9月。最高気温が久々に30度を切った、涼しい晴れの日。
娘の幼稚園のお迎えに行ったら、園児たちに「もみちゃん、これ何?」と聞かれて指さされたもの。
土の地面のそこかしこに淡黄色の疎な長毛に覆われた黒い毛虫が這っていた。
これはッ!!昆虫食にトライしている私が、level 1.イナゴ→level 2.クロスズメバチ、と来て、次のlevel 3で食べてみたいと思っていた「モンクロシャチホコの幼虫」ではないか!
モンクロシャチホコはその幼虫がサクラやモモ、ウメ、リンゴなどバラ科の植物の葉を食べる蛾で、世間一般ではサクラを食害する害虫として扱われているようだ。
このthe•毛虫といわんばかりの姿から毒があるのではないかと恐れられがちであるが、毛も含めて無毒なんだそうだ。
で、なぜこのような毛虫を食べたいと思っているかと言うと、サクラの葉を食べたモンクロシャチホコ幼虫は桜餅の香り成分「クマリン」を体内に溜め込むので、食べると桜餅の香りがして美味しいんだそうだ。
サクラの木の上からモンクロシャチホコの幼虫がどんどん降りてくるのは、9〜10月に土中で蛹化するためなんだそうだ。
兼ねてから食べたいとは思っていたものの、実際に実物を目の前にすると、あまりの毛虫っぷりに食べようという意欲がものすごく萎える。これはどう見ても食べ物じゃないだろう…⁉︎
年1回発生なので、このタイミングを逃すと次に食べるチャンスが巡ってくるのは来年の秋である。
娘に、「これって食べられる虫で美味しいらしいんだけど、食べたい?」と聞いてみると、「食べたい食べたい♪」と言う。
仮に今回、私の意気地が無いせいでモンクロシャチホコを食べなかったとして、来年また娘に一緒に食べてくれるかどうか聞いてみるとしよう。6歳になった娘は、もしかしたら「は⁉︎食べるわけないじゃんキモッ!」「何言ってんだ、このババァ!?」とか言うかもしれない。天使の笑顔で無邪気に「食べたい食べたい♪」と言ってくれるのは今だけかもしれない。そうすると、私は永遠にモンクロシャチホコを食べられないかもしれない。
そこまで想像して、やはり今しかない、今日食べよう、と決心したのである。
園児たちは、毒がないと知ると興味津々で触る。
私も娘と一緒に触ってみると、淡黄色の長毛は予想に反して柔らかく、イモムシの表皮はスベスベ。逆撫でしても毛の流れが邪魔をしないのでスベスベ。まるでふにゃふにゃの体の長毛種の若い女子猫ちゃんのような触り心地。
娘は「きゃー かわいい〜❤️」と言っている。6匹つかまえられたので、私と夫と娘で2匹ずつ食べようね、と言って持ち帰った。
家に帰ってからも娘は可愛い可愛いと言って撫でている。情が移るからあんまり可愛がらない方が良いんでないかい?
私もなんだかこれを食べる気にはなれず、食卓の上に虫かごを置いたまま、調理に取りかかれずにいた。でも、置いといたってどうにもならない。自分で調理するしかないのである。
「あー かわいそう。。。どうしよう。」
とか言ってると、娘は「でもさー、食べるために採ってきたのに食べないで放ったらかして死んだらかわいそうだよー」と言う。
うん。でも、放っておいてもこの子たち、あとは蛹になるだけだから死なないんだけど。
「猫ちゃんみたいで可愛い❤️」と言うのに「早く天ぷらにして食べたい」と言う娘の気持ち、一体どういう気持ちなんだろう。
意を決して調理に取り掛かった。
ネット情報では素揚げがシンプルで食べやすそうだったので、素揚げにすることにした。サッと揚げるとクマリンの香りが残って、桜餅の香りとナッツのような味が絶妙にマッチしてとてもやみつきになる味なんだとか。
砂糖をまぶして食べると緑茶に合う和菓子の味に、塩をまぶせば桜の葉の塩漬けのようで相性抜群なのだという。
どっちも美味しそうなので、3匹は砂糖がけで、3匹は塩をまぶして食べることにした。
娘が「私もやりたい!」と言うので、足台に登ってもらい、揚げ鍋にイモムシを投入してもらった。
そうしたら、案の定なのだが、イモムシの水分が爆ぜて揚げ油が娘の腕に飛び散った。
娘はもうパニックである。
私も娘の応急手当てに必死で、鍋からイモムシを引き上げるのがだいぶ遅れてしまった。
引き上げたイモムシは、爆ぜてオレンジ色の中身が飛び出していて、スプラッターすぎて心の底から食べる気が失せる出来栄えだった。
でも、命を奪った以上は、感謝を込めて戴かなければならない。
私が食べる気が失せているのを悟られないように気をつけながら、「さ、食べましょ♪」と食卓へ持って行く。
「これはかりんとう、これはかりんとう…」と心の中で呟きながら、エイッとかぶりつく。
揚げ過ぎたせいか、私の大好きな桜餅の香り、クマリンの香りは皆無だった。ちょっと硬い皮と、中がスカスカでちょっとナッツっぽい風味の虫体。
私がかぶりついたのを皮切りに、娘もパクパクと躊躇なく食べ始めた。
そして、私と娘で3匹ずつ食べて平らげた。
美味しくはなかった。
夫が帰って来る前に、全部片付けて証拠を隠滅した。アレが食卓に上がったことがバレたら、色々と禁止令が出そうだったからだ。イモムシの飼育でさんざん怖がらせているので、あのスプラッターなモンクロシャチホコの素揚げを夫が見たら悲鳴を上げたに違いない。
あの揚げ鍋を使ったことも、モンクロシャチホコを揚げた油を再利用して晩御飯を作っていることも、全部夫には内緒。娘も何かを悟ったのか、モンクロシャチホコを食べたことをパパには話さない。極秘のうちに、昆虫食level 3を終えたのであった。
教訓: 昆虫食は、自分で調理すると美味しく出来ないこともあるので、なるべく市販品や誰か得意な人によって調理されたものを食べるのが良かろう。
都市公園のゆる〜いネイチャーガイド
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