雨が降ると思い出す人がいる。
 
ずいぶん前、出張の東京からの帰り道。
しとしと雨が降る日。
 
その日は、仕事でうまく行かない事もあり、
疲労感、憂鬱感、空虚感を感じていた日だった。
 
タクシーで駅まで向かったが、駅前が車で込み合い
駅手前でタクシーを降ろされたが、傘もなく しとしと雨
の中、歩いて駅まで歩き始めた。
 
顔も、荷物も、服も雨に濡れ、惨めな気分になった。
 
すると しとしと雨が急にやんだ。
顔を上げると、頭上には傘があり、私はすっぽり傘に入っていた。
そして、隣には見知らぬおじさん。
 
その見知らぬおじさんが
「濡れるだろ。」と一言。
 
「大丈夫です、すぐですから・・・。」という私。
 
そしておじさん
「風邪引くだろ。」
 
「・・・すみません。」私。
 
それ以上おじさんは駅まで何も言わず、半分濡れながら
私を傘に入れ、駅まで一緒に歩いてくれました。
 
ほんの数分間でしたが、傘の下は不思議な空間でした。
知らない人と一緒の傘の下にいるんだけど
とっても 安心感がある、ほっとする空間。
涙が出た。
 
とっても無口なおじさんでしたが、優しさを感じました。
こんなに広い世の中で、知らない私の存在を心配してくれた。
 
それまで感じていた、疲労感、憂鬱感、空虚感、惨めさ
なんて 吹っ飛んだ。
 
今でも 雨が降ると おじさんを思い出す。
思い出すたびに心があったまる。
 
最後に 半泣きしていてまともに御礼を言えなかった事が心残り。
次に また逢えた時
傘をさしてもらったこと、私の心を救ってくれたことのお礼を伝えたい。
 
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