Some Day My Prince Will Come vol.16 | φ ~ぴろりおのブログ~

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イタズラなKiss&惡作劇之吻の二次小説を書いています。楽しんでいただけると、うれしいです♪ 

「イリちゃん、すまねぇ!!」

「な、何するんだ、アイちゃん。」

「うちの、うちの娘のせいで、イリちゃんの大事な坊ちゃんをえらい目に遭わせちまって。許してくれ...

 イリちゃんが直樹君をT大にすごく行かせたかったのは、よーく知ってんだ。どうやって償ったらいいのか...」

「まあまあ。頭を上げてくれよ、アイちゃん。行かなかったのは、直樹が勝手にしたことなんだし。

 それにあそこで、琴子ちゃんを見捨てて試験受けられるよーな奴だったら、わしはがっかりだよ。」

「そーですよ。これでお兄ちゃんは琴子ちゃんと同じ大学に通えるんだし、私はうれしいんですよ。

 お兄ちゃんが琴子ちゃんを病院へ運ぶ姿、ビデオに撮りたかったわ。」

...ドア越しに聞こえてきた会話...ありがとう...おじさん...おばさん...

でも私、このままのーのーと、この家にいられないや...私...もう、ここにいられない...


『入江家のみなさまへ』

...手紙は置いた...後は見つからないように...

バタン

お世話になった入江家を見上げる。

...さよなら、入江家のみなさん。今までズルズル甘えちゃって...ありがとうございました。

これからは、入江くんの目の届かない所で、ひっそりと生きていこう...

...あー、もう2月14日か...人生最悪のバレンタインだな...さよなら、入江くん...

「重そーだな。手伝おうか。まったく...病み上がりによくやるよ。」

「い..入江くん。と、とめないで。私は、これ以上入江くんに...」

「別に止めてないけど。やっぱりお前って向うみずで衝動的だな。おじさんのこと忘れてるだろ。置いてくのか?」

「違うよ。ただ私...」

「バカだな。俺がT大に行けなかったから、出てくって?」

「この間のお守りといい、今回のことといい、私やっぱり入江くんの疫病神だなって。私がいなくなったって

 T大にはもぉ入れないのはわかってるけど、このままいるとまた、入江くんに災難がふりかかりそうで。」

...好きな人に迷惑ばかりかけて...

