Ordinary World vol.2 | φ ~ぴろりおのブログ~

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イタズラなKiss&惡作劇之吻の二次小説を書いています。楽しんでいただけると、うれしいです♪ 

すっかり暗くなってから、家に戻った。

オフクロの料理が、テーブルの上に所狭しと並べられ、食べてくれる人を待っていた。

おじさんは休みの日しか夕食を食べないし、オヤジもこの時間にはまだ帰って来ない...琴子がいなかった。

「お兄ちゃん、また琴子ちゃん、いじめたんでしょう。」

「別にいじめてなんか。」

「ウソおっしゃい。琴子ちゃんが部屋に閉じこもって、ご飯食べたくないなんて...お兄ちゃんしか考えられない。」

「......」

琴子がいないと食卓は途端に静かになる。いつもなら何とか盛り上げようとする裕樹も、今日は何も話さない。

「ごちそうさま。」

よく味もわからないまま、食事を掻き込み、そそくさと部屋に戻った。


「琴子、何怒ってんだろうね。あいつがいないと、ほんとに静かでせいせいするよ。ねぇ、お兄ちゃん。」

いつもなら、そう言って話しかけてくるはずの裕樹も、ベッドに入る時間の直前まで部屋に戻って来なかった。

ベッドのヘッドレストにもたれて、相変わらず今日買ってきた本を手にしていた。

いつもならもう読み終わっている。随分長い間ページをめくる手は止まっていた。諦めてナイトスタンドを消した。


横になってしばらくすると、裕樹の声が聞こえてきた。

「お兄ちゃん。明日になったら、琴子出てくるかな。」

「...出てくるだろ。あいつだって、ずっとメシ食わないワケにいかないだろうし、大学だってあるんだから。」

「...お兄ちゃん、琴子と仲直りする?」

「別にあいつとケンカした覚えはないよ。」

「うそだよ。僕、階段で、全部聞いちゃったんだ。」

「...立ち聞きはよくないぞ。」

「ごめんなさい...でも、今日は琴子悪くなかったよ。」

「......」

「好きな人にあんなこと言われたら、悲しいよ。」

「好きな人って...なぁに、生意気言ってんだ。」

「琴子は、お兄ちゃんが好きだよ。知ってるでしょ。」

「...もう寝るぞ。」

「お兄ちゃんは、琴子が好きじゃないの。」

「裕樹、ほんとに寝るぞ。」

「ちゃんと答えて。」

「...別に好きじゃない。ほら答えたぞ。寝るからな。」

「...好きじゃないんだ。」

「そうだ...どうしたんだ、裕樹。ヘンだぞ。」

「ほんとうに、好きじゃないんだね。」

「しつこいぞ。もう話は終わりだ。おやすみ。」

「...わかった。おやすみなさい。」


夢を見た。寝る前に裕樹と話したからだろうか...裕樹が出てきた。

「お兄ちゃん、僕は何度も聞いたからね。後悔しても...もう遅いよ。」

「何ワケわかんないこと言ってんだよ。」

「僕はちゃんと聞いたんだ。なのに、お兄ちゃんが...」

「だから、何言ってんだよ。」

「もうダメだからね。いくら後悔しても...もうダメだから...」

「おいっ。裕樹。裕樹。」

闇の中に裕樹が溶けていった...俺はまた、眠りの底に堕ちていった。


ピピピピッ ピピピピッ

目覚まし時計の電子音がやけに頭に響く。おかしな夢を見たせいだ。

今日は1限から講義だ。急いで支度をして、1階に下りる。

...琴子は今日、何限から講義なんだろう...もう起きてるのか...まだ怒ってるよな...

「おはよう。」

そう言ったまま、俺はバカみたいに立ち尽くしていた。その場から動くことができなかった。


~To be continued~