Love You Like I Do 前編 | φ ~ぴろりおのブログ~

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イタズラなKiss&惡作劇之吻の二次小説を書いています。楽しんでいただけると、うれしいです♪ 

はじめてアイツと言葉を交わしたのは、琴子と俺がペアになって採血実習をしたときだった。

大騒ぎを聞きつけてオレ達の教室を覗いたアイツは、酷すぎる琴子の様子を見ても、ただ呆れ果てるだけだった。

指導してやればいいだろと言うオレに、自分には関係ないし、気になるならあんたが何とかしてやればと言い放った。

なんであんな冷血人間と結婚したんだと聞くオレに、小さく舌を出す琴子。事もなげに笑って言う。

「いーんだ。本当のことだもん。あんなこと慣れてるよ。入江くんは私のこと甘やかさないんだ。」

夫婦ってそんなもんじゃないだろ...もっとこう手を取り合って...もっとお互いを必要として助け合って...


女共が琴子を使って無理矢理仕組んだ医学部との合コン。

アイツは既婚者なのに女共にチヤホヤされていい気なもんだった。琴子はつまらなそうに酒を煽りとうとう寝てしまった。

こんなトコで寝るなんて...眉をしかめたオレ。でも微笑んで眠る琴子の寝顔があどけなくて、尖った気持ちが和らぐ。

当然のように琴子を連れて帰ると言ったアイツに言った。

「...おい。コイツ、オレが送るよ。」

「誰だ、おまえ。」

少し目を細めて射るようにオレを見たアイツの目を真っ直ぐ見返す。看護科の鴨狩啓太だと名乗り、オレがちゃんと送るからあっちで女共にチヤホヤされとけと言った。どーせ奥さんに興味なさそうだしとも言った。アイツがキレた。

「うるせえんだよ。俺が琴子に関心あろうがなかろうが、お前には関係ないんだよ。部外者はひっこんでな。」

「なにぃ。」

一触即発...冷静な入江が怒りを露わにしていることに驚く医学部の奴等、怖がって引き気味の女共。

何も知らない琴子が目を覚まし、入江に気付くと嬉しそうに抱き付いた。帰るぞと言った入江に子どもみたいに手を挙げて返事をする琴子。入江は琴子を横抱きにした。琴子が入江の首にしがみつき、肩に頬を寄せて目を閉じた。

「それから鴨狩。琴子のこと、こいつよばわりすんな。」

ムカツク...入江直樹...気に入らない。


形態機能学の解剖実習で琴子が倒れた。オレは琴子を抱きかかえて保健室に運んだ。先生はいなかった。

琴子をベッドに寝かせた。解剖した手も洗わずに琴子の顔を触ったことに気付き、タオルで拭いてやろうと思った。

琴子のマスクを取る。苦しかったのか琴子が大きく息を吐いた。まだ目を覚まさない。お前の寝顔ばっか見てるな。

あどけない寝顔...長い睫毛...ちょこんとした鼻...少し開いている唇...柔らかそうな...琴子の唇...

引き寄せられる...腕にそっと手を掛ける...

「それからどうすんだよ。」

「!!」

「またおまえか。」

「別に何もしてねーよ。人聞きの悪い事いうなよ。誰がこんな奴。」

「ふーん。そうも見えなかったけどな。こいつぶっ倒れてここまで運んでくれたんだってな。

わざわざ悪かったな。『こんな奴』の為に。俺が来たからもういいよ。実習戻れよ。」

「言われなくてもそうするよ。」

「鴨狩。おまえわかってんだろうな。こいつが俺と結婚してることを。琴子にちょっかい出そうなんて気になるなよ。」

「...オレの方が...よっぽど.....今わかった。

オレの方があんたよりずっと琴子のこと考えてやれる。あんたなんかよりずっと、大事にしてやれるさ。」

「ふーん。上等じゃないか。」

結婚してるからって何だっていうんだ...そんなんで本当に夫婦って言えるのか...

琴子を自分の所有物みたいに言うならちゃんと大事にしろよ...ムカツク...むかつく...


夏休み...琴子から伊豆高原の入江の別荘に誘われた。グループ課題を片付けなければならなかったからだ。

まるで気は進まなかったが、実は俺達に来て欲しくなさそうな琴子の顔を見て気が変わった。オレは行くことにした。

オレ達は一日遅れて行くはずだった。入江と過ごす一週間が待ちきれず早く行きたがる幹達をオレは止めなかった。

きっと入江と二人で過ごす時間を琴子は楽しみにしていたはずなのに...邪魔するつもりはなかった...わからない。

オレ達がいるから照れくさいのか何なのか...入江はずっと琴子に冷たくしていた。

何とか構ってもらおうとする琴子...その度につれなくされて落ち込む姿を何度見ただろう。

最後の夜...みんなでバーベキューをした。入江は相変わらずだ。まとわりつく真里奈達と楽しそうに話している。

琴子は...ほとんどやけ食いだ。最後の夜くらい気を利かして欲しいだろうに...オレも真里奈達に注意はしない。

琴子をまるで気にする様子のない入江の態度が真里奈達を助長させている。わざわざオレが気を遣う必要もないだろ。

琴子が遠慮がちに相談があると入江に声を掛けた。一日滞在を延ばして二人で過ごしたいと最後まで言い終わらないうちに、ダメだの一言で琴子の切ない願いはあえなく却下された。キツイ言い方に思わず琴子が聞き返すと、

「明後日教授の助手をする約束をしているから、明日中には戻るって言っただろ。」

ちゃんと聞いてなかったのか。何を言ってるんだとでも言いたそうに、冷たい目をした入江が冷たい声で言った。

「そ...そうだっけ。じゃ、仕方ないね。」

琴子が消え入りそうな声で言った。琴子が小さくなった気がした。いくら何でも琴子が可哀想だ...

「残ってやれよ。そんな約束電話一本で済むことだろ。」

「啓太!!」

「一週間奥さんほったらかしにしてたくせに。もうちょっと奥さん大事にしてやれよ。」

「ち、ちょっと...」

「琴子の気をひくのも大変だな。だからって俺達の事に一々首突っ込むなよ。お前のお節介にはうんざりなんだよ。」

「それはひどい、入江くん。啓太は私のために言ってくれたのに。私がしょげてるの知ってたから...」

「ああ。じゃあ、明日お前、鴨狩に残ってもらえよ。」

「入...」

「お前のこと、随分ご心配らしいから、二人で仲良く虫取りでもしてろよ。」

「ひどいっ。どうしてそんなこと言うの。入江くんのバカ。」

「ち、ちょっと。お、お兄ちゃん、なんてことを。琴子ちゃん、泣いちゃったわよ。」

「追いかけないのか。」

一応聞く。入江は琴子の旦那だ。入江が追いかけるならオレの出る幕はない。それくらいは分かっている。

「......」

「お、お兄ちゃん。追いかけるわ。追いかけるに決まってるじゃない。」

「あんたが行かないなら、オレが行く。」

入江は何も言わなかった。一歩も動かなかった...もう真っ暗だ。本当に琴子が心配じゃないのか。

あんなに泣いて駆け出したアイツを見たら、ちゃんと好きだったら、考えるよりも先に走り出してしまうんじゃないのか。

「きゃーっ。ちょっと待って、あなたっ。お兄ちゃん、何してるの。早く早く。琴子ちゃんがとられちゃうわよ。」


~To be continued~