人には人の幸せがある。

それぞれの幸せの道が決まっている、と言ってもいいのかもしれない。もしかしたら、生まれる前から、こんなことをしたいと決めてくるのだろうか?

進むべき道を歩めば、追い風が吹く。

でも、そうでない道を歩めば、向かい風が厳しい。

 

 

 

昨日は、久しぶりに母と二人きりでランチに行った。母は自然な場所が好きだ。だから、木々の緑が豊かな古民家風の蕎麦屋を選んだ。




「こういう時間を過ごしていると、去年は心が痛くてね……やっと普通に楽しめるようになったんだ」

母と順番を待っていたとき、やっと心の中を話せるようになった。ずっと心配をかけたくなくて、1年間、母には心の負担をほとんど語ってはいなかった。


 

 

昨年は、息子がたった一人で浪人していた。

だから私は、休日にどんな場所に行っても、何をしていても、いつも心が重かった。

だから、できるだけ息子の苦しみを感じないよう、ひたすら打ち消す努力をしていたように思う。

 

 

 

浪人生がたくさんいる予備校に行けばいいものを、息子は現役生しかいない塾の中で、自分に負荷をかけて浪人する道を選んだ。

現役生が来るまでは、自習室にはほとんど一人だけ。そんな寂しい自習室の中で、毎日一人で勉強をする日々だった。

 

 

 

おそらく、息子は生まれる前に、東大を志望してはいなかったのだろう。その道には、多くの向かい風が吹き荒れていた。現役の頃は、東大に熱をあげるあまり、他の大学が全て不合格となり浪人となってしまった。塾内でも誰よりも勉強したのに、たった一人だけ浪人した息子が、あまりに悲惨な結果となり不憫でならなかった。

 

 

 

浪人生活が、何を意味していたのか? それは、これからの人生の中で、答えを得ていくのだろう。無駄なように見えた苦しい1年だが、大学の勉強という点でも、今は息子に余裕を与えてくれているようだ。

 

 

 

だからこそ、息子は今、少しだけ勉強以外の世界を見始めている。

まずは、生活の日々の苦しさから息子はアルバイトを探し始めた。曜日が固定されているからと、塾の面接に行ったようだ。自分が与えてもらったことを、今度は人に返していきたい。

今の勉強法があるのは、ただ「点数だけの学び」を与えられなかったから。息子はそう感じている。

 

 

 

新しい塾の中は、とても活気に満ち溢れていたらしい。私が働いている塾とは、全く違うと話す。そんな別世界の中で、息子が新しく出会った人と話す姿が、少しだけ羨ましい。

 

 

 

そして、大学生になってからやってみたかったことにも挑戦し始めた。文化祭の実行委員になりたかったようだ。昔から、息子は勉強よりも学校行事に燃えていた。




いくつか部門があり、息子が希望する部署に入れるかは運次第。息子は、自己推薦文として、中学時代に生徒会長として240人を束ね、初めての「生徒だけの運動会」をつくり上げたことを書き添えた様子。さらに、幼い子どもたちへの企画をしたいと書いたという。

 

 

 

幼い頃、私は息子と科学館へ何度か足を運んだ。

そのときに見たものが、息子の記憶の中にずっとある。そういう小さな頃の体験が、科学への興味につながると息子は信じている。だからこそ、今度は自分が小さな子たちへ与えたいという。

 

 

 

息子の強い気持ちは、先輩たちの目にとまり、人数的には別な部署にあてがわれるはずだったようだが、先輩たちが、息子の熱意を汲み取ってくれたようだ。実際に行ってみると、息子の名前をすでに先輩が覚えてくれていたことで、先輩たちの裏での優しさを知ることとなったようだ。

 

 

 

ギフティッドの特徴でもあるリーダーシップ。

これからは、「受験」という自分への縛りもない。

どのような経験をして、自分らしさを表していくことだろう?

4年間の受験勉強の経験があるからこそ、どんなに苦しいことでもやり遂げる自信があると話す。苦しみも、決してマイナスなことばかりではない。

 

 

 

息子は、やっと歩むべき道の上を歩めたのだろうか? 決して悩みがないわけではないけれど、追い風が吹いているようにも思える。これから、どんな大学生活を過ごしていくことだろう?

 

 

 

止まった時間が動き出したかのように、息子が少しずつ「息子らしさ」を出し始めている。

 

 

 
 
 
 
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