『塩狩峠』 | 現在と未来の狭間

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文芸と自転車、それに映画や家族のこと、ときどき人工透析のことを書きます。

三浦綾子さんの『塩狩峠』を毎日少しずつ読んでいる。

三浦さんの作品を手に取るのは10年ぶりだ。

自分はキリスト教も、他の宗教も特定に信じているものは無いけれど、作品に出てくる三浦さんの宗教観というか、信者としての考え方は嫌いではない。

人間はそんなに強くない、いろんな悩みや苦しみによって左右される。不動の心など無いから、神にすがるのだというメッセージは、自分には素直に感じられる。宗教が絶対とは思わないけれど、生きていくための宗教観や考え方はあって良いのだろうなって、思う。

三浦さんの文章は優しい。それは分かりやすいと言っても良いのだけれど、新聞小説って万人に読まれるものだから、『氷点』で養われたものなんだろうなって思う。それこそ若い人からお年寄りまで受け入れられた実績がある。

人間の気持ちや心の動きを平易で分かりやすい言葉で表すって、並大抵の事ではない。住井すゑさんの『橋のない川』も文章が優しい。でも、人のあり方とか、生き方が克明に描かれている。やさしい言葉で人生の深みを表している。それは宗教にしても被差別部落にしても、弾圧という大きな壁があって、そこから人生の意味とかを深く考え、その意味を他の人たちにも分かって欲しかったからじゃないかな。

そう言う気持ちで小説に取り組むのって素晴らしい事だ。師である小川国夫先生が仰った抱きとめていたいテーマがあるっていう事だ。

自分も小説に取り組む時、そういう気持ちが無いか、自分の気持ちをよく見つめ直さなくてはと思う。


私信です。

カンの良いあなたの事なので、もう気づかれちゃったかも。ちょっと体調を壊しました。
でも、回復に向かってますのでご心配無く。