Ordinary World vol.12 | φ ~ぴろりおのブログ~

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イタズラなKiss&惡作劇之吻の二次小説を書いています。楽しんでいただけると、うれしいです♪ 

「あっ、結城先輩。土曜日はすみませんでした。ご馳走になったうえに、私ったら、とんだ醜態を...」

「別に気にしてないよ。楽しかったし。迎えに来たのは、入江の弟さん?入江と同居してるんだってね。驚いたよ。」

「そうなんです。いろいろと事情がありまして...話すと長くなるんですけど。」

「あっ、入江。」

「えっ?入江くん、どうしたの?珍しいね。」

「別に...俺が練習出ちゃ悪いのかよ。」

「そんなことないよ。うれしいよ。」

「入江君、はじめましてじゃないよな...どう?クラブでは初顔合わせってことで、お手合わせ願えないかな?」

「...俺は別にいいですけど。」

「じゃあ、決まり。部長に試合するって言って来るよ。審判頼まなきゃな。じゃあ、後で。」

「入江くん、久しぶりに出てきたのに、いきなり試合って...大丈夫?」

「何とかなるだろ。」

「頑張ってね。応援してる。」


「ノーアドでいいよな。」※ノーアドバンテージ方式=40-40になった時にデュースではなく、次のポイントを取った方が勝ちになる。

「いいですよ。」

「フィッチ」...結城がラケットを回す。

「スムース(表)」...ラケットが倒れる。裏だ。

「じゃ、おれはサーブで。」

「俺は、こっちのコートにします。」

『ファーストセットマッチ プレイ』 『結城サーブ 0(ラブ)オール』

「ふんっ」

スパーン スパーン  ビシッ

『15-0』

結城先輩の速くて強いサーブ。入江くんが打ち返したボールはアウトになった。

...ノータッチエース狙いのスライスサーブか。ふーん。なかなかヤルじゃん。

「ふんっ」

スパーン スパーン  ビシッ

『15オール』

今度は入江くんがコーナーギリギリにリターンエースを決める。か、かっこいいーっ。

...なるほどね。VIP待遇はダテじゃないわけだ。


1ゲーム目は、結城先輩がとった。2ゲーム目は、入江くんのサービスゲームだ。

「はっ」

スパーン  ビシッ

『15-0』

背の高い入江くんが、高い打点から繰り出す超高速サーブでノータッチエースをとった。

「はっ」

スパーン スパーン パーン  ビシッ

『30-0』

入江くんがサーブを打ってネットに詰め、ボレーを決めた。

入江くん、すごい...女の子の声援もすごいな..結城先輩、ちょっと可哀想かも..いつもお世話になってるし..

「結城先輩、頑張ってーっ。」

あいつが琴子を見て微笑む。何だよ、琴子のヤツ...応援してるって言ったくせに...くそっ。

「はっ」

スパーン  ビシッ

『フォルト』

...力が入りすぎた...

「はっ」


ラリーが続く。最初は、部員だけが観戦していた。それがすぐに大声援の中での試合に変わった。

結城先輩も入江くんもサービスゲームをキープしていた。ゲームカウントは、4-4。

結城先輩のサービスゲーム。入江くんがリスク覚悟でリターンエースを狙い、

それにサーブを乱された結城先輩がダブルフォルトを犯し、入江くんがサービスブレイクをした。

入江くんのサービスゲーム。このゲームを入江くんがキープできれば、入江くんの勝ちだ。

ラリーの応酬。聞こえるのは、入江くんと結城先輩の声。ラケットが風をきる。打ち返されコートで弾むボールの音。

息詰まる熱戦に、誰もが声を出すことを忘れてしまったかのようだった。

「はっ」

入江くんの額には汗が光っていた。肩で息をしてる。頑張って入江くん。

スパーン  ビシッ

『40-30』

入江くんがツイストサーブでサービスエースを決めた。次のポイントをとれば、入江くんの勝ちだ。

「はっ」

スパーン パーン スパーン パーン スパーン スパーン  ビシッ

『40オール』

結城先輩は、疲れの見える入江くんを左右に揺さぶり、最後はストレートで抜いた。先輩の意地を見せる。

ノーアドバンテージだから、次のポイントを取った方がこのゲームに勝つ。

入江くんなら、入江くんの勝利で試合終了。結城先輩が取ったら、ゲームカウントは5-5。まだまだ試合は続く。

お願い。お願いです、神さま。入江くんを勝たせてください。

「はっ」

スパーン スパーン パーン パーン...ラリーが続く...入江くん、勝って!!

スパーン  ビシッ

入江くんのスマッシュが決まった。入江くんが勝った。思わず手を叩いて飛び跳ねてしまう。

『セット マッチウォンバイ入江 ゲームカウント6-4』

コートの中央で握手を交わす。

「今日は君に譲ったけど、今度はそうはいかないからな。試合も琴子ちゃんも。」

「試合はどうかわかりませんけど、琴子は無理じゃないですか。アイツ、俺しか見えてませんから。

 それに、酒飲ませてどうするつもりか知りませんけど、琴子、一応未成年ですから。もうやめてくださいね。」

結城の顔色が変わった...知るかよ。本当のことを言ったまでだ。


...あいつに声援を送る琴子にムッとした。でも、ときどき、目の端に映る琴子は、ひたすら俺を応援していた。

『入江くん、勝って!!』

静まり返ったコート。最後のショットを打つ瞬間、琴子の声が聞こえた気がした。

アイツは、いま飛び跳ねて喜んでいる。もうすぐ走ってくるはずだ。まっすぐに、俺のところへ...


~To be continued~