日本原産の植物「わさび」

特有の辛さと爽やかな香りをもち、

今や世界中に知られ、日本を代表する香辛料となりました。

そんなわさびについて今回は徹底解説していきます。

 



●わさびの日本史

●わさび=日本の理由

●わさびの辛みはどうして生まれるのか!?

●わさびの効能

●わさびの種類

●わさびのおろし方

と順に説明していきます。

 

わさびの日本史

 

わさびは日本原産で、かつて深い山奥に自生していたものです。

 

平安時代に記された「本草和名」薬草辞典 の中に、日本で初めてわさびの記載があります。

「葉が葵に似る故にこれを名付ける。深山に生える」 と解説し

「山葵」と書いて「わさび」と読むのだと紹介されています。

 

食用の歴史は非常に古く鎌倉時代の「著聞集」に丹波の桑原で野生のわさびを採ったことが載っています。

また禅宗寺院の精進料理で自生のわさびを食用した、との記録も残っています。

 

栽培が行われるようになったのは江戸時代、徳川家康の時で、当時駿河(静岡)の有東木というところで栽培したのが始まりです。

家康は、わさびは香り、辛み、甘みが優れていると大いに気に入り、 門外不出の天下のご法度品にしたそうです。

 

刺身にわさびという組み合わせは室町時代中期が始まりで、

江戸時代に醤油との組み合わせが確立されました。

寿司にわさびも江戸時代で、最初は「サバ」の押し寿司に使われ、やがて鮨の中に入れる握り寿司に発展していきます。

黒船のペリー提督が平目や鯛の刺身にわさびを添えて食したという記述があるのも面白いことです。

外国人としては初めてのことでした。

 

「そば」とわさびの組み合わせは、安土桃山時代といわれ、文献としては江戸時代初期の「料理物語」に「そば切り」の薬味として紹介されています。

 

わさび🟰日本の理由

 

そもそも、なぜわさびは辛いのか!?

不思議ではないですか。

生物は生き残るため、また子孫を残すために進化していきます。

わさびはその方法として、根から他の植物の生育を阻害する物質を分泌することで、生き残ろうとしたのです。

その物質こそがわさびの辛み成分のアリルイソチオシアネートです。

 

ここが面白いところなのですが

他の植物との競争に勝つことはできたのですが、自身の辛み成分によって、自家中毒を起こして、自身もあまり大きくなることができなかったのです。

それが野生のわさびです。

そこで、根のまわりの辛み成分を、絶えずキレイな水で流すことによって、自家中毒を起こさない環境を作りだし、大きく育つようにしたのがわさび田による栽培です。

そのため、わさびは水のキレイな場所、清流が豊富な場所であることが不可欠なのです。

 

わさびは今もそのほとんどが日本で栽培されていますが、

これは、日本は世界的にみても圧倒的に水が綺麗で豊富な国だからです。

わさびは肥料などを必要とせず、水に含まれる養分によってのみ生育するのです。

日本の圧倒的な高品質の水なくして、日本のわさび栽培は成り立たないのです。

 

その中でも清流が多く、水温の変化が少ない、安曇野(長野県)や伊豆(静岡県)が名産地とされています。

わさびはデリケートな植物のため、環境に大きく左右され、大量生産も難しいのです。

 

わさびの辛みはどうして生まれるのか!?

 

わさびは鼻に抜けるツンとする特有の辛みがありますが、すりおろすことによって辛みが生まれるのです。

すりおろすと細胞が壊れ、シニグリンという成分とミロシナーゼという酵素が触れ合います。

この酵素の力によってアリルイソチオシアネートという辛み成分ができるのです。

 

シニグリン(わさびに含まれる成分)+ミロシナーゼ(酵素) →アリルイソチオシアネート(辛み成分)

 

わさびは刻んだりせず、必ずすりおろします。

これは酵素の反応が活発に起きるためには、酸素とたくさん触れ合うことが条件だからです。

わさびの表面積が大きければ大きいほど効果的に酵素が働くため、キメの細かいおろし金でおろしたり、鮫皮が使われたりするのです。

また、おろしたわさびを包丁で叩くなんてこともプロの現場では行われますが、同じ理屈です。

 

酵素・ミロシナーゼというのは、わさびの根茎(わさびの本体部分)の表面に多く含まれます。

ですので、表面部分を削り過ぎると、辛みの発生が弱くなってしまいます。

 

ちなみに

アリルイソチオシアネートの辛みは、わさびの他に、辛子や大根もこれにあたります。

唐辛子の辛み成分はわさびとは違い、カプサイシンという成分です。

 

わさびの効能

抗菌効果

わさびの辛み成分、アリルイソチオシアネートは強い殺菌力、カビの繁殖を抑える効果があります。

雑菌の繁殖を防ぎ、食中毒を防ぐのに役立ちます。

そもそもわさびが刺身に添えられるようになったのは、この力があるためです。

学者のオットー・ショウブル博士は「わさびは太陽につぐ殺菌力をもつ」とも言っています。

 

