一輪でいいから、お花を届けてほしい。

彼にお願いをした。




頭痛と不眠に苦しみながら、毎日寝込んでいる。

彼とも逢うことができなくなり、そんな私が望んだものは、花だった。 




フラワーセラピーというものもあるらしい。

花が心に与える癒しは、色や香りの他にもある。無言の生きる力だ。




淡いピンク色は、私の心が望んだ色に思えた。見ているだけで癒される。

心が花を求めている。




花束を受け取ると、彼の心までもが伝わってくるように思えた。まるで彼がそばにいてくれるような気持ちになり、見ているだけで癒される気がした。




急いで花瓶を探し、リボンをほどく。花の香りが部屋中に広がり、生きている力が伝わってくる。半分生きていないような私には、普段は感じることがない「花の生きる力」が感じられた。




花は、黙ったまま静かに癒しを与えてくれる。

ふと見ると、彼からのメッセージに気づいた。

「ゆっくり休んでください。

   逢える日を楽しみにしています。」

破けないよう、そっとセロファンからメッセージカードをはがした。




はがしながら、涙が出る。

短いメッセージの中から、彼のいつもの優しさが伝わってきたからだ。

なぜ、自分の身体が思うように動かないのだろう? なぜ、こんなになってしまったのだろう?




こんな状態になってから、彼への気持ちが分からないことがあった。全てに心が動かないからだ。幸せなのか、なんなのか分からないことが何度もあった。それでも、花の生きる力に触れ、彼のメッセージを読むと、心が動いてくる。しばらく涙が止まらなかった。




逢えないから悲しいのか、働けなくて辛いのか、花がありがたいのか、彼の気持ちが温かかったのか、何がなんだか分からなくなりながら、一人でしばらく涙を流した。




花は華やかなイベントに使われる。

でも、本当は、弱った人の心に寄り添える優しさを持っているのかもしれない。




心の健康を失って、今まで見えなかったものが見えるようになった。元気な私なら、花から生きる力を感じることはなかったかもしれない。




そして花を飾りながら、人の優しさに気づくことができた。彼は私にただ言われたからと、無感情に送ったわけではないだろう。彼からの、言葉ではないメッセージが、傷んだ心に響いてきたからだ。




まだまだトンネルの中にいるけれど、きっとこの日感じた様々な感情を、私は決して忘れることはないだろう。