざらとした舌で、私の頬を舐めた。

くすぐったい…

私は、思わず肩をすくめた。
五郎は、私の顔を覗き込んでいる。
「お姉ちゃんは、お母さんみたいに笑ってくれないの?」
「えっ?」
私は、小首を傾げて覗き込んでいる五郎が愛らしく、愛おしくなり、思わず笑みがこぼれた。
すると、五郎は「良かった。僕、お母さんとの約束守れた!」
そう言うと、私の膝からぴょんと飛び降りた。
私は五郎に話しかけた。
「五郎。ありがとう。ねえ、これからは私と一緒に暮らしていこうね」

すると五郎は、あくびをひとつすると、気持ち良さそうに伸びをし、私のベッドに上がり、丸くなると眠ってしまった。

「五郎も、疲れたんだ。沢山話したからね」

私は、スヤスヤと寝ている五郎の顔を見ながら、もう一度「ありがとう」と呟き、眠りに落ちた。
翌朝、寝ている五郎を部屋に残し、私は母親の住んでいたというアパートへ行ってみた。
母がどんな場所でどう生きていたか、自分の目で確かめてみたかった。
そこは、小さな駅から少し離れた裏通りに立っている、古びたアパートだった。
私は、母が住んでいたという1Fの部屋の前に立った。
「ここに居たんだ…」
幼い頃、幸せだった3人での生活を思うと、目の前のアパートはとても小さく、私は何故か暫く動く事が出来無かった。
すると、ちょうど1人のお婆さんが、管理人と書かれた部屋から出て来た。
「あら?どなた?」
私は、「こんにちは。管理人さんですか?母がお世話になりました」と挨拶をし、警察の方から聞いた、母の事を話した。
する
と、管理人さんは、「ああ、あの人の身内って…あんただったの。あの人に娘さんが居たんだね…部屋を片付けようと思って、今日来て良かった」と言いながら、ぽつぽつと母の話をしてくれた

「あんたのお母さんは静かな人だったよ。なんとなくいつも寂しそうだったから、何か訳が有るんだろうなと思っていたんだ。詳しくは知らないけどね。それと、猫を1匹飼っていてね、とても可愛がっていたよ。
あの猫、え~っとなんて名前だったかな?」
「五郎ですか?」
「ああ、そうそう、五郎!五郎って呼んでいたね。その五郎をとても可愛がっていてね。好物だからと言って、時々、マグロの刺身なんかをあげていた。生活も大変だっただろうけど、本当に猫をとても可愛がっていたね。でも、まさか、あんな事になるなんて…。ここでは、隣りの人との付き合いなんて全くないからね。みんな孤独さ。関わりあいも持たないしね。あんたのお母さんも猫も…可哀想だったよ。亡くなられてから結構な時間がたっていたから。猫だって飼い主が先に逝ってしまっては寂しかったんだろう。あんたのお母さんが亡くなってからも、五郎はずっと飲まず食わずでそばにいたようだ。発見された時にご遺体の傍にぴったりとくっついていたんだから」
「そうだったんですね…。でも、五郎は今うちに居ますので、安心して下さい」
管理人はふと不思議そうな表情を浮かべたが、また話を続けた
「それで、ご遺体が運ばれた後に、残された五郎が余りに気の毒だったんで、私が五郎を預かって、ちゃんとしてやった。その後、警察から親族が見つかったとか聞いたから、遺品と一緒にカバンに入れて貰ったんだよ。ずっと一緒にいられるようにと思ってね」
「えっ?あっ!そうだったんですね」
「そうだよ。あの黒いカバンに入れたのは私だよ。あんたのお母さんの遺骨と一緒に。五郎も、離れたくないだろうからね」
「ありがとうございました。あの…ですので、五郎は、今うちに居ますので…」と言いかけたが、管理人さんは、疲れたと言って、部屋に戻ってしまった。
「まあ、良いか。さて、五郎のご飯を買って帰らなきゃ」
私は急いで家に戻り、部屋の電気を付けた。
五郎は、出かける前と同じ姿勢で、ベッドで丸くなり寝ていた
「ただいま。五郎、まぐろ買ってきたよ」
五郎は、むくっと顔をあげて、私を見た
「あ、起こしてしまったね、ごめんね」
何故か五郎は何も言わず、ベッドに座っている。
「五郎?どうしたの?」
私は何も話さない五郎を不思議に思って、抱き上げようとした。
すると…
五郎は私の腕からまっすぐに窓に走り寄り、枠に飛び乗った。
「危ない!五郎!落ちる!」と、走り寄ると、五郎は器用に窓を開けぴょんと飛び下りた
「五郎!」叫びながら窓に駆け寄ったが、五郎の姿は無い
下に落ちてしまったんだ!きっとそうだ!私は、恐ろしさで震えた。
急いで下に降りようと後ろを向いた、その時、五郎の声が聞こえた。
「お姉ちゃん、時間が来たんだ」
「えっ?何?」
すると
「僕ね、お母さんとの約束を守るために、此処に来たんだ。お母さんからの伝言伝えたよ。伝えたから、もう行かなくちゃ」
「行くって何処に行くの?ねえ、一緒に暮らそうって言ったじゃない。何処にも行かなくて良いのよ。五郎!」
私は、もう一度窓に戻り、身を乗り出して外を見た
「あっ!」
そこには…小さい時、見たそのままの母が穏やかな笑みを浮かべ腕の中に五郎を抱いていた。五郎は嬉しそうに、顔をうずめごろごろと喉を鳴らしていた。


