【ニュース】生活保護、どう見直す〈政策点検〉 | WELCOME HOME!(よつば事務所のブログ)

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藤枝市「司法書士・行政書士よつば合同事務所」のブログです。

以下、朝日新聞記事より。

http://www.asahi.com/politics/intro/TKY201212110881.html?id1=2&id2=cabcbcbc&re


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生活保護、どう見直す〈政策点検〉


【松浦祐子、有近隆史】衆院総選挙では、自民党を中心に生活保護を削ろうという動きが出ている。暮らしにどんな影響があるのだろうか。本当に削るだけでいいのだろうか。

■「弱い者いじめ やめて」

 大阪府内で生活保護を受けている女性(74)は、4畳半のアパートで一人暮らしをしている。

 20年ほど前、夫の暴力が原因で離婚した。離婚前に夫が自分名義で借りていた借金が約1千万円もあり、離婚後も住み込みの家政婦として返済に追われた。

 年金保険料を払う余裕はなく、年金は受け取れない。清掃の仕事で働いて月5万円ほど稼ぎ、それでも足りない数万円分の生活保護をもらった。

 だが、その仕事も70歳の時に高齢を理由に辞めさせられた。今は杖がないと歩けず働けない。生活保護で約6万9千円の生活費と約3万円の住宅費が頼りだ。

 「ぎりぎりの生活。弱い者いじめになるような見直しはやめて欲しい」。衆院選では生活保護の削減を訴える候補が多いことに不安を募らせる。

■保護費抑制の流れ

 自民党は、生活保護費を減らすよう求める急先鋒(きゅうせんぽう)だ。政策集で「生活保護の見直し(国費ベース8千億円)」「給付水準の原則1割カット」を打ち出した。

 民主党は公約で「生活保護の不正受給の防止」を訴える。そもそも野田政権は2013年度政府予算を決めるための概算要求基準で、生活保護の見直しが必要だとしている。医療、年金などの社会保障費のうち、具体的に見直しに触れたのは生活保護だけだ。

 背景には社会保障費の増加がある。高齢化で毎年1兆円ほどずつ増え、12年度の政府予算(一般会計)約90兆円のうち社会保障費は約26兆円にのぼった。

 政府予算の半分近くは借金(国債発行)でまかなっている。社会保障費の伸びを抑えないと借金がどんどんふくらんでしまう。

 そこへ、テレビなどが不正受給の増加を繰り返し問題にするようになった。

 自民党政権時代には、生活保護費を抑えるため、自治体の窓口に申請にきた人を厳しく審査して受給者を減らす「水際作戦」が横行した。必要な人が受けられず、餓死する人もいた。

 こうした問題を受け、受給しやすくしたところ、今度は悪用する人が増えた。不正受給額は06年度と比べて約39億円増え、10年度で128億円になった。ただし、生活保護費全体のうちの0.4%だ。

 不公平感もある。

 国民年金の保険料をすべて払った人が老後にもらえる基礎年金は、月約6万5千円(12年度)だ。

 一方、東京都23区内の高齢者単身世帯の生活保護(生活費)の支給額は月約8万円になる。ほかに家賃が実費で出るほか、医療費は自己負担しなくていい。

■削減だけでは不足

 では、生活保護を削れば問題は解決するのか。

 生活保護を受ける人は、景気悪化で企業が大幅な人員削減に乗り出した1990年代後半から増え始め、08年秋のリーマン・ショックで拍車がかかった。今は200万人を超える。削減を求める財務省幹部は「リーマン・ショックで景気が悪くなり、生活保護の受給者が増えた」と認める。

 さらに生活保護を受給する人の4割超はお年寄りが占めている。働けず、年金保険料を払っていなかったことなどで年金を受けとれない人たちだ。年金制度からこぼれ落ちた高齢者は年々増えており、生活保護が救っているとも言える。

 次いで障害や病気を抱える人らが3割超を占める。働くのが難しく、医療費はどうしても高くなる。続いて母子家庭が1割近くになる。生活保護を削減したり審査を厳しくし過ぎたりすれば、これらの人は一気に生活が苦しくなる。

 本当に必要な人が受けていないという現実もある。研究者の試算では、生活保護の支給水準より所得が低い世帯のうち、生活保護を受けている世帯は3割ほどしかないという。

 こうした実情からすれば、生活保護の削減だけでは問題は解決しない。

 働ける人をできるだけ早く復帰させるための雇用の確保、年金をもらえない高齢者に対応するために年金制度見直しを含めた改革、などが必要だ。また、最低賃金が生活保護水準より低い地域もあるため、この「逆転現象」の解消も進めなければならない。

 政府の社会保障費約26兆円は、年金が8.1兆円、医療費が8.6兆円と多い。社会保障費の伸びを抑えるには本来はこれらの見直しが必要だ。しかし、高齢者の票を期待したり、集票力がある日本医師会などの反発を気にしたりして削減を訴える政党は少ない。

 だれもが働けなくなったり生活の糧を失ったりする可能性がある。その時の最後の安全網が生活保護だ。削りやすいから削るでは社会の混乱につながる。

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■受けずに済む制度を

 《橘木(たちばなき)俊詔・同志社大教授(労働経済学)》 税を財源にしている生活保護は、納税者が「どのような人が受給しているか」に注目しがちだ。働く気がない人などが受けていると、制度に不信感を生む。必要な人が堂々と支援を受けられるようにするには、受益と負担がはっきりしている年金、雇用、介護、医療といった保険制度を充実させ、結果的に生活保護を受けなくても済むようにすべきだ。社会保障全体で制度を考えなければならない。

■支援届かない恐れも

 《吉永純・花園大教授(公的扶助論)》 生活保護は200万人の命を支えている大事な制度なのに、不正受給の報道が相次ぎ、バッシングが強まっている。ただ、不正受給は生活保護費の総額の0.4%に過ぎない。これを理由に引き締めれば、本当に支援が必要な人が受けられなくなるおそれがある。生活保護の基準はナショナルミニマム(国が保障する最低生活水準)としての機能も持つ。基準引き下げは受給者に限った問題ではない。


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