Some Day My Prince Will Come vol.15 | φ ~ぴろりおのブログ~

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イタズラなKiss&惡作劇之吻の二次小説を書いています。楽しんでいただけると、うれしいです♪ 

おばさんが『バレンタイン☆チョコレート特集』っていう雑誌を見ていて、はじめて気付いた。

もうすぐバレンタインデー...でも、前日はT大入試...


「もー試験ばっかりでお兄ちゃん可哀想。私は別にお兄ちゃんが行きたい大学に、行きたい職業に行けばいいと

 思ってるのよ。パパの会社、継がなくったっていーのよ。それにT大なんて、カタブツばかりみたいだしね。」

「でも、いーな。直樹くんなんて、やりたい事があれば、なんだって出来ちゃうんだもの。」

「それがよくないみたいなのよね。やれない事がないから、目標がないっていうか、夢がないっていうか。

 それがみつけられればね。もうちょっと冷めた人じゃなくなると思うんだけど。」

『おまえってすごいよな。うらやましい気がする。』

...あっ...そういえば...

「私思うんだけど、琴子ちゃんとお兄ちゃんって、なんだか正反対みたいだけど、

 お互いの足りないところを埋め合えるいいカップルだと思うのよ。」

「...おばさん。」

「だから、2月14日は頑張りましょ。」

「はっ、はい。」



「で...できた。うーん。こんなこと書いて大丈夫かなあ...

 まっ、大丈夫よね。バレンタインがT大入試の次の日でよかったー。」

「あら、琴子ちゃん。チョコできたのぉ。」

「あっ、いや。」

「あら、ケチねー。2月14日頑張ってね、琴子ちゃん。この日が琴子ちゃんの人生の決定日よ。」

「は、はいっ。」

「早く琴子ちゃんに、おかあさんと呼ばれたいわー。」

「そ、そんな...」


2月13日...

「お兄ちゃん。そろそろ時間でしょ。忘れ物ないの。受験票は?筆箱は?」

「あるよ。」

「あっ!琴子ちゃんのお守りもったの?」

「俺を失敗させたいのか。」

「うーん。心配なんだもん。お兄ちゃん、T大受験乗り気じゃないから。あら..琴子ちゃん、もういいの?」

「あっ、はい。なんかドキドキして食欲が...」

「直樹おまえ、まさかトンヅラする気じゃ...」

「オヤジ!今さらしないよ。」

「私、T大会場までついてこーかな。直樹くんが会場に入るまで見届けてきましょー。」

「おーっ。グッドアイデア、琴子ちゃん。」


「お前といるとロクなことないんだよな...」

「ねぇ、キンチョーしてるぅ?」

「してないよ。」

「ふーん。すごいなー。私なんか高校入試のとき、トイレばっか行ってたもんなー。」

「......」

「もう手に冷や汗でちゃって...あいてて。」

「ん?」

「おなかが...昨日食べ過ぎちゃったみたい。でも、へっちゃらよ。」


『お茶の水 お降りの方は足元に...ピーーーッ』

...アイツ...顔色悪いな...

「おい。もー帰れよ。」

ぶんぶんと音がしそうなほど、首を横に振るアイツ...

「..ったく。」

...やばいなー。なんだか、どんどん気分が悪くなってく...

で、でも、入江くんがT大の門をくぐるまでは...心配かけちゃいけない。


【 T大入試会場 】

「気がすんだろ。じゃあな。」

「が、がんばってね。」

琴子に背を向けて、受験会場に指定された校舎に向かう。

「どーしたんですかーっ?」

「人が倒れたぞーっ。」

「救急車ーっ。」

背中越しに聞こえた声...琴子?...振り返って人だかりに駆け寄る。その中心には琴子が倒れていた。

応急処置の心得があるのか一人の男が琴子の手を取り、琴子の顔に手をかけようとしていた。

思わずそいつを払い除けるようにして、琴子の前に進み出る。

「おいっ。どうした。」

平気よ...早く試験に...大丈夫...

「おいっ、琴子。」

試験に...

「琴子...この辺に病院は?」

「確か2つめの角を右に...救急車呼んだ方が。」

「近いなら連れて行く。」

俺は琴子の左手を自分の首にまわし、思いのほか小さな背中を抱え、膝の下に手を入れて抱き上げた。

大丈夫だから...早く...

...あまりの痛みに...意識がモーローとしてきた...入江くんの鼓動だけが聞こえる...

苦痛に歪み、意識を失いかけている琴子の顔がすぐそばにある。

もしかしたら受験出来なくなるんじゃないかとか、そんなことはちっとも頭になかった。

バカだな...何やってんだよ...俺が病院に連れて行ってやるから...がんばれ...もう少しだからな...    

俺は、入試会場に向かう人の波に逆らい、琴子を抱いたまま病院へ急いだ。


「急性虫垂炎ですね。症状は軽いです。」

「かなり我慢してましたが、腹膜炎を起こす危険はないのでしょうか。」

「そこまでひどくないですよ。この程度なら薬でちらせますので、まっ、半日ほど入院して帰ってください。

 もしや君、T大受験じゃないの?早く行った方が...」

「ご家族の方に連絡されて、あなた付き添わなくていいですよ。」

「えぇ。そうですね。お世話になりました。」

「はい。お大事に。」


琴子のベッドの側に座る。琴子の顔を見る。閉じられた瞳。伏せられた睫毛。目尻に溜まる涙...

「...はやく...大学にいかなきゃ...遅れちゃうよ...スー..ムニャ..」

...琴子...夢の中でも俺の心配か...相当痛かったはずだ...我慢して...バカなヤツ...

わかったから...俺のことはもういいから...ゆっくり寝てろよ...



「琴子ちゃん。」

...え...

「琴子。」

「大丈夫か。」

「もう痛くない?盲腸だったのよ。薬でちらしたから、へっちゃららしーわよ。夜には帰れるって。」

「もーひやひやさせやがって。直樹君から電話があった時はとびあがったぞ。」

「い...入江くんは...直樹くんは?!」

「うちに電話入れてくれてから、T大に行ったでしょ。今頃試験受けてるわよ。

 きっとまた一番とって帰ってくるから、心配しなくていーの...」

ガチャ

「あっ、来てたの?」

「お、お兄ちゃん、T大...へ、行ったんじゃ...」

「腹減ったんでメシ喰いに。」

「い、入江くん。じ...じゃあ、じゃあ。」

「T大は受けてないよ。」

「う...受けてない?あ、私、私..私のせいね...私のせいで受験遅れちゃって...

 私がおなかなんか痛くなっちゃって...いっつも私のせいで...私のせいで...

 入江くんの人生が狂っちゃう...ううっ...うえっ...うっく...」


~To be continued~