Ordinary World vol.5 | φ ~ぴろりおのブログ~

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イタズラなKiss&惡作劇之吻の二次小説を書いています。楽しんでいただけると、うれしいです♪ 

「ただいま。」

「ただいま~」

「あら、お兄ちゃん。琴子ちゃんと一緒だったの。よかったわ~ 仲直りしたのね。」

「そんなんじゃないよ。」

「ふーん。まぁ、いいわ。ケーキ焼いたの。食べる?琴子ちゃんも食べるでしょ。」

「はーい。食べま~す。」

「俺は少しでいい。琴子、コーヒー淹れてくれよ。」

「あっ。うん。すぐ淹れてくる。待っててね。」

「慌てなくていいからな。お前、火傷するだろ。」

「うん。わかった。」

「ふふふ。よかったわね、琴子ちゃん。」


リビングで、琴子とオフクロは楽しそうに話し続けていた。

俺は、二人の会話を聞き流しながら、昨日買ってきた専門書を読んでいた。

昨日の方がよっほど静かだったのに、今日の方が遥かに集中できた。本の中に入り込む感覚...

その快感ともいえる俺の時間を壊したのは、昨日までとは違う裕樹だった。


「へぇ。仲直りしたんだ...琴子、あんなこと言われて、もう許すのかよ。だから、兄貴になめられるんだよ。」

いつの間にかリビングに入ってきた裕樹は、琴子にそう言った。

「何言ってんだ、お前。」

「オレは、別に兄貴に話してない。琴子と話してる。」

「何だと。」

「やめて。ケンカしないで。」

「琴子に、兄貴になめられるって言ったから怒ってんの?ほんとのことだろ。兄貴は琴子をなめてる。」

「お前にそんなこと言われる筋合いはない。」

「お願い!やめて!裕樹くん、もういいの。気にしてくれて、ありがと。」

「よくないよ。どうせ兄貴のことだから、謝ったワケじゃないんだろ。」

「お前、いったい何なんだ。」

「何なんだは、こっちのセリフだよ。」

「裕樹くん、お願い。ほんとにもういいから。」

琴子が泣きそうな顔で、裕樹の腕に縋るようにして言った。

「わかったよ。琴子がいいなら、もう言わないよ。オレ、課題あるから。」

そう言うと、裕樹は2階に駆け上がって行った。琴子が後を追う。


「兄貴」...俺のことをそう呼ぶ裕樹...俺に突っかかる裕樹とは思えない裕樹...

裕樹の腕に縋りついていた泣きそうな顔の琴子...裕樹を追いかけた心配そうな顔の琴子...

さっきまで、あんなに気持ちよく読み進んでいたのに...裕樹と琴子の顔が代わる代わるチラつく。

目は文字を追っているはずなのに、頭に入ってこない...ページをめくる手は、ほとんど途絶えがちになった。


トントンッ

「......」

「私...琴子。」

「...入れよ。」

ガチャ

「裕樹くん、ごめんね。」

「なんでお前が謝るんだよ。違うだろ。」

「ありがと。裕樹くんは、ほんとにやさしいね。」

「別に、やさしくなんかないよ...ただ、昨日のアレはひどいだろ。オレ、階段で聞いちゃったんだよ。」

「...そっかぁ。ひどい..よね。悔しかったし、悲しかった。昨夜ずっと泣いちゃったもん。」

「だろ?じゃあ、なんで許したんだよ。」

「怒ってたんだよ。今朝だって怒ってたんだけど、具合が悪そうって聞いたら、心配でたまらなくなるの。

 怒ってるってわからせたくても、話しかけてくれたら、うれしいの。返事したくなっちゃうの。

 無視しようと思っても、できない。目が勝手に入江くんを見ちゃうんだもん。」

「...何だよ、それ...」

「ふふっ。おかしいよね。でも、そうなんだ...それにね、謝ってくれたんだよ。」

「兄貴が?」

「普通に謝るのとは、ちょっと違うんだけどね。でも、謝ってくれたって思ってる。」

「ウソだろ?信じられない。何て謝ったんだよ。」

「...ナイショ。」

「ナイショ?いいだろ。教えろよ。」

「ごめんね。裕樹くんにも言えない...私だけの宝物にしたいの。」

「ったく...あんなに泣いてたのに...ノロケかよ。わかったよ。もう課題やるから、出てってくれよ。」

「うん。邪魔してごめんね。ほんとにありがとう。裕樹くんが私のために怒ってくれて、うれしかったよ。」

バタンッ


...何だよ...心配したオレがバカみたいじゃんかよぉ...バカみたい...

あれっ...ヘンだな...なんで...涙が...くそっ...うっ...くっ...


~To be continued~