The Reason vol.43 | φ ~ぴろりおのブログ~

φ ~ぴろりおのブログ~

イタズラなKiss&惡作劇之吻の二次小説を書いています。楽しんでいただけると、うれしいです♪ 

列で待っていたあいつの友達のところに行く。

俺の顔を見るなり、あいつの友達は酸欠の魚みたいに口をパクパクさせて驚いていた。

「お友達、見つかったと?心配したとよ。」

人の良さそうな店員が、すぐに2階席の6人掛けのテーブルに案内してくれた。

「どうする、どうやって座る?」

あいつらがごちゃごちゃ言っているのは聞こえたが、俺はさっさと目の前の席に座った。

俺の隣りに渡辺が座り、俺の前にあいつが座って、友達もその隣りに続いた。

「おなか空いとっとやろ?何でもおいしかけん。しっかり食べんばよ。」

店員はニッコリと笑って、メニューを置いていった。


「入江、何にする?」

「俺はチャンポン。」

「じゃ、おれもそうしよう。」

「えっ?もう決めちゃったんだ...どうする?」

あっさりメニューを決めた俺たちに驚いて顔を見合わせるあいつら。

「いつもみたいに自分が食べたいものを頼んで、ちょっとずつ味見すればいいよね。」

一番しっかりしていそうな友達が言った。


「うん。そうしよう。チャンポンがいい人?...え?みんな皿うどんが食べたいの?」

困惑の表情を浮かべるあいつら。全員皿うどんが食べたいならそうすりゃいーじゃねーか。

「でも、ちゃんぽんも食べたいよね...どうする?」

「じゃんけんで負けた人がチャンポンとか?」

あいつが言った。小学生か?!皿うどんが食べたいんだろ?何でそこまでして、どっちも食べたいんだ?

「「うん。そうしよっ。」」

満面の笑みで同意する友達...類は友を呼ぶという言葉が浮かぶ。あいつとの遣り取りを思い出した。


「「「じゃんけん、ぽんっ」」」

一発であいつが負けた。喜ぶ友達。微妙な顔をするあいつ。

おもしれーっ。自分で言い出して負けてやんの。俺は笑いを堪えた。

「じゃあ、チャンポンが3つで、皿うどんが2つだね...あ、すみませーん。」

あいつの友達が通り掛かった店員を呼び、注文を済ませた。



「でも、ほんとよかった~ ここで会えなかったらどうしようって思ったよ。」

列で待っていた友達がホッとした顔をする。

「私も...お店の名前、憶えててホントよかった。」

相原さんは、逆に最悪の事態を想像してしまったのか少し青褪めていた。

「だよね。でも一番ラッキーだったのは、入江君たちもここで食事しようって思ってたことだよね。」

サトミっていう友達がおれたちに微笑む。

「ほんとほんと。琴子がお世話になりました。」

もう一人の友達がそう言って、二人揃って頭を下げた。慌てて相原さんも一緒に頭を下げる。


その仕草が本当に可愛くて、思わず微笑んで――

入江?...おまえ...もしかして??

つい相原さんを見てしまったおれの目に入ったのは、僅かに目を細めて相原さんを見つめる入江だった。

相原さんたちが顔を上げると、入江は素知らぬ顔で店内をぼんやりと眺めた。

「いや。別におれたちは何も。」

お礼を言われて何も言わないのもおかしいと思い、曖昧に答える。


「いやー、何もって...普通、なかなかここまで親切な人いないでしょー。」

「そうそう。写真だって撮ってくれたし...よかったね、琴子。渡辺さんが見つけてくれて。」

いつの間にかおれが相原さんを見つけたことになってしまった。

「い、いや...うっ。」

相原さんが入江に助けを求めたことを説明しようとした途端、入江に思いきり足を踏まれた。

横目で入江を見る。入江はしれっとした顔をしながらも、余計なことは言うなという無言の圧力を掛けてくる。

「う、うん。そうなの。」

なぜか相原さんも話を合わせてしまった。なんでだ?隠す必要ないだろ?益々怪しい。


「A組にこんなにいい人がいるなんて知らなかった。」

「えっ?そんなにイメージ悪いかな?」

「なんか私達と話すとバカがうつるとか思ってそうっていうか。」

「バカがうつるって...そんなこと思わないよ。」

でも、入江なら言いそうな気もするな。


「実際、バカにされてるよ。阿蘇山で言われたじゃん。」

不機嫌な声でサトミって友達が言う。

「そうそう。火口のお湯が入浴剤が入ってるみたいなキレイな色で、湯気も出てたから、入ったら気持ち良さそうとか、お肌スベスベになりそうって言ってただけなのに、笑われたんだよね。」

相原さんが思い出したのかプリプリして言った。口尖らせちゃって...可愛いなぁ。

おっと、入江チェック...別にいつもの顔だな。さっきの見間違いかな?それとも見逃したか?!


「全然話したこともないのに、お湯の温度とか言われて、ほんとに入ったら火傷するって。」

もう一人の友達も悔しそうに言った。

「話したこともないのに?いきなりバカにされたんだ?」

他愛もないことを言ってただけなのに、嫌味な女子がいるんだなぁ。

「そうなの...まぁ、私達ほんとにバカだけどね。二日連続迷子になる子もいるし。」

サトミって子がいたずらっぽく笑った。


「二日連続?マジで??」

本気で驚いてしまう。

「もぉーっ。何で言っちゃうの?それに、昨日のは迷子じゃないもん!」

友達と一緒だと口調が余計に子どもっぽくなるんだな。

じゃないもん!の『もん』は、入江もキタんじゃないのか?そっと入江の様子を窺う。

う~ん。表情が乏しすぎて、よくわからない...それともおれとツボが違うのか?



「お待たせしました~」

美味そうな皿うどんとちゃんぽんが運ばれて来た。

「いただきま~す。」

腹ペコだったおれ達は、すぐに思い思いに食べ始めた。

相原さんたちは、入江がいるのが恥ずかしいのか食べにくそうだ。

入江はそんな気持ちを知ってか知らずか、一切相原さんたちに目をくれることはなかった。


「美味しいね。」

相原さんと友達は口々に言いながら、皿うどんとちゃんぽんを交換して味見を始めた。

これから何所にいくつもりだかとか、テレビで見た梅月堂のシースクリームが美味しそうだったとか、話をしながら食べた。女子とこんな風に一緒に食べるのは初めてだったけれど、なかなか楽しかった。

入江に話し掛けようか迷っていた相原さんの友達も、結局ずっとおれに話してばかりだった。

入江は自分から話に入ってくることもなく、がっつくでもなく、黙々と食べていた。

相席って言ってたけど、あれは自分は話す気はないっていう意思表示だったのか...


「入江くん、おいしい?」

相原さんが一人で食べてるみたいな入江が気になったのか、心配そうに聞いた。

「...ああ。」

入江が器から顔を上げて言った。

「よかった。」

相原さんが本当にうれしそうに笑った。


~To be continued~