11月某日、暖かかった秋に寒気が降りて来て大風が吹いた翌日、少し秋が深まった日のこと。
娘と一緒に都内の某公園へ遊びに行った。自転車を停めた場所の足元にふと目線を落とすと、アスファルトの上に鮮やかな黄緑色の物体が落ちているのに気付く。
これはッ‼️
去年から欲しいと思っていたウスタビガの繭❗️
武蔵野自然観察園の冬の企画展の展示物にするために求めていたブツである。
昨夜の大風で公園内のどこかから飛ばされて来たんだろうか、ちょうど私の足元に落ちてるなんて超ラッキー、誰か別の人の落とし物じゃないよね?など思いながら拾い上げる。
手のひらに乗せると若干重量を感じるけど、蛹のブルブルとした振動は伝わって来ない。空の繭だと思ったので持ち帰ることにした。
wiki先生に聞いてみると、ウスタビガの幼虫はサクラやコナラなどの葉を食べると書いてある。
繭を拾った場所の真上にはヤマモモの木が生えていた。
繭が付いてるこの枝は一体何の木の枝だろう。
一体どこから飛ばされて来たのだろう。
この繭の主はかなり用心深い性格のようで、繭を吊り下げている紐を何ヶ所も枝にくくり付け保険をかけている。賢そうである。
↑途中3箇所を枝にくくり付けている用心っぷり。
娘が森のようちえんで拾って来た木の実や葉っぱや草花などを一輪挿しの花瓶に活けて部屋の彩りにしてみようと、つい2日ほど前に花瓶を出したところだった。丁度良いのでウスタビガの繭を花瓶に活けてみた。
うん、彩り良し❣️
そのまま花瓶に挿してデスクの本棚の段上に置くこと2日目の真夜中。
いつも通り家族が寝静まった後にデスクに向かってイラスト制作をしていると、頭上からカリカリと音が聞こえて来る。目の前のウスタビガの繭の中からだ。え、中身入ってたんだ?
繭の出口はとても硬い。本当にこの硬い繭の中から出て来るのか心配したが、調べてみると硬い出口を酵素で柔らかくしてから出て来るとの情報あり。
時々チラチラと出口から何か出ているように見えるが、どうやらそれは出口を押し広げる頭の一部がチラチラと見えているらしかった。
そのうちに出口からなんかウサ耳みたいなのがついた黒いお目目が2つニュッと出て来て、ジーッとこちらを見ている。
↑グレムリンのギズモみたい
こちらの様子を伺っているというよりは、硬い出口を押し広げて疲れて休んでいるといった印象。それか、酵素で出口が柔らかくなるのをジッと待ってるか。だってカメラのフラッシュ焚いても引っ込まないから、周囲を警戒してって感じでは無い。
で、口辺りに透明な液体がキラキラ輝いているのが見える。これが口から分泌される酵素?これで出口を柔らかくしているのかな。
↑矢印の先端のとこに水滴が見えます
ウスタビガなどのヤママユガ科の蛾の成虫は口吻が退化していて、羽化してからは物を食べないという。酵素液を分泌する口はあっても吸ったり舐めたりする構造にはなっていないということか。顔はモフモフの毛で覆われているので目や口などの細かいパーツがどうなってるのかサッパリ分からない。
そうして少しずつ少しずつ出口を押し広げて虫体が露わになっていき、最後は足を繭から抜いて「どりゃあ〜〜〜!」と一気に出て来た。
↑モフモフ。うさぎみたいで可愛い。
思ったより小さい身体。
ウサ耳みたいな立派な櫛(くし)状の触角を持つこの子はオスのようである。
で、一部始終を見れたのだが、鱗翅類羽化撮影あるあるで、カメラの電池切れやSDカードの容量不足で羽化の瞬間、蛹から成虫の身体が抜け出る瞬間だけ動画を撮り逃すということがザラにある。今回も、そうでした。トホホ。
動画は撮れなかったがブレブレの写真はところどころ撮れた。
翌日、鳥に食べられてしまわないよう日が暮れて辺りが暗くなるのを待ってから娘と一緒に元いた公園に返しに行った。
無事にメスと出逢って新しい命を繋いでくれますように。
↑まぶしがるウスタビガさん
↑「フラッシュが眩ちぃ〜!」とでも言うかのように腕で目を隠していて超可愛い
↑夜の真っ暗な森の葉っぱの上に優しく置いてあげる4歳娘。良い子に育ってくれています。
↑羽を広げた姿。羽の真ん中の丸い模様のところは鱗粉が無く透明に透けているようだった。
昨年冬から欲しいと思っても「こんな都会にあるわけないよねー」と特に探しても居なかったウスタビガの繭。羽化の時、繭からちょっとだけ顔を覗かせてじっとしている写真をネットで見て「羽化見てみたいな」と憧れていたけど、そんな簡単に見れるわけ無いよねーと諦めていた。
たまたま足元に落ちてて拾って中身が入ってると思わずに持ち帰った繭、「羽化の瞬間見たるぜ!」などとは全く構えることなくただ部屋に飾っていて、たまたま真夜中までデスクで作業をしていたら羽化の瞬間に立ち会ってしまった。何このミラクル。
神様からのプレゼント❓こんな不思議な天文学的確率の巡り合わせが私には時々巡って来ます。
何なんでしょう。
最後まで読んでくださりありがとうございました