「言っとくけど、T大に行かなかったのはお前のせーじゃないぜ。」

「えっ?!」

「お前入院させてから行ったって、間に合ったんだ。前から思ってたんだ。T大に行って何するんだって。

 行きたい理由もない。それよりお前が家に来てから、何だか刺激があるんだよな。

 予期せぬことが次々に起こってさ。こんなこと初めてだ。結構面白いよ。だから...このままも悪くない。

 前にお前が大学は何をするか決める所だって言ってたろ...エスカレーターもいいかもなって思って。

 それでも、T大に行きたくなったら、また来年受けなおせばいいさ。」

「ねぇ。そ、それって、ここにいてほしいってこと?」

「言いたいことはもう言った。勝手にしろ。」

「うん。じゃあ、T大受けなかったのは、もしかして私と同じ大学に行くため?」

「ずいぶん調子のいーヤツだな、お前は。知るか。じゃあな。」

「ちょっと待って!!あ..あの..め、迷惑はかけませんから、や、やっぱり、も、もう少し、い、いていい?」

「お前が迷惑かけないわけないだろ。どっちにしろ刺激的だ。早くオフクロに気付かれないうちに入れよ。」

「う..うん。」



「へんやなーっ。」

「どうしたんすか。金さん。」

「ちょっとな。」

「あーっ。きょーは、バレンタインっすねー。」

「わしは一日大変や。」

「あっ、金ちゃん、きたーっ。」

「ほらこれや。おーっ、こわっ。糖尿病にならんよーにせなな。」

「金ちゃん、クラスの女子からのチョコよー。」

『くじけるな! F組一同』

「...わしはなんもくじけとらんけど。えーんや。わしは1個だけ誰かさんからもらえりゃあ。琴子はまだかのー。」



「ダメよ。琴子ちゃん。今日は一日安静にしとかなきゃ。」

「でも、もー大丈夫なんですけど。」

「だめだめ。昨日、盲腸になった人が...単位はとれてるんでしょ。」

「...なんか、おかーさんみたい。こんなことしてもらったの何年ぶりだろ。」

「まぁ、琴子ちゃん。これから本当のお母さんにだってなれるんですからね。今日は頑張ってよ。」

...そう、今日はバレンタイン・デー...しまった。あのチョコ...早く捨てとかなきゃ...



「お前が家になんか連れてくるから...連れてくるから...ばか琴子!疫病神琴子!!どっか行っちゃえ。」

...裕樹くん...


裕樹くんの初恋の女の子...杉本直美ちゃん。なんと裕樹くんより3つ年上の6年生。

忘れ物の体操服を届けに行って、裕樹くんが直美ちゃんのことを好きだと見抜いた私は、嵐のピンナップをエサに

彼女を家に招ぶことに成功した。直美ちゃんと3人で家まで帰った。初めて直美ちゃんと話せて喜んでた裕樹くん..

私に照れくさそうに『ありがと』って言ってくれたのは、ついこの間のことなのに...

ピンポーン

直美ちゃんの突然の訪問。後ろに隠しているチョコらしきもの...裕樹くんも私もドキドキして、その告白を待った。

なのに...いつまでたっても、直美ちゃんはじっとしている...おかしいと思い始めた頃、入江くんが帰ってきた。

「直樹さん。えっと、初めて見たときから直樹さんのこと好きになって。この人だって思ったんですよね。

 これチョコなんです。食べてね。お返事はいつでもいいです。きゃっ♪はずかしい。さよならっ。」

「「「.........」」」


裕樹くんは私にやり場のない怒りをぶつけると、部屋に駆け込み閉じこもってしまった...

「怒ってんなー。あいつ。どーする。また荷物まとめる?手伝おーか。」

「きっ!だいたい、入江くんがあんな小っちゃな子まどわせたんじゃない。ロリコンじゃないのーっ、本当はっ!!」

「ガキにキョーミねえよ。」

「ガキじゃなくたって、キョーミないくせに。手紙受け取んなかったじゃん。」

「F組のオンナなんて問題外。」

「んまーっ。なにそれっ!!」

「あらあら、楽しそうね。さっさっ、琴子ちゃん、そろそろ例のものを。」

「えっ?」

「ほらほら、持ってきてあげたわよ。」

「えっ!こ、これは...」

「うふふ。琴子ちゃんのゴミ箱から発見してね。ダメじゃない。勇気出さなきゃ。

 お兄ちゃんはそのままよ。邪魔者は消えるわね。ごゆっくり。」

バタンッ

「えっと...えっと...」

「イライラすんなぁ。お前、俺に渡し物すんの、得意だろ。今さらオロオロすんなよ。」

「た...食べなくていーよ。」

「俺、甘い物食わねーよ。」

「あ...あけなくってもいーよ。」

「.....ふーん。そこまでいうなら見てやろう。」

「あーっ。ダメーッ。きゃーっ。」

『T大合格おめでとう flom ことこ』

「............」

「だって、だって、だって...ちがうのーっ!!」

「大ボケ。つづりまで間違えやがって。」

「でも...好きだから...ね。」

「耳にタコ。」

バタンッ


...ふんだっ...いいんだ。大学生になったら、うんっといいオンナになって、

「こいつ、こんなにいいオンナだっけ」と思わせてみせるわっ...なんたって、一緒の大学だもんね。


...『T大合格おめでとう』...クスッ...アイツのあの慌て方...おもしれーっ...バカだよな...

『好きだから...ね。』...知ってるよ...知ってる...うげっ..甘っ...


~To be continued~