※写真はイメージです

私は、何度も目を擦り、これ以上無い位に目を見開いた。
間違いない。母と五郎は、月明かりに照らされながら、不思議と窓の外に浮かんでいる。
「おかあ…さん、どうして…お母さん…だよね」

やっと言葉が出た。
しかし、母と五郎は、だんだんと薄くなり…小さくなり…やがて消えてしまった。
「待って!」
私は、窓から更に身を乗り出して手を伸ばし、母と五郎を追いかけようとした
「待って!お願い!」
気がつくと、私は、ベッドの上で半身を起こし、手を伸ばしていた。
「ああ…夢…?」
暫くそのままの姿勢でいたが、やがて頭の中がめまぐるしく動き出した。
「そうか…。夢だったんだ…。あ~驚いた」
私は、余りにも夢が生々しかったので、急に不安を覚え、五郎を探した。

「五郎、五郎何処?」
ベッドの上には居ない。
「五郎、何処に居るの?五郎!」
返事が無い。
狭い部屋なのに、五郎の姿が見えない。
やけに静かな室内で、私は管理人さんの言葉を思い出し、はっとした。
急いでベッドの下にもぐり、黒いカバン引っ張り出した。
震える手でファスナーをあけると、そこには「五郎」と書かれた小さな骨壷が入っていた。

私は、へなへなと座りこんだ。
今起きている事が、夢なのか、現実なのか…。
しばし茫然としていたが、ふとベッドを見ると、丸くくぼみんだような跡が有る。
私は、立ちあがるとベッドに座り、そのくぼみをそっと手で撫でた。
「五郎…居たんだよね?此処に。絶対居たよね…」
あの、ふわりと暖かい感触、繰り返しの日々の中に、暖かい光を差し込んでくれたような、寂しさを優しさで埋めてくれた…。五郎…。お母さんも同じように感じていたのだろうか?
急激な寂しさが襲って来て、涙があふれた。
ふと、何かが手に触れた。
つまみ上げると…1本の猫の髭だった。
「五郎のだ…」
私は、それを拾うと、母の骨壷に入れた。
真っ白い母の骨の上に、五郎の黒い髭が乗っているのを暫く眺めていた。
そして、そっと蓋を閉めると、ザラリと陶器のこすれる音がした。
「五郎、ありがとう。お母さん…ごめんなさい」
窓辺に並んだ2つに白い箱に、朝日が当たり始め、キラキラと光りを放っていた。
終わり

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