10月28日



遠征先のオーストリーから札幌に帰った日の事であった



とりあえず犬に会いたくて実家に向かった


20℃の成田空港を経由して新千歳空港に降り立った私は

まだTシャツのままだった


周りにはコート姿にマフラーを巻いた人ばかりであったが

とりあえず電車に乗ろうと上着も着ずに道を急いだ



新千歳空港から琴似行きのJRに乗り込んだ私は



指定席のD2番を探しキョロキョロと探し



4号車の前方にそれを見つけた



私はその席に座ると隣に誰もいない事をいい事に

旅行用のキャスター付きのカバンを隣の席の床に広げ、

遠征に出発する際しばらくは使わないと思いしまっておいた

日本円の小銭を入れた袋を探した



探してると私の眼前に二人の綺麗な女子(おなごと読む)が現れた



「あれ?Dの12番じゃなかったっけ??」


と右側にいた女子が言ったので左にいた女子がコートのポケットから

とっさに財布をとりだして切符を確認する仕草を見せる



するとその手にしてる財布からスルリと一枚のカードが落ちてきた



私のカバンの上にひらりと落ちてきたので

それを拾い手渡した



あっ!!!すいませんっ!!!!


と小声で言い奪い返すように私の手からカードをとった



その後で右側にいた女子の顔をみて同じく小声で


「はずかし~~」


といい照れたように笑っていた



ちらっとしか見ていないが

多分それは女性下着店のポイントカードだったからであろう



だがそんな事ははずかしくない



母と姉二人に囲まれて暮らしていた私には

そんな事はなんとも思わないのである



「あれ、でもやっぱりここだよ!?」




私はその声に驚きとっさに今自分の座っている席の番号を確認すると


D12・・・・・・・・・・・・・・・・・



「すいません、間違えましたっ!!!!!」


この言葉を言い放ち


急に恥ずかしくなった私は急いでカバンを閉めて立ち去ろうとしました



ところが勢いよくカバンのフタを閉めた瞬間 


上のフタのポケットに入れてあったものが


勢いよく飛び出し


女子のスネに直撃してしまいました



「痛っ・・・・・・・・・・・・」



またしても小声で女子は言いました




勢いよく飛び出したものはなんと

成田空港を飛び立つ前に買った




どら焼き(栗入り)



であった




2個入りだったので一つは食べて

もうひとつはしまっておいたのである



きっと彼女は若いので短い人生ではあったが

これ程までに勢いよくどら焼き(栗入り)をスネにぶつけられた事は

初めての出来事であったろう



そしてこの先の人生でこれほどまでの勢いで

どら焼き(栗入り)をスネにぶつけられる事は二度とないだろう



季節外れのTシャツの男に栗の入ったどら焼きを思いきりスネにぶつけられ

挙句の果てにその男は席を間違えて座っていやがったとなれば

十分伝説級の話題である



時が止まったように感じた



10秒は経ったと思ったのだがきっと一瞬だったのであろう


「スイマセン。」


そう言って彼女のスネを痛めつけたどら焼き(栗入り)を拾い上げ

スネにどら焼き(栗入り)をぶつけてしまった事をさらっと謝り

その場を立ち去ったのである


何とも言えない切なさが一瞬にして私の心を覆い


顔から火を出したいくらい恥ずかしかった



私はそんな気持ちと闘いながら本来の自分の席に座り

上着を着た



約30分後、目的地に着いた時に自分のカバンを上の棚から下ろそうと思って手を伸ばすと


私の来ていた上着のマジックテープの部分が隣に座っていたおじさんの


髪の毛をかすめた



少しずれた



おじさんはヅラだった





私は「あっ・・・・・ず、、、ずれた・・・・・・・」


と思ったが見なかった事にして知らん顔しておいた


おじさんは誰かにその瞬間を見られていないかと

頭をおさえながらかなりパニクっていた



あんなに目が泳いでる人を久々に見た



下着屋のカードを落とした女子から始まったこの



「恥ずかしい出来事バトン」



ウィルスのごとく伝染していってるように感じたが



ヅラおじさんは誰にうつしたのか気になるところではあるが



一つだけ確実に言える事は



この3人の恥ずかしい思いをした人の中で

一番恥ずかしい思いをしたのはこの私であることは間違いないであろう



今度から私の事を



づらとりなおちゃん



と呼んでください




湯浅直樹


PS:湯浅直樹は未だ独身であります

    単なる子供欲しい欲しい病です