合格no.19

  
和解契約と錯誤
当事者が和解契約(いわゆる示談)をした場合、その争いの目的である事項(例:甲は乙に金50万円の債務を負う)に錯誤があったとき(実は債務の額は金30万円だった)でも、甲は錯誤無効の主張ができない(民法696条参照)。これは、いったん和解をしてお互いに矛を収めた以上、紛争の蒸し返しが許さないことを意味する。
しかし、それ以外の錯誤を原因として、和解契約が無効となることはある。
たとえば、債務の額(イコールその争いの目的である事項)に争いのない事件において、和解により債務者がジャムで代物弁済をすることとなったが、案に相違してそのジャムが粗悪品であった場合に、錯誤による無効を認めた判例がある(最判昭33.6.14)。
 
 
民法94条2項類推適用
通謀虚偽表示の問題(重要)
民法94条(虚偽表示)
2項 前項の規定(通謀虚偽表示)による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。
○空のバスケット
民法94条2項はスジを曲げる
Cが善意であれば、ないはずのリンゴが生じて、Cは所有権を取得できる。
→ 民法94条2項は「無から有を生じさせる」テクニック。これは、通謀虚偽表示という世の中を惑わす行為をしたAおよびBへのペナルティーであり、虚偽の外観を信じたCの保護をも目的とする条文である。
「Cの無過失が要求されるか」
民法94条2項は、善意の第三者の保護規定である。では、CがAB間の虚偽表示を知らないことについて過失がある場合にCを保護すべきか。
民法は一般に取引の安全を主張する者には、善意のほかに無過失を要求する。しかし、民法94条2項については第三者に無過失を要求しない。(大判昭12.8.10)通謀虚偽表示をした側の帰責性重大だから、過失ある第三者も保護すべきなのである。
☆Cに対抗要件が要求されるか
要求されない。つまり、Cに登記がなくてもCの勝ちである。
 
民法93条ただし書による無効と善意の第三者
心裡留保による意思表示について、民法93条ただし書が適用され法律行為が無効とされる場合、これについて善意の第三者には無効を対抗できないとされている。民法94条2項を類推適用するのである。




 
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