文化祭まであと少し。

ラスト2日間は、終日勉強をせずに、クラスごとに準備をするようだ。息子は、昨年まではリーダー的な立場にいた。

 

 

 

今年は、リーダーをしなかった。勉強に費やしたいからだ。一度始めると止まらない性格だと分かるから、楽しいことには距離をおこうとした。

 

 

 

でも、本当はリーダーをしたい。文化祭も楽しみたい。息子が一歩下がるのを見て、昨年、準備に協力しなかった生徒がリーダー役を名乗りでたようだ。意外なリーダーの誕生だ。

 

 

 

彼は、綿密に計画を組まず、部活に夢中で、用意をなかなか始めない。誰にも指示をせず、クラスメートも少しずつ準備をしなくていいのか? と心配し始めていた。

「あいつ(息子)にはリーダーになってほしくない」

息子からの非難が怖いのか、裏で息子を悪く言ってばかりいる。昨年、彼がサボっていた時に、息子がはっきりと彼に注意をしたから、その恨みなのだろうか。

 

 

 

息子は、悪く言われてもずっと我慢していた。

「リーダーは、思ったように威張れる者」だと彼は勘違いしてしまったらしい。息子への言葉が、次第に尖り出し、息子の心に刺さり始めた。周りのクラスメートたちにも、同調する空気さえある。

 

 

 

息子は、昨日、とうとう限界に達したようだ。

連日、下痢をし続けたお腹は、もうこれ以上悪くなれないくらい弱ってしまった。ストレスをぶつけて、自分を壊せる身体さえなくなってしまった。あとは、心を壊すしかない。

 

 

 

息子の心の中で、限界のベルが鳴った。

気づくと学校を飛び出し、スタバにいたようだ。

2時間近く過ごしていた息子は、なぜ私に電話をしなかったのだろう? 心配をかけたくなかったのだろうか? その2時間をどんな心で過ごしただろう? 

どんなに悔しかっただろう?

 

 

 

「ずっと学校に来なかった子が、文化祭の準備だからって学校に出てきたんだ。その姿を見て、文化祭の力ってすごいなって、思ったんだよ。でも、それを見て、別な子が裏で悪く言っていたのを聞いたんだ。僕は、このクラスメートたちとは同じ心になれないって思ったんだ」

 

 

 

担任は、何となく気づいたら学校の先生になっていた「何となく先生」

先生に、生徒たちの心の闇は見抜けないだろう。

私が電話をしても、「はい」「はい」としか言わなかった。ただ黙って聞いているだけ。話をしても、心が跳ね返されてしまう。

 

 

 

息子がいた中学校では、こんなことはなかった。

いつも温かな空気が流れていたのを思い出す。

息子の高校は、心がない生徒が多い。優秀かもしれないが、勉強ができること、一流大学に入ることが人としての成功なのだろうか? 

 

 

 

このまま息子が学校に行けなくなるかは分からない。不登校になってもおかしくないくらい、変な高校だ。

本当は、先生たちに親身になってほしかった。でも、そんな温かな高校ではない。




塾なんて行くな! と塾を嫌ってばかりいる。生徒の親が真剣に働く場所を、悪く言っていることに気づいていない。




息子が小学生の頃、トラブルに巻き込まれる度に、息子に問いかけていたことがある。

「何かその子を怒らせることをしなかった? こっちに悪いことはなかった?」

まるで息子の行動を疑うかのように、真っ先に私は聞いていたそうだ。一番辛いのは本人なのに、その本人に、事実確認ばかりしていた。

 

 

 

だから、今は、息子が正しい判断をしていると信じることにしている。息子なら、心のフィルターを通して物事を見つめられるはずだ。

息子が学校を飛び出したのだから、余程のこと。息子がワガママを言ったのではない。




息子を信じ、高校生最後の文化祭は、欠席することにした。このままでは、心が壊れてしまう。学校が守ってくれないならば、親が守るしかない。

 

 

 

学校は無法地帯。

ひどいいじめで心が壊れても、壊した相手は罰されることはない。だから、私は学校が嫌いだ。

 

 

 

「こんな学校から抜けるために、前を向いて勉強でもするよ」

息子は、少し元気のない笑顔を見せた。





息子が、息子らしくいられる場所に、どうか今度こそ導かれますように。