Miss You More epi.11 | φ ~ぴろりおのブログ~

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イタズラなKiss&惡作劇之吻の二次小説を書いています。楽しんでいただけると、うれしいです♪ 

ルームキーを手にしたまま、ドアの前で少しだけ考える。

こっそり部屋に入って琴子を驚かせるか、それとも、チャイムを鳴らして笑顔の琴子に迎えてもらうか...

琴子の驚いた顔と、それが笑顔に変わる瞬間を見るのも捨て難いが、俺のメールが届いてから、俺が来るのをいまかいまかと待ち構えている琴子が笑顔で飛びついて来るのを見たかった。


ピンポーン...軽やかなチャイムの音が響く。

ガチャ...殆ど待つことなくドアが開く。

「入江くん、お帰りなさい。」

予想通り、琴子が満面の笑顔で俺に飛びつく。

「ただいま、琴子。」

腰にしがみついている琴子をふんわりと抱き締める。


「入江くん、見て見て!」

もっとしっかり抱き締めようとした途端、琴子は俺の腕の中から抜け出し、子どもみたいに俺の手を引っ張った。

俺の手を引いたまま、窓際に向かってずんずんと歩いて行く琴子。

琴子が窓を開けている間に、近くのテーブルに鞄を置いた。


「入江くん、早く早くぅ。」

俺の腕を脇に抱え込むようにして引っ張り、テラスへと連れ出す琴子。

ライトアップされたポートタワーと海洋博物館、メリケンパークの夜景が目の前に広がる。

「ねっ。素敵でしょう。」

琴子は俺を振り返って言うと、手すりに掴まり身を乗り出した。

「おいっ、危ないだろ。」

琴子の腕を掴んで自分の方に引き寄せる。

そのままコートで包むように、後ろから腕に抱える。


「...温かいね。」

腕の中で大人しくなった琴子が呟く。

「...ああ。」

ずっと部屋にいた琴子はブラウス一枚だった。布越しに琴子の体温が伝わる。

早く直に琴子に触れたいけれど、もう少ししたらルームサービスの夕食が運ばれて来るはずだ。

下手にキスすると止まらなくなる自信はあったけれど、唇が寂しくて、琴子の髪にそっと触れた。


琴子が首を竦めて、俺を振り返る。

俺の努力を嘲笑うかのような、琴子のはにかんだ笑顔。

くそっ、可愛い。もう食事なんてどうでもよくなる。いまから時間変更なんて無理だよな。

「本当に月が綺麗だな。」

このまま琴子の顔を見ていたらヤバイと自覚した俺はそう言った。

「うん。早くここから一緒に見たいなぁって思ってたんだぁ。」

素直に月を見上げる琴子。

「...俺も。」

コートの前を重ね合わせるように、琴子をしっかりと抱え直した。



「寒いだろ?そろそろ戻ろうか?」

「そうだね。この景色、お風呂からも見えるんだよ。来て来て。」

テラスに出た時と同じように、琴子に引っ張られながら風呂場に連行された。


「すごいでしょ。本物のバラの花びらなんだよ。」

琴子は湯船に浮かべられた薔薇の香りを味わうように目を閉じた。

「ジャグジーなんだな。」

テラスに面した広々とした円形のジャグジー。

「うん。全部のお部屋がそうなんだって。」

大きな窓からは、さっきまで目にしていた夜景がそのまま見えた。


「ふーん。これくらい広かったら二人でも余裕だな。」

何気ない調子で感想を言う。

「そうだね。」

隠された意味に気付かない琴子は、俺の言葉に同意を示す。

「じゃあ、決まり。」

「え?決まりって?まさか?」

何がまさかだよ。何でわざわざ一人で入らなくちゃならないんだ。


「お前こそ、まさか嫌だって言うつもりじゃないだろうな?」

わざと声を低くして訊く。

「だ、だって、は、恥ずかしいし...い、入江くんも一人で入った方が疲れが取れるよ?」

顔を赤くしながら、何とか誤魔化そうとする琴子。

「ばーか。お前と一緒の方が疲れが取れるに決まってるだろ?」

俺が真面目な顔でそう言うと、琴子は嬉しそうでいて恥ずかしげな何とも言えない表情を浮かべた。


やべっ...この顔はクルだろ。

本当に食事なんてどうでもいい。いますぐ琴子が食べたい。

真剣にそう思った時、部屋のチャイムが鳴った。

「誰だろ?」

ディナーがルームサービスだということを知らない琴子が訝しげな顔をする。

俺は苦笑いを噛み締めながら、サプライズに驚く琴子を見るために、琴子を促して部屋の入口へと向かった。


~To be continued~