My Everything epi.27 | φ ~ぴろりおのブログ~

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イタズラなKiss&惡作劇之吻の二次小説を書いています。楽しんでいただけると、うれしいです♪ 

お義母さんは「そんなのいいわよ」って言ってくれたけど、後片付けくらいはしないとね。

「そろそろ、戻りますね。」

拭いたお皿をしまってから、お義母さんに声を掛けた。

「そうね。お勉強頑張ってね。」

「はい。頑張ります。」

笑顔で答えてそそくさと玄関に向かい、気になっていた荷物を抱えて2階に上がった。

 

 

なぜか差出人の名前は、啓太じゃなくて小倉智子になっていた。

啓太が忙しくて、智子が送ってくれたのかな?こんな字だったかな?

机の上に置いて、伝票が破れないように箱を開けた。

一番上にあった淡い水色の封筒をゆっくりと取り出した。

のり付けされていたわけでもないのに、便せんを取り出すのに手間どる。

 

智子、真里奈、幹ちゃん、啓太...

寄せ書きみたいにつづられたみんなのメッセージを読む。

 

すっごく心配してくれてたんだな。ほんとに申し訳なくなる。

みんな配属先も決まって、ばりばり忙しく働いてるんだ。すごいなぁ。

置いてけぼりになったようなさびしい気持ちもある。やっぱりうらやましい。

 

そっか。看護師になったからって、毎日勉強なんだなぁ。

本当は復学だって無理だったのに、入江くんが閉ざされた道をひらいてくれた。

頑張るチャンスをもらえたんだもん。あたしも頑張らなくちゃ。

 

クタクタでお風呂に入ったらバタンキューか。そうだろうなぁ。

お礼の電話、どうしよう。シフトがわからないから、電話をしていい時間がわからない。

それに、お礼だけで話が終わるわけないし、啓太しか本当のこと知らないし...

 

夜勤もあるから気にしなくていいとか、顔を見せてくれたらいいとか、みんなやさしいな。

ずっと連絡してなかったし、いろんなウワサも聞いてるだろうから、気を遣ってくれてるんだよね。

忙しくて疲れてるのは本当だと思うし、とにかくお礼のメールだけでも早く送らなくちゃ。

 

 

 

 

「新しい入浴剤どうだった?疲れによく効くんだって。」

部屋に戻った俺に、嬉しそうに聞いてくる琴子。

「温泉でも即効性はないのに、そんなにすぐに効くわけないだろ。」

「えー、あたしはすぐに効いたよ?」

「そりゃ、よかったな。」

単純で素直な琴子には、有効成分など入っていなくても効きそうだ。

 

「そうそう。やっぱり今日、荷物届いたんだよ。」

荷物に目を遣りながら、ベッドに入った俺を追いかけてくる琴子。

「本当にすぐ送ったんだな。」

天井に昨日の鴨狩が浮かんで苦笑が漏れる。

 

今朝までなかった段ボール箱が琴子の机の横にあることは、部屋に入ってすぐ気付いた。

帰宅の際にさり気なく聞くつもりではいたが、駅でバイト帰りの裕樹と一緒になったことでタイミングを逸した。

裕樹とはこっちに戻って二人だけで話す機会もなかったし、思いがけず色々な話ができて良かった。

夕食の間も和気藹々と話が弾み、琴子も俺もわざわざそのことに触れることはなかった。

 

 

「智子が送ってくれたみたい。みんなの手紙も入ってた。」

智子?鴨狩が送ってきたんじゃないのか?

「差出人の名前がそうなってたの。」

俺が怪訝な顔をしたからか、琴子がすぐにそう言った。

「そうか。」

オフクロが受け取る場合を考えたのかもな。別荘では目の前で言い合いもしたし、鴨狩の名は記憶にあるだろう。

琴子の口ぶりも半信半疑といったところで、俺は鴨狩本人が送ったと判断した。

 

「電話したのか?」

やはり鴨狩とどんな話をしたかは気になった。

「ううん。メールしかしてないけど、ダメだったかな?」

律儀な琴子がメールで済ませたことは意外だったが、それだけ電話を掛けることに不安を感じているのだろう。

「いや。勤務も不規則だからな。全員の都合のいい時間に掛けるのも難しいだろ。」

気掛かりな様子の琴子の気が晴れるよう、適当な理由をこじつける。

 

「そうなの。夜勤とかもあるし、会ってゆっくり話したいから電話しなくていいって。」

琴子を気遣っての言葉だろうが、鴨狩みたいに事実を知らなくても電話で話すことに臆するものはあるかもしれない。

「新米だし大変みたい。勉強しなきゃいけないこともあるのに、疲れて寝ちゃう時もあるんだって。」

「そうだろうな。」

入職後の新人教育が始まったばかりで、日々の勉強が必要なのも、学生とは違う疲労があるのも理解できた。

 

 

「メールもすっごく悩んだんだけど、うまく言葉にできなくて。」

顔が見えない上に手書きでさえないメールで、相手に伝えたい思いを届けるのは難しい。

「結局、ごめんねとありがとうしか言えてない。」

ひどく申し訳なさそうに言う琴子に胸が痛む。

 

何もなければ琴子だって同じように看護師として働いていた。

元同級生の愚痴から伺える忙しくも充実した日々が羨ましくないはずがない。

電話を掛けられないのも、上手く言葉にできないのも、言えないことがあるからだ。

 

腕を伸ばして、琴子を抱き寄せる。

「な、なに?」

嘘のつけない素直な琴子。

「...すまない。」

真っ白な琴子に影を負わせたのは俺だ。

 

「入江くん...」

そう呼んでくれることを噛みしめる。

「大丈夫だよ。入江くんがいるから、大丈夫。」

そう言ってくれる琴子を強く抱きしめた。

 

~To be continued~