Miss You More epi.13 | φ ~ぴろりおのブログ~

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イタズラなKiss&惡作劇之吻の二次小説を書いています。楽しんでいただけると、うれしいです♪ 

そーっと腕の中から抜け出そうとして抱き寄せられる。

起きたのかな?...そう思って、入江くんの顔を見上げる。

しっかりと閉じられた目蓋、緩やかに結ばれた唇、規則正しい寝息。

やっぱり寝てるんだ...ニマニマと緩んでしまう頬。

目が覚めたときにも感じた、胸に広がるくすぐったいような甘い幸せ。


久し振りに感じる慣れた重さ...あたしを包むように、肩の辺りに置かれた腕に指先で触れる。

目の前にある広い胸にすりすりと頬を寄せると、ほんの少し汗の匂いを含んだ入江くんの匂いがした。

ありがとう...入江くん、大好きだよ。

何もかもが幸せで、首を伸ばして、形のよい薄い口唇に、ちゅっとキスをした。


入江くんがぱちっと目を開けた。至近距離で思いきり目が合う。

「起こすなら、もっとちゃんとしろよ。」

びっくりして固まっているあたしに、入江くんがニヤリと笑う。

「ん..んっ...」

腕枕していた手がしっかりと後頭部を押さえ、肩にあった手はしっかりとあたしを抱き締める。

いきなりの深いキスに、口唇も、呼吸も、気持ちさえも、奪われてしまう。


「ほら、時間ないから一緒にシャワー浴びるぞ。」

「へ?チェックアウトまでは、まだ時間あるよ?」

「朝メシもルームサービスなんだよ。いいから早くしろ。」

力が入らなくて、何の抵抗もできないまま、そのままバスルームに連れ込まれた。


「時間ないって言ったのに...」

髪を乾かしながら、鏡越しにジトーッと入江くんを睨む。

「あんな状態で、メシなんて食えるわけねーだろ?」

入江くんは少しも悪びれる様子もなく、どことなくスッキリした顔で微笑んだ。


しばらくすると、ルームサービスの朝食が運ばれて来た。

今日は風もなくて暖かいから、テラスでも大丈夫と言われて、テラスで食べることにした。

焼きたてのパンも、ふわっふわのオムレツも、やさしいスープも、フルーツたっぷりのヨーグルトも、とっても美味しかった。

あたしたちはゆったり摂った遅めの朝食にすっかり満足して、素敵な時間をくれた部屋を後にした。



「どこか行きたい所、あるか?」

チェックアウトの手続きを済ませて、琴子に訊く。

「入江くんが嫌じゃなかったら、入江くんの部屋。」

琴子が遠慮がちに言う。俺は全然嫌ではないが、ハーバーランドはすぐそこだ。


「俺の部屋?デートしたいんじゃなかったのか?」

琴子が俺を休ませようと我慢している気がして尋ねる。

昨日、散歩しながら行くと言った琴子をタクシーに押し込み、結局長い時間ホテルに一人ぼっちにしてしまった。

俺がホテルの部屋に着いた時、テーブルにはテキストやノートが出しっ放しで、琴子がしっかり勉強していたと分かった。

褒美という訳ではないが、腹が減るまでブラブラして、メシを食って駅に送って行けばいいと思っていた。


「あんなに素敵な結婚記念日のデートをしてもらったんだもん。もう十分だよ。」

琴子はうっとりと想い出すような表情をして、満足そうに笑った。

「わかった。俺の部屋でいいんだな。」

俺の為に遠慮や我慢をしている訳ではなくて、俺の部屋で一緒に過ごしたいと心から思っていることがわかった。

「うん。入江くんの部屋がいいの。」

ニッコリと笑った琴子に微笑を返して、俺たちはエントランスからタクシーに乗り込んだ。



ドアの鍵を開けて、琴子を先に部屋に入れる。

「お邪魔しまーす。相変わらずキレイにしてるね。せっかく掃除しようと思ったのに。」

少しつまらなそうに言う琴子。

「病院に泊まることも多いし、帰って来ても寝るだけだからな。」

「そうだよね...」

電話も碌にできないし、俺の忙しさは琴子も十分にわかっている。

「大丈夫だ。」

心配そうに眉を寄せた琴子の頭をぽんぽんと軽く叩いた。


「入江くん、コーヒー淹れようか?」

琴子が俺を見上げて言う。

「ああ。頼む。」

「ちょっと待っててね。」

琴子がいそいそと小さなキッチンに向かった。


抱き締めたくなる気持ちを抑えて、キッチンに立つ琴子の後姿を眺める。

琴子がいるだけで、殺風景な部屋が温かく感じられる。

コーヒーの芳しい香りが漂ってきた。


「お待たせー。」

琴子が運んできたマグカップを受け取る。深く息を吸って、馥郁とした香りを楽しむ。

琴子はそんな俺の様子を嬉しそうに見ながら、小さなテーブルの角を挟んで腰を下ろした。

「美味いな。」

しみじみと呟く。久々に味わう琴子のコーヒーは、いつも通り格別の味がした。

「よかった。」

色違いのマグカップを両手で包んだまま、俺を見つめていた琴子がふんわりと咲(わら)った。


~To be continued~