消臭作用

特有のツーンとする刺激で、瞬間的に味覚と嗅覚を麻痺させ、生臭みを感じさせないように働きます。

そのため、刺身には打ってつけなのです。

どんなに鮮度がいい魚であっても、そのままでは生臭く感じてしまうことはあり、そこでわさびが大活躍してくれるわけです。

 

食欲増進

消化器官の中に入ると消化器壁を刺激し、中枢神経の覚醒を促し血行を盛んにすることで、唾液の分泌、消化液の分泌を高め、消化吸収を促進させます。

また、わさびに多く含まれる香り成分が、食欲増進にも繋がっているといわれています。

 

わさびの種類

 

●本わさび

本わさびは、沢わさび(水わさび)と畑わさびにわけられるます。

 

沢わさび(水わさび)

湧き水の豊富な山、清流の流れる渓流地域で栽培される

本わさびの大半が沢わさびで、水の綺麗な長野県、静岡県が生産の9割を占める。

辛味と香りがすぐれているので高値で取引されます。

 

畑わさび

水辺ではなく畑や山林で栽培できるよう品種改良されたもの。

湿気の多い涼しい土地の畑で栽培される

沢わさびに比べ、細めでひげ根が多く、価格も低め。

 

わさびの本体(根茎以外)

 

花わさび

花を咲かせるまえのつぼみを収穫したもの。

2〜3月が旬。

爽快な辛味と、独特の苦味。

 

葉わさび

わさびの根茎の先から伸びてくる若い葉を収穫したもの。

冬から春にかけて出荷される。

 

●西洋わさび(ホースラディッシュ・山わさび)

本わさびと西洋わさびは全く別の植物で、西洋わさびは東ヨーロッパ原産です。

辛みの成分は本わさびと同じですが、含有量が多く、粉わさびや練りわさびなど、加工製品の原料に多く使われます。

別種の植物なので、風味、香りの成分は異なります。

ローストビーフや、ソースなんかに使われることが多いです。

日本には明治時代に入り、主に北海道で栽培され野生化したものもあります。

 

●チューブわさび

チューブ入りわさびの大半は、西洋わさびの根を粉末にし、葉緑素を加えて緑色にしたものをベースに作られています。

そこに本わさびを加えたものを「本わさび入り」「本生わさび入り」と表記しているのです。

「本わさび100%」と表記されているものでも、辛みや風味が飛ばないように添加物が加えられています。

 

わさびのおろし方

 

辛み成分の素となるシニグリンは、 真ん中、上端、下端の順に多い。

色は上端が美しいが少し水っぽい。

下端は、他の箇所に比べると辛み成分も少なく、色も悪いので造りではなく、 和え物等に使うのがおすすめです。

 

わさびは葉が付いていた上端側から、目の細かいおろし金や鮫皮を使ってゆっくりおろします。

前述した通り、 わさびは、その細胞の中にあるシニグリンに、 酵素ミロシナーゼが働くことで辛くなります。

そこで、辛みを出すためには、その酵素を空気に十分に触れさせて活性化し、辛みを生成させるために、「の」の字を書くように、時間をかけておろすのです。

おろした後、包丁で叩くと、より香りや辛みが引き出されます。

 

おろした直後は、酵素による分解が進んでいないのであまり辛みを感じません。

おろしたわさびを置いておくと辛みが出てきますが、逆に時間が経ち過ぎると辛み成分が揮発してどんどん辛みが弱まっていきます。

ですので、辛みと香りを生かすためにも、必要な量をその都度おろすのが望ましいのです。

すりおろして置いておく際は、辛み成分が揮発しにくいように、サビチョコ(わさびを入れる容器)に入れてふせて置いておきます。

 


参考までに、

砂糖を少量つけておろす方法があります。

これは砂糖の脱水効果で、わさびの細胞から水分を吸い出し、香りも引き出す。

同時に酵素が働きやすくなり、辛みも多く生成されるということです。

わさびに少量付けておろしても、おろしたわさびに少し加え、 包丁で叩いても同じ効果が得られます。

 



そして、稀に表皮から中に黒い墨のようなものが入ったわさびがあります。

これは「スミイリ病」というものにかかったもので、すりおろすと黒点が混ざり、辛みも弱まってしまいます。

 

最後に、わさびを保存するときは

湿らしたクッキングペーパーに包んでポリ袋に入れて冷蔵保存(0〜5°C)するのが良いです。

 




普段何気なく食べているわさびも奥深いことがわかったかと思います。

今回紹介した、知識を活用していただければ幸いです。

ではまた、次のブログでお会いしましょう!

ありがとうございました。

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