この作品は子供の頃、学校の図書館から借りてきて読んだことがある。

よく行く古本屋の棚で見つけたので迷わず手に取りレジに向かった。

なんと約60年ぶりに読み返した一冊だ。

この短編小説が今昔物語の中に書かれている話がベースとなっていることを知ったのは大人になってから。


平安期、庶民は度重なる天災や飢饉で苦しむ中、ひとりの下人ともうひとりの老婆とが羅生門の中で遭遇。

お互いに生きていくために、善悪の狭間で葛藤し心が揺れ動く。

「貧すれば貪する」の言葉通り、下人も老婆も生きていくために利己的となり、悪事に手を染めてしまう。


これは、もともと「貧すれば鈍する」(貧乏になるとどんな賢い人間も愚鈍になる)という諺が正しくて、これを太宰治が誤用して「貧すれば貪する」(貧しくなればなるほど欲深になる)と書いたと言われている。


この羅生門の場合は、後者に該当する。

生きていくためには殊の外自分勝手になり、利己的な考えから正邪の判断を失い、遂には悪事を働いてしまう。

誰にでもある人間の弱さやずる賢さを古い説話をもとに作者はわかりやすい短編小説に置き換えて読者に訴えかけている。


私自身、古希を過ぎるこういった「ずる賢さ」は既に影を潜めてしまったように思えるが、「弱さ」は依然として残っているような気がする。

今回、「羅生門」を読了したことにより、これから先は利己的な考えが再び芽生えないよう改めて留意しながら一日一日を慎ましやかに過ごしていこうという気持ちがより大きくなった。