そういうこともあり、今はいろいろなミス対策やインシデント対策に関する書籍を読んでいる。その中でこれは少し毛色が違うかなと思いつつも手に取っているのが新潮新書の「ミッドウェー海戦」である。上下巻の構成でかなりの長編。これはミスやインシデントというよりは本当は失敗の教科書かもしれない。
日本海軍の真珠湾攻撃からわずか半年でミッドウェー島攻略の作戦が行われる。結果的には日本軍の大敗北で、海軍の虎の子空母四隻が米海軍二隻の空母に屠られてしまった。真珠湾攻撃から太平洋ところ狭しと暴れまくった日本海軍が、開戦後わずか半年で大敗北となってしまった。
戦力において圧倒的有利といわれた日本海軍が敗北してしまった理由は色々とあるが、私自身この本を読んで思ったのは、作戦目標を一つに絞りきれなかったことにあると思う。二兎を追うものは一兎をえずなのだ。日本側はこの作戦の主軸をミッドウェー島攻略としていたが、もし敵空母が発見できた場合これも殲滅する、としていた。対する米軍は日本機動部隊の殲滅と目標を一つに絞り込めている。つまり日本側が戦力を二分するのに対し米側は全ての戦力を投じて戦うことができる。この差は大きい。
また、他の敗因としては日本軍部の驕りである。まずミッドウェー島攻略、ひいてはアメリカ海軍を舐めていた。連戦連勝の帝国海軍が負けるはずはないと信じ切っていたことにある。実は日本側は敵空母殲滅も攻撃目標には加えていたものの、アメリカ空母はミッドウェーには来ないと信じ切っていた。先の珊瑚海海戦で米空母は二隻とも中破以上の被害が出て、まず海戦には出てこられないだろうと予測していたのである。これには米側の欺瞞情報による誘導もあった。
しかしなぜ日本側はここまで驕りが全面に出てしまったのか。先の戦闘で見せた航空機戦力の集中投下による圧倒的な破壊力が、日本側の参謀部に絶対の力を得たと錯覚させたのかもしれない。対する米側は残された戦力は空母のみとなって他に選択肢がないということにはなったが、それが残された大きな戦力という気づきにもなった。力を見せつけたことでアメリカ側にもヒントを与えてしまったのは皮肉としか言いようがないだろう。
仕事の参考にするにはスケールが違うかもしれないが、一度ちゃんと読みこんでみたいと思っていた。今は上巻の終わりのほう。下巻より大敗の始まり、残された飛龍攻撃隊の反撃が描かれる。

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