アート66でご一緒の、尾花さん(パッチワークキルト)の工房展にお邪魔して来ました。山を一つ越えた『閑馬地区』には、多くの作家さんが活動されていますが、今日は友人に連れられ、はじめて尾花さんの工房へ。カメラを忘れたことを悔やみながら、せめてまぶたに残る風景を、書き留めておきたくなりました。
手作りの小さな看板を見落とせば、辿り着けない。
静かな、手入れの行き届いた竹林を抜けると見えてくる。、
あたりの風景にすっかり溶け込んでいる小さな古い民家。
縁側の窓がすべて開け放たれて,心地よい風が漂っている。
川のせせらぎを聞きながら渡る橋の向こう岸に、
枝をひろげた若葉が眩しい樹が一本。
その根元に、オレンジ色のキャンパス地の
ディレクターチェアが二つ。
見えない誰かがくつろいでいるように。
川面には、この数日で散りはじめた
雪柳が花びらを落としている。
黒い土はよく耕され、豊かな実りを想像させる畑の中に
白い小道が、ゆるく曲線をえがくように母屋へと導いている。
足もとに、スノーフレークの白い花、右手には無造作なほど
ニョキニョキときもちよく伸びたアスパラ畑。
玄関にはルピナスの鉢植と、
大きなユリを活けた壺が出迎えている。
にこやかに、明るい笑顔の尾花先生とかさなる。
中に入ると突き当りには芍薬の花。
導かれるまま中へ中へ。
丹精込めて、一針一針仕上げられた作品は、圧巻。
生徒さんの作品にはそれぞれの個性が表れ、
表現にもいろんなバリエーションがあることにおどろく。
洋風、モダンな、幾何学的なものから、
和の古典的な、もののあはれを伺わせるものまで。
私の知らない世界が広がっていた
尾花先生に、作品のお話を聞いたあと、
明るい縁側に目を移す。
軒下にご主人がこしらえた、素朴なオープンカフェ。
靴を履いて下に降りる。珈琲と手づくりのパン。
なんと、これも、ご主人の手によるものと聞き、さらに驚く。
添えられたブルーベリーのジャム。甘い香りに癒される。
鳥の声、風の音、川のせせらぎ。
目の前に広がる畑の野菜たち。
やまぎわに目をやれば色とりどりのツツジが
ちょうど、咲き始めたところ。
その木の大きさにこの旧家の長い歴史を思う。
その下には、二輪草。群れて咲く姿は実に可憐。
思わず近くまで歩み寄ると、
足もとにはかわいらしいサクラソウ。
山と畑を分かつ柵に絡んでいるのは、アケビの蔓。
山の端には、枝を垂れる山吹の眩しい黄色。
カフェに戻るとちょうど正面に見えるのは、
先に私たちを出迎えたあの、オレンジの椅子と
若葉繁る大きな樹。なるほど。
柱に板を渡しただけの、シンプルなカウンター越しにみる、
この景色は、今日、ここに、来たことの、十分な理由。
ちょうどお昼時にかかり、先生特製のカレーをご馳走になる。
サフランライスを添えた本格派。『これは差入れなのよ』と
今が旬の、たけのこも頂いて、思いがけないもてなしに
なんとも、心うれしい、春の休日。
しばらくぶりに、出会えた人もいて、
素敵な春の一日でした。みなさん、ありがとう!