Blurry vol.42 | φ ~ぴろりおのブログ~

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イタズラなKiss&惡作劇之吻の二次小説を書いています。楽しんでいただけると、うれしいです♪ 

「入江くん、大丈夫って言ってたけど本当に?まだ無理しちゃダメだよ。体温計ないの?」

「俺、あんまり熱とか出したことないし、体温計なんかないよ。」

「じゃあ、おでこ貸して。」

そう言うが早いか俺の額に手を伸ばす。貸すって言ってねーだろ。でも、さすがに手を振り払うのは気が引ける。

「もういいだろ。大丈夫だ。」

琴子は俺の額に当てていた手を今度は自分の額に当てた。真剣に考える顔が可笑しくて笑いそうになるが堪えた。

「昨夜よりは随分下がってるけど、私よりは熱いよ。微熱かな。今日は一日ちゃんと寝てなきゃ。最後まで看病するよ。」

「最後までって...お前寝てないんだから早くうち帰って寝ろ。もう俺は大丈夫だから。」

「大丈夫。眠くないもん。ちょっと熱が下がったからって無理するとダメだよ。まずは朝ご飯食べて薬飲まなきゃ。」

「お前、何か張り切ってない?俺が熱出して嬉しいのか?」

琴子がすんなり帰る訳がないこともわかってるし、張り切る理由もわかっていて憎まれ口を叩いてしまう俺。


「そ、そんなワケないじゃない。昨夜は入江くん、すっごく苦しそうで本当に心配だったんだよ。」

「...わかってるよ。いろいろと悪かったな。着替えまでさせてくれたみたいだし。」

ニヤリと笑って言うと途端に耳まで真っ赤になる琴子。

「だ、だって。すごい汗でそのままにしてると冷えるし、余計風邪がひどくなっちゃうでしょ。それに見ないようにしたし。」

「ふーん。見なかったんだ。別に減るもんじゃないし、俺、誰かと違って見られて困るような貧相な身体してねーし。」

「誰かって誰よ。貧相って...どーせ入江くんの好きなCカップじゃないですよー。」

別にCカップが好きだなんて言ってねーだろ。そうやってすぐムキになるから俺にからかわれるんだよ。

「誰もお前にCカップになれなんて頼まねーから、朝飯頼むよ。少しなら食べられる。」

「ほんと?すぐおかゆ温めるね。卵あったっけ?卵おじやにしようか?イチゴもあるんだよ。食べるでしょ?」

「お粥でいい。お前卵の殻まで入れるから。」

「もぉ、意地悪っ。」

子どもみたいに頬を膨らませる琴子。


そうだな。俺、意地悪だよな...でも、それでもお前は俺が好きなんだろ。

『好きな人に冷たくされたら誰だって辛いに決まってるじゃないか。それでも嫌いになれないくらい君が好きなんだよ。』

あの人の言葉...俺、お前に意地悪なのは多分直らない。お前の拗ねた顔やムキになった顔見るの結構好きなんだ。

「ほんとのことだろ...お前も食うよな。俺、そんなに食えねーし。イチゴも俺は少しでいいからお前食え。」

「わかった。イチゴは余ったら冷蔵庫に入れとくから。すぐに準備するからちょっと待っててね。」

さっきまで膨れてたのに、もう零れるような笑顔を見せるお前。

俺、意地悪だけど、お前を傷つけたり泣かせたりはしないようにするよ。一番好きなのはお前が笑った顔だから...


朝食の後片付けをする琴子を横目に見ながら、ネットで新聞のニュースをチェックしていた。

「入江くん、少し横になったら。その間に私、買い物に行って来る。お昼と夜ご飯の材料買ってくるよ。何が食べたい?」

「じゃあ悪いけど、今からメモするもの買ってきてくれるか?」

「うん。わかった。」

私は入江くんが書いてくれたメモを持って買い物に出掛けた。ん?ロールケーキ?入江くん甘いもの苦手なのに...


「ただいま。あれ...入江くん?寝ちゃったのかな?」

靴を脱いで部屋に上がる。買ったものを取りあえず冷蔵庫に入れて寝室に向かった。

出かける前ベッドに横になっていた入江くんは薬が効いたのかぐっすりと眠っていた。

昨夜とは違う規則正しい寝息が聴こえる。穏やかな寝顔。

入江くんはほとんど壁に背中をくっつけるようにして寝ていた。もっと近くで入江くんの寝顔が見たくなった。

入江くんの顔の前で手を振ってみる。入江くんはピクリとも動かない。

私はベッドに上半身を乗り出すようにして肘を付き、手に顎を乗せて入江くんの寝顔を見つめた。


ほんとに綺麗な顔だな。同居してすぐ勉強教えてもらった時もこうやって入江くんの寝顔を見たっけ。あれからもう2年か。

...入江くんが言ったみたいにうれしいワケじゃないけど...熱で弱ってた昨夜の入江くん、何だか可愛かったな。

あーんとかしちゃったし...嘘みたい。私ったら何で寝ちゃったんだろう。朝までちゃんと起きて看病したかったなぁ。

でも寝ちゃったから入江くんが毛布を掛けてくれたんだよね。やっぱり入江くんはやさしい。

何だか幸せな夢を見ていた気がするけど覚えてない。どんな夢だったんだろう。眠くなってきちゃったな...


うわっ...目を開けると目の前に琴子の顔があった。何で...どうせ俺の寝顔でも見てるうちに寝ちまったんだろ。

昨夜のデジャブみたいだな。でも今日は琴子を動かせそうだ。足だけをベッドに上げればいいし...起きるかな。

そーっと琴子の両脚を抱えた。起きる気配はない。そのままベッドに下ろし毛布を掛ける。

俺も少し離れて隣りに横になる...あの雪の日みたいだな。

琴子の寝顔を見つめる。長い睫毛が影を作ってる。昨夜唇で触れた頬にそっと手を伸ばす。

少しだけ白い歯を覗かせている柔らかそうな唇。柔らかそうじゃなくて柔らかかったけどな...卒業式の夜を思い出す。

親指でそっと唇をなぞる。昨夜だったら熱の所為にできるけど...確信犯だよな。それに...止められないかも。

また今度な...小さく呟いて琴子の髪を撫でると、俺は無理矢理目を閉じた。


~To be continued~