合格no.31☆☆
 
 
☆一物一権主義

一物一権主義は、2つの意味で使われる言葉である。

1.物に着目する場合
「1つの物」に注目する。
たとえば、譲渡担保という形で、動産の集合体(たとえば、倉庫の中の商品一式)をまとめて担保に供することがある。
これは、集合物を1つの物とみなすというカタチで、一物一権主義の「一物」についての例外的な考え方である。

☆譲渡担保
担保目的物を債権者に譲り渡す方法による物的担保のこと。

2.権利に着目する場合
「1つの権利」に着目する。
たとえば、同一不動産に、複数の抵当権を設定することができるが、これは、一物一権主義の「一権」についての例外的な考え方である。

*一筆の土地の一部とは
土地は、人工的に区分けされ、一筆ごとに登記される。
しかし、民法上、この一筆の一部を売却することもできる(実務では図面を書いて売買契約書を作成している)。
また、一筆の一部を占有して時効取得をすることも可能である。
しかし、これらの物権変動を第三者に対抗するためには、土地家屋調査士に分筆の登記をしてもらい、その上で、権利移転の登記をする必要がある。
分筆とは、一筆の土地を複数に分けることをいう。

 
○登記請求権について
登記請求権とは、登記権利者が登記義務者に対して、登記申請に協力するよう請求することができる権利のことである。

登記申請に協力するよう請求するということの具体的な意味は、登記義務者が登記に協力しないのであれば、裁判所に訴えを提起し、判決を取って登記を実現してしまうことができるということである。
たとえば、土地の売主が登記に協力しないのであれば、買主は判決により自己名義の登記を実現することができる。

参考)
登記引取請求権
実体法上、売主が買主に登記を持っていけという権利もある。
これを、登記引取請求権という。
実務上、登記簿上の所有者に固定資産税が課税されるので、すでに売った土地の登記名義が残るのは、この点で迷惑なハナシなのである。

登記請求権の発生原因には、3つのパターンがあるとされている。

1.物権的登記請求権
現在の権利関係との不一致を是正する権利である。
「オレが所有者だから登記をよこせ」というパターン。
→ 所有権に関する登記請求権のケースであれば、所有者でない者には認められない。
たとえば、A→B→Cと不動産が転売された場合、BはAに対して登記をよこせと請求することができるが、この登記請求権は物権的なものではない。
なぜなら、請求時に所有者はBではない(Cである)からである。
 
2.債権的登記請求権
当事者の債権関係から発生する登記請求権である。
A→B→Cと不動産が転売された場合(所有権はCにあることになる)のBのAに対する登記請求権は、AB間の売買契約上の売主Aの義務として説明できる。
→ 債権関係がなければ認められない。
たとえば、A→Bの物権変動が取得時効を原因とする場合、AB間には何の債権債務関係もないから、この登記請求権は債権的なものではない。

3.物権変動的登記請求権
物権変動の過程、態様と登記が一致しない場合の登記請求権である。
A→B→Cと不動産が転売されてC名義の登記がされた後、強迫を理由としてAB間の契約が取り消された場合、BのCに対する所有権の抹消登記請求権は物権変動的登記請求権として説明できる。
このケースにおいては、Bは所有者ではない(Aが所有者である)ので、物権的登記請求権は最初から問題にならない。
また、取消しの遡及効で、BC間の売買も「なかったこと」になっているので、債権的登記請求権も観念できない。
そこで、B→C間の物権変動はなかった。だから抹消できるはずだという意味の抹消登記請求権が生じるのである。
これが、物権変動的登記請求権であり、その物権変動がなければ抹消登記を、あれば、そのとおりの登記を請求することができる。

しかし、物権変動の過程がなければ、そのとおりの物権変動的登記権は認められない。

たとえば、AB間の売買が無効であり、Aから二重譲渡を受けたCが、登記を得たBに対して移転登記を請求することができる(登記原因は真正な登記名義の回復)が、B→Cという物権変動は存在しないから、この登記請求権は物権変動的登記請求権ではない。
 

*賃借権の登記
賃借権には、借り手側に登記請求権が存在しない。
つまり、貸し手が任意に登記に協力しない限りは登記は不可能で、裁判に訴えて登記を実現する方法がない。
この点は、賃借権設定仮登記についても同様である。
その理由は、まず、賃借権は債権だから、物権的登記請求権はナイ。
次に、売買における売主の義務は、「ある財産権を移転すること」であり、そこには、その移転に対抗力を備えさせることが含まれる(これが債権的登記請求権の根拠となる)。しかし、賃貸人の義務は、「ある物の使用及び収益をさせること」にすぎず、その旨の登記をすることはこれに含まれないのである。


